今回も前段が無駄に長くて核心部分は少しだけという内容の薄さじゃから覚悟してくれ。
ワシは小学校に上る前まで岐阜市の真砂町というところに住んどった。
このへんじゃな。
いやあ、当時は全く意識してなかったがなんかやたらに細長い区画じゃなあ。
まあそれはいいとして、その真砂町に親父が勤めとった㈱西濃運輸 岐阜支店の建物があって、ワシら親子はその中にあった社宅に住んどった(今はない)。
親父はもう既にあっちの世界に行っちゃったから、勤めていた会社の名前を出しても別に構わんじゃろう。
もう55年近くも前のことじゃからあまり鮮明な記憶はないけれど、近くにあった銭湯に行ったり、やっぱり近くにあった山勝百貨店(ここはなんとあの岐阜パルコの前身である地方デパート。どうでもいいがワシは後年その岐阜パルコで偶然鳥山明に出会って直筆サインを貰った事あり)に母親と行って地下にあったラーメン屋でラーメン食べたり、その山勝百貨店に行く途中で迷子になって警察を交えた大騒ぎになったり(ワシが成人してから母親から聞いた。結局泣きもせず自力で社宅まで戻ってきたとのこと)、両親に連れられてパチ屋にいって床に転がっていたパチンコ玉を拾い集めたり、通っていたこばと幼稚園の通園バスに乗ったり(今調べてみたらまだあるぞ!〒500-8323 岐阜県岐阜市鹿島町4-15)というような断片的な記憶は残っとる。
この辺のことについては既に書いとる通りじゃ。
他にも記憶はあって、それは親父に連れられて呑み屋さんに行ったこと。
呑み屋と言っても居酒屋とかではなくて、酒屋の店内で呑むというスタイル。
酒屋なので店の中にはいろんな酒が基本小売目的で並んでおり、店の一部のスペースを利用して買った酒をその場で呑めるという感じ。
いわゆる「角打ち(かくうち)」というやつじゃな。
親父の勤務先の人とか近所の人が寄り集まって皆で楽しそうに呑んどったなあ。
この角打ちという言葉自体は2〜30年前に知ったと思うんじゃけど、改めて意味を確認するとこんな具合じゃ。
角打ちの由来については諸説ありますが、「四角い形をした升の角から直接酒を飲んだことが由来」という説が有力です。日本酒は今でこそ瓶や紙パックで販売されていることがほとんどですが、以前は樽に入った日本酒を、升を用いて量り売りしていました。そんな中、買った酒をその場で飲みたい人々が買った酒を升から飲むように。そういった背景から、最初は「升の角から日本酒を飲む」という意味であった言葉が、いつしか酒屋で酒を飲むことそのものを指す言葉へと変化していったのです。
このスタイルは最近減ってきたように思う。
食品衛生法関係の規制が強化されたかららしい。
1990年代後半頃じゃったけど、転職して京都から浜松に移り住んで暫く経った頃、どうにもこうにも果てしなく仕事がつまんなくなってきて、落ち着くために浜松市天竜区にある「くんま水車の里(静岡県浜松市天竜区熊1976-1)の近くの宿泊施設(施設名忘れた:現 熊ふれあいセンター:静岡県浜松市天竜区熊1977-2)に1人で泊まりに行ったことがある。
だけど流石に夕方になって酒呑みたくなったんで、近くに呑み屋とか最悪酒屋がないか探してみたら1軒酒屋っぽいのがあったんで入ってみた。
声を掛けるとおばあさんが出てきたので話を聞いてみたらここは既に廃業しているとのこと。
店内の一角がなんかカウンターっぽくなっていたのでワシは、
「もしかしてここ昔は角打ちしてたんじゃないですか」
って聞いたらやっぱりやってたそうで、当時は大変繁盛してたらしい。
なんでやめたか聞いたら、住む人が減ってきたのと、やはり保健所の指導が厳しくなったからとのことじゃった。
全く馬鹿な話じゃ。
衛生的に管理されているはずの飲食店で食中毒になったりとかのニュースは普通に聞くし、挙句の果てには最近じゃネズミが味噌汁に入っていたなんてこともあるが、角打ちで食中毒にかかったなんてついぞ聞いたことないのに。
話を戻す。
その真砂町近くの角打ちでは店内でモツ味噌煮の串にさしたやつが売っとって、それをつまみに皆楽しそうに呑んどった。
もちろん他にも乾き物や缶詰などもあった。
ワシも串にさしたモツを親父から一切れ貰ったりして美味しく食べたものじゃ。
それ以来、ガチな角打ちには多分行ったことはない。
先日5月4日の日曜日、ワシは思い立って兵庫県尼崎市にある尼崎中央三丁目商店街というところに行ってきた。
目的は勿論、あの例の日本一早い阪神のマジックナンバーを見物するためじゃ。
これは阪神甲子園球場、今年鳴尾浜から移転した阪神二軍新拠点であるゼロカーボンベースボールパーク、JR北陸本線虎姫駅と並んで阪神ファンならばかならず訪れるべき聖地じゃ。
甲子園はもちろん虎姫駅にも随分前に訪問したが尼崎の方にはまだ参っておらん。
いかねばならんから行ってみた。
阪神の尼崎駅は近鉄と相互乗り入れしとるから近鉄奈良からは乗り換え無しで行けて便利じゃ。
駅について電車を降り、北口にある(尼崎のイメージからすると随分)お洒落な中央公園を西に抜けてすぐに商店街の入口はある。
商店街左右に並んどる店を眺めながら歩くと、前方上方に「114」と光り輝くものが見えてきた。
ああ、あれじゃろう。
タイガータイガー、めでタイガー! 随分陽気じゃ © ill-health(ruephas) 2025 |
関西エリアニュースなどで「尼崎商店街名物の阪神マジックボードの表示がアナログからデジタル電光式に改良された」という情報は得ておったがまさにその通りじゃ。
その上、何とあろうことかそれは商店街アーケード屋根に設置されたレールみたいなやつにぶら下がっていて、阪神タイガースの歌(通称「六甲おろし」じゃが正式名は違うからね)をBGMにして電気仕掛けで往復しとるではないか(もしかして以前からそうじゃったかもしれんが、実物を見るまでは通路においてあるという先入観しかなかった)。
更に驚いたことに、このオブジェクトを面白がって見とるのはワシだけであって、他の地元民の皆さんは全員、残らず全員じゃよ、天井の10mくらいの距離をただ往復し続けるそのオブジェクトになんの興味もないらしく歯牙にもかけとらん。
もうすっかり商店街の日常で、そんなの見てもなんの興味もないようにお見受けした。
これ例えば奈良の東向商店街あたりでやったら外人客中心に結構な騒ぎになること必定なんじゃがなあ。
で、無事マジックボード参りを済ませたワシは腹が減っとることに気づいた。
時間は11時前じゃが、どうせ尼崎に来たのなら尼崎らしい場所で食べたい。
可能なら酒も呑みたい。
この時間からやっている酒も呑める場所はないか探索した結果、下山酒店(兵庫県尼崎市神田南通1-3:06-6411-2362:10:00〜20:00:定休月曜)を発見した。
屋号の通り、ここは基本酒屋じゃ。
酒屋じゃがしかし、その場で呑める。
つまり、角打ちじゃ。
実質的に人生始めての角打ちじゃ。
店先の様子 白く清潔そうな暖簾が印象的 早く呑みたかったのでガチャの内容は未確認 © ill-health(ruephas) 2025 |
白いサッポロビールの暖簾の下から店内を覗くと、既に何組かの客がカウンターの前に立って呑んだり食ったりしとるのがわかる。
店員さんは3人で、いずれもその表情は穏やかそうじゃ。
中に入り、早速ビールを注文する。
ビールはサッポロの赤星大瓶、いいじゃないか。
つまみはカウンターの前にある冷蔵ケース(寿司屋みたいなやつね)の中とかその上に乗せてあるものから選べる。
ワシはマグロのお作り、マグロのねぎま、ハムカツ、厚切りのローストビーフみたいなやつを注文してビールを呑み、ビールがなくなると日本酒を頼み、周りの客の会話を聞きながら、店員さんの様子を眺めながらゆっくり呑んだ。
厚切りのローストビーフみたいなやつ この料理の名前何だっけな〜 すごく日本っぽい名前だったけど、う〜ん ポン酢を掛けてさっぱりいただきます © ill-health(ruephas) 2025 |
食べ物は全て安い。
酒も酒屋直営じゃから安い。
そして、地元の人が通う店によくあるアウェー感はほぼない。
店員さんたちの対応が柔らかいのと、いい意味でお客さんが他のお客のことを変に構わないというか、そんな感じで放っておいてくれる雰囲気じゃからじゃろう。
いい店じゃ。
うーん、しかしここはなんだろ、酒屋自体は同じ建物の隣のスペースにあるが、呑めるスペースは酒屋スペースからは独立しとる。
そういう意味では正式な角打ちではないかもしれないんだけど、そんなこたぁどうでもいい。
物理的に酒屋とつながっとるから角打ちでいいんじゃここは。
酒も安いし。
時間が経過し昼近くになるとお客さんが増えて、カウンターはほぼ満席になってきた。
ワシはこのへんで御暇することにしてお金を払って店を出た。
2000円しなかったような記憶じゃ。
いいなあ尼崎。
いいなあ尼崎の角打ち。
甲子園にも神戸にも大阪にも近いし、安いスーパーや美味しくて手頃な呑み屋も多いし。
ちょっと住みたいと思ってしまったなあ。