取扱説明書

2025年6月23日月曜日

温泉に行かない日(566) 奈良市のため池(7)

奈良盆地のため池に関して予て質問を投げかけていた奈良県立図書情報館より回答が寄せられた。
【質問事項】
奈良地方には何故こんなに多くの農業用ため池があるのですか。
単位面積あたりのため池の数が他の盆地より突出しています。
その理由がわかる書籍や資料があれば紹介してください。
浜松から単身赴任で引っ越してきて、奈良に大量のため池があることに驚きました。
自分なりに調べて、奈良盆地は水を沢山必要とする稲作がそこそこ盛んな割に河川があまり流れておらず降水量も少なく、湧水もあまり見られないのが理由ではないかと推察はしています。
ただ、不正確ではあるものの自分の調査では、奈良盆地における1km2当たりのため池数は9.5で、他の盆地が多くて2前後であることを考えるとかなりの突出ぶりです。
この突出ぶりの理由が知りたいです。
よろしくお願いします。
回答は以下の通りじゃ。
短文で要領よくまとめられたわかりやすい回答じゃ。
〇〇様
お尋ねの件にお答えいたします。奈良県立図書情報館の〇〇と申します。
奈良盆地のため池に関する文献はそこそこあり、例えば森滝健一郎「奈良盆地における水利用の動向」(『奈良大学紀要』31、2003)では、「2吉野川分水実現以前における近い水の徹底的利用」の冒頭で
  • 奈良盆地は年間降水量1400mm程度の寡雨地帯
  • 全域は大和川水系流域だが、その山地部分が少ない。
  • 古くから農業開発が進んでいるため、直接灌漑が可能な土地はすでに水利権が確立しており、新しく水田開発をしようとすると、ため池など間接水灌漑に頼らざるを得ない
等の理由から、盛んにため池が築造された、としています。
また、宮本誠『奈良盆地の水土史』(農文協、1994)は、第二章を「溜池の築造と田畑転換の成立」にあてています。これによれば、ため池の多くは、近世初頭と明治期に作られたもので、これはともに新しい農法の定着による水需要増加に対応したものだとしています。
なるほど。
寡雨地帯(降水量が少ない地域)や河川の問題についてはやはりそのとおりじゃったが、水利権に縛られて農家が新規参入出来ないであるとか、新しい農法の広がりに伴う新規水需要に対応するためであるとか、表面的ではない部分での事情があるんじゃなあ。
このあたりはGeminiくんもわからんかったようじゃ。
回答内で紹介されとる2冊の資料・書籍については、奈良県図書情報館に収蔵されとることが確認できたので、今度の休みの日にでも情報館に出かけて閲覧することにしよう。

2025年6月22日日曜日

温泉に行かない日(565) 奈良市のため池(6)

今回からは実際に行ってみたため池の記録じゃ。
面白くもなんともないから覚悟せよ。
なおため池の所在地については、Google Mapsのものも奈良県のため池データベースのものも不正確・不完全なためいつもNAVIで表示されたものを使用する。
また9桁のナンバーは奈良県のため池データベースに振られたもので(多分)ユニーク。
ワシが作った奈良市内のため池総まくりの「コード2」が該当する。
今回は護国神社の駐車場を拝借して、神社近辺にある池を回ってみた。
このあたりは奈良盆地の東側の縁で、概ね東から西に向かって下る傾斜地になっとる。

島池(奈良市古市町1705−19:292010027)

護国神社の直ぐ西にあって古池(次項)と南北に並んでおる。
島池は南側。
池の東側には堰堤はないが、西側(奈良県道188号線側)の盆地方向には堰堤が設けられている。
池の中には小さな古墳があり、それ以外の水面はすべて太陽光発電パネルで覆い尽くされていて風情もへったくれもない。
世間的にはこの状況を叩く人もおり、この池の太陽光発電への否定的なXのポストに対して有名人では世良公則さんがこれは酷いと返信したりしてます。
ワシだって基本は同感じゃけど、文化財保護法に基づく古墳の保全資金捻出目的の可能性があり、そのへんの事情も知りたいところ。
ため池の南西方向には田畑が広がっており、根拠はないがもしかしたら横井町辺りまで受益地が広がっとるかもしれん。

地図右上の奈良県護国神社の場所に島池と古池がある


ぎっちり設置されている太陽区発電パネル
© ill-health(ruephas) 2025

パネルに包囲されている古墳
© ill-health(ruephas) 2025


古池(奈良市古市町1633-1:292010225)

上記島池のすぐ北にあるため池で、環境的には古墳の存在を除いて太陽光パネルその他はほぼ同じ。
古池と島池の間には道が通っていて奈良佐保短期大学方面に通じとるが、これは1つの池をあとから分断したのではなくて最初から池が2つ並んどる形じゃろうと思われる。
池の北東側にはいわゆるヤミ畑とか勝手畑と思われるものがある以外に田畑はなし。

このMapの右上あたりにあるのがヤミ畑?

こちらも島池と同様
© ill-health(ruephas) 2025

パネルの下では鴨が優雅に泳いどる
© ill-health(ruephas) 2025


名称不明ため池(奈良市古市町1846−28:No.不明)

島池のすぐ東南にある小さめの池。
Google Mapsでは「水」と表記されていて、護国神社と古市方形墳に挟まれている。
周囲は緑色のフェンスに囲まれており近づくことは出来ない。
数ヶ所出入り口はあるが、水難防止の為、当然施錠されている。
もしかしたらNo.292010223の油池かもしれない。
ちなみにGoogle Mapsにはのっていないが、護国神社境内にはかつて油山城というお城があったとのこと。

© ill-health(ruephas) 2025

© ill-health(ruephas) 2025


紀寺南池(奈良市南紀寺町3丁目818−7:292010011)

島池・古池の西を通る奈良県道188号線(高畑山線)を少し北に進み、第二紀寺ビル向かいの道を西に行ったところにあるため池。
島池・古池と異なり傾斜地ではなく平地にあるため池なので四方が堰堤になっとる。
周りのすべてをフェンスで囲ってあり、何とかアクセスできるのは南側に1ヶ所、西側に1ヶ所のみだがどちらも湖面をきれいに撮影できない。
ため池の周りは生活道路もしくは家屋・アパートに包囲されており、南側にごく僅かな田んぼがあるだけ。
西側堰堤から
© ill-health(ruephas) 2025

危険じゃから良い子は近づいてはだめだヨ
© ill-health(ruephas) 2025

紀寺南池近くにある田んぼはこの程度
© ill-health(ruephas) 2025


金越池(奈良市白毫寺町802:292010010)

紀寺南池から奈良県道188号線挟んで東側にあるため池。
紀寺南池よりだいぶ小さいが、周りは田畑に囲まれている。
その田畑を通れば池に近づけろかもしれないんじゃが、恐らく私有地であり、畑仕事をしている人もちらほらいる。
そんな中を堂々と突き進んでいける度胸は持ち合わせていないため近くには行けなかった。
ため池の脇には奈良教育大学自然環境教育センターの施設がある。

正面に見える堰堤の向こうが金越池
堰堤まではたどり着けなかった
© ill-health(ruephas) 2025

池の近くにある田んぼ
© ill-health(ruephas) 2025

2025年6月21日土曜日

温泉に行かない日(564) たまについて

4月6日にワシのアパートのベランダに三毛ねこんさんが来て、そいつを「たま」と名付けた件についてはすでに書いた通りじゃ。
あれからかれこれ2ヶ月ちょっと経ったんじゃが、たまは時々顔を見せてくれる。
なんで好んでワシんちに来るようになったのかはさっぱりわからんが、とにかくあの場所が気に入ったようじゃ。
来はじめて最初の頃は、ワシが部屋の奥の方におるとベランダの真ん中あたりでネコずわりをしたり寝そべったりしとるんじゃが、ワシがちょっとでもベランダに近づくとぱっと立ち上がって隣の部屋に行ったりベランダの外に逃げたりして身を隠すのが常じゃった。
逃げて身をしっかり隠してから顔を少しだけこっちに向けて鋭い目つきで抜かり無くワシをば監視し、ワシが再度奥に引っ込むとまたベランダに戻ってくるという行動をしとった。
しかし最近は少し慣れてきたのか、はたまたワシはたまに危害を与えるような存在ではないとわかったのか、ワシが近づいた際に逃げる距離がだんだん短くなってきた。
これを書いとるのは6月21日じゃけど、今週月曜日くらいから行動が積極化してきており、窓枠まで近づいてじっとこちらを眺めたり、網戸をガリガリしたり(これは困るのでやり始めたら怒るようにしとる)、近づくとにゃあと鳴いて寝転んだ状態で体を何回も縦回し(船や飛行機でいうとローリングを360°する感じ。カヤックで言うエスキモーロールの具合)して腹を見せたり、ワシがにゃあと声を掛けるとそれに応えてたまもにゃあと鳴くという具合じゃな。
ここに来て何がいいのかさっぱりわからんが、まあかわいいし網戸をたまにガリガリしかけるくらいしか悪いとこはないし、暫くはこのまま放っておこうと思う。
部屋に帰ってカーテンを開けたらたまがおるというのも、なかなか良いものじゃ。

ちなみにたまの左耳は、そのさきっぽあたりがV字型にカットされており、最初はねこさん同士で喧嘩してかじられちゃったかなと思ったんじゃけどねこさん好きな人に聞いてみたらそうではなく、去勢されとるねこさんである目印なんだそうじゃ。
ということは完全なのらねこさんではなく、多少管理されとるねこさんということなのかな。
その人から、そういうねこさんのことをさくらねこというと教わった次第じゃ。

© ill-health(ruephas) 2025

© ill-health(ruephas) 2025

© ill-health(ruephas) 2025

© ill-health(ruephas) 2025


2025年6月19日木曜日

温泉に行かない日(562) 奈良市のため池(5)

とりあえず完成した「日本の盆地トップ11」におけるため池の状況をつらつら眺めたが、一般的に盆地においては農業や生活用水確保のために、ため池が重要であることはわかった。
一方、盆地でなくとも例えば濃尾平野などにも当然ため池はあるし、ため池はあってもその数が少ない盆地もある。
盆地内での農業の種類によっても違うと思われる。
水を大量に必要とする米作などが盛んな盆地だとため池は多くなるだろうし、大きな川が流れていればそんなに必要ないかもしれん。
と、そのへんまではリストを眺めていて思いつくはつくけど、奈良盆地のため池数の突出ぶりはそれだけでは説明がつくとはとても思えない。
奈良盆地がものすごい穀倉地帯というなら納得感もあるけど、稲作が盛んな盆地のイメージは山形盆地で、その山形盆地の1㎢当たりのため池数は0.5で奈良盆地の9.6には遠く及ばない。
やはり最上川効果がすごいんじゃろうか?
と仮定するとやはり河川がポイントになるのかな…、などと思考は堂々巡りになってしまう。
要するにいろいろ頑張って調べたけど、正鵠を射るような答えがどうも見つからない。
まあいいや。
自分の脳みそには限界があるんで、まずは奈良県立図書情報館のリファレンスサービスに、この辺わかる資料を紹介して貰う[1]などそれはそれとして調べを進めつつ、ワシとしてはとりあえず奈良市内の主要なため池を巡ることにしよう。

[1]
奈良県立図書情報館に送ったリファレンス依頼は次の通りです。
【質問事項】
奈良地方には何故こんなに多くの農業用ため池があるのですか。
単位面積あたりのため池の数が他の盆地より突出しています。
その理由がわかる書籍や資料があれば紹介してください。
【調査済み事項】
浜松から単身赴任で引っ越してきて、奈良に大量のため池があることに驚きました。
自分なりに調べて、奈良盆地は水を沢山必要とする稲作がそこそこ盛んな割に河川があまり流れておらず降水量も少なく、湧水もあまり見られないのが理由ではないかと推察はしています。
ただ、不正確ではあるものの自分の調査では、奈良盆地における1km2当たりのため池数は9.5で、他の盆地が多くて2前後であることを考えるとかなりの突出ぶりです。
この突出ぶりの理由が知りたいです。
よろしくお願いします。

2025年6月17日火曜日

温泉に行かない日(561) 奈良市のため池(4)

先日コーチングに関する研修に出たんじゃがその中で、参加者のタイプ分けっていうのがあった。
いくつかの質問に対して自分がそれに当てはまるか当てはまらないかを数値で答え、それを足したり引いたりすると自分のタイプがわかる仕組み。
タイプは、
  • コントローラー
  • プロモーター
  • サポーター
  • アナライザー
の4つで、意味するところはその語感どおりじゃ(「コーチング タイプ分け 診断」でググれば詳細はわかる) 。
自己診断前は、普段のワシの言動(お調子者・計画性がない・後先考えない・先頭には立たない・No.2~3くらいが好き・飽きっぽい)からするとワシはおそらくプロモーターかサポーターあたりじゃろうと思うたが、めんどくせ~な~と思いながらやった結果は意外にもアナライザー[1]じゃった。
確かに言われるまで自覚したことはなかったけど、データをしつこく、じくじく細かく集めてそれから何かを見出そうとするのが確かに好きな方なので、今回のため池の件もそうじゃし、山神社の件とか、Google Mapsに未掲載の情報を掲載することとかはそのタイプ分けに基づくのかもしれん。
じゃから皆さん、今後ワシのことなら「冷徹な分析者」とでも呼んでくれ。

タイプ分けなんざどうでもいいことじゃから閑話休題、ワシはしつこくじくじく各地の盆地及びその盆地にあるため池に関してネットで把握できる程度の基本的な情報を集めて表にまとめることにした。
「日本の盆地トップ11」におけるため池の状況という名称のGoogleスプレッドシートじゃ。
現段階でとりあえず知りたいのは、やはり物理的な状況。
すなわち盆地面積に対するため池の数の大小なので、最低限の情報として必要なのは盆地の面積と盆地にあるため池の数。
ため池については各県から法律に基づきリストが公開されていて、当然市町村別にまとめられておる。
問題は盆地の面積で、色々探してみたがズバリと答えが示されている資料がなくどうしようか迷ったが、なんだこんな時のために強力な助っ人がいるじゃないか。
なんのことはない、そう、Geminiくんじゃ。
Geminiくんに「〇〇盆地の面積を教えて下さい」と何故か丁寧語でお願いして情報を仕入れていった。
更に必要なのは、盆地を構成する市町村は何処じゃ、という情報じゃ。
各都道府県から公開されとるため池データベースは市町村別になっとる。
盆地にあるため池の数をある程度確定させるためには、某地を構成している市町村を調べて、それに属するため池を数えていく必要があるからじゃ。

ワシはその他、年間平均降水量や湧水の有無、各盆地の特徴など、いくつかの情報をお尋ねした。
Geminiくんだけではなく、Wikiやその他サイトの情報を組み合わせてとりあえずリストは完成させた。
で、一番見たかった「盆地面積に対するため池の数の大小」を早速見てみたら、これはもう奈良盆地の圧勝。
300㎢の中に4211ものため池が犇めいており、1㎢当たりの数は何と9.6。
2位の米沢盆地が2.6(100㎢/256)を遥かに引き離してぶっちぎり。
これには驚いた。


驚いたので今回はここで力尽きた。
ここ暫くはスプレッドシートに集約した基本的情報を眺めつつ、
「何故奈良にはこんなにもため池がある?」
のヒントが隠されているかどうか考えてみようと思う。

[1]
コーチングの本やWEB情報を総合するとアナライザーとは以下の通りの人物です。
感情表出が控えめで、自己主張も控えめな人です。
アナライザータイプは自分の中で完結させる人です。
アナライザーは、計画や分析、事実やデータをすごく大切にする考え方を持っており、自分で計画を立てたことは必ず実行し、成果を得るということができる人です。
逆に新しいアイデアを出すのは苦手で、目に見えることを大切にしています。人にはそもそも興味があまりないので、冷たい感じの印象を受けることも多いです。
会話は少なく、する時でも人の目を見ないことも多いです。
確かにそういう部分もなるな、とは感じますけどもちろんこれらすべてが私に当てはまっているわけではなく、例えば私は人の目をしっかり見て喋るし、人にも興味はある。
逆に「自分で計画を立てたことは必ず実行し、成果を得ること」なんてことはニガテ。
同時にプロモーターとしての特性も持っているような気がするので、自分や他人をいずれかに完全に当てはめてしまい、その当てはめとコーチングに関する半端な知識で人や人間関係を判断していくのはむしろ危険だと思いました。