2013年2月17日日曜日

石巻湯(1)

南栄湯を出て南栄駅に戻り、上リの豊鉄渥美線で新豊橋駅に戻ります。
次の目的地は徒歩圏内なんですが、汽車好きな私としては市内線に乗り換えて移動。
目的地とは石巻湯(愛知県豊橋市八町通3-141:0532-52-7751:¥400:15:00~23:00:定休日土曜日)。
前回は折悪しく土曜日に来訪したため休みであり、残念ながら未湯のまま撤退した銭湯です。

市役所前で下車し、国道1号線をほんの少し東に歩いて朝日新聞豊橋支局の角を南に入ったところに石巻湯はあります。
角を曲がった時点で看板の電灯に灯がともり、既に車や自転車がたくさん止まっているのが目に入ります。
やった。
やってる。
銭湯に向かって歩いていると、前籠にポータブルラジオを乗せ、大きな音でNHKを流しながら後ろから走ってくるチャリが一台。
私が銭湯の玄関先に到達した丁度同じタイミングでそのチャリもキキッとブレーキ音を響かせて停車。
萎びた感じのじいさんがチャリから降り立ち、私より先に暖簾をくぐっていきました。
成る程、常連か。
なんかできるな、このじいさん。
でもきっと少し耳が遠いんだろうな。
さて私もじいさんに続いて中に入ろう。

前回来訪時はその風格ある硝子戸の錠は閉じられ、暖簾は中にしまわれていましたが今回はちゃんと暖簾が表にかかってます。
わくわくしながら結構ポップなデザインの暖簾をくぐり、白い塗料で「石巻湯」と大書された扉をがらりと引いて中に入ります。
引き戸は期待させたましたが、中は至って普通な感じ。
よくある町のお風呂屋さんです。
料金を払い脱衣場に入ると、先ほどの大音量ラジオチャリじいさんが外見に似合わぬ敏捷さでもって既に服を脱ぎ終わって全裸状態であり、その肩口には刺青。
先程訪れた南栄湯にもいましたが、どうもこの近辺の刺青入りじいさんたちは剽軽というか、少し変わった人が多いようです。


浴室内の構成はこの辺りの銭湯とは少し傾向が異なっていて、別室化されたラジウム風呂はなく、気泡浴の隣の一部がラジウムコーナー(壁のタイルには鷲沢体な感じのフォントで「ラジゥム」と書いてあった)になってました。
どこからどうラジウムが供給されているかイマイチ不明です。
サウナ用(当日は故障中)の水風呂がありましたが、そこには何故かクールバスクリンが投入してあるというダブルクール状態。
冷え冷えになりそうです。
きっと夏にはいいけど今の季節はちょっと遠慮しておきましょう。
主要浴の片隅にはかつては吐湯口だったと思われるライオンの頭部がありましたが、残念な事に今は使用されていない様子で、その周辺はなぜか釘を刺した板で警護してあります。
何らかの理由でその部分には手を触れてはいけないようですが、その情景は何だか昔の過激派の武器を思わせます。
壁には期待した浴室画はありませんでした。

南栄湯とは打って変わり、こちら石巻湯の常連客たちは押し並べてどうも寡黙であります。
寂として声なし。
皆、黙々と体を清め、あるいは湯につかり、若しくは目を閉じて気泡湯に身を委ねております。
二谷英明が藤岡弘の髪型をして、石塚英彦の物マネをしているような風体の親父が一人いて(二人いたら少し困るな)、口をだらしなくうすぼんやりあけて気持ち良さそうに気泡湯に浸かってます。
何だかその辺りだけチリアーノの「私だけの十字架」が流れてきて、新宿辺りにある高層ビルの向こう側の夕日が、空に溶けながら落ちていってしまいそうな雰囲気です(若い人には相当解りづらい喩えかもしれんのう)。
先程の大音声刺青ラジオは頭髪を念入りに洗うのが兎に角好きなようで、黙々とひたすら頭中を泡だらけにしてますが、そんなに過激に洗ったら残り少ない頭髪がすっかり抜けてしまわないかと思うと、人ごとながらハラハラしちゃいました。
一方主要浴洗い場側の浅い部分には、たれ目傾向が少し強い、言わせて貰えればまあ北杜夫そっくりで貧相なおっさんが、まったく微動だにせず、すっかり脱力して「すべてをあきらめました」的な感じで横になってます。
言い添えますが、北杜夫は大の風呂嫌いでした。
どうでもいいか。

などとヒューマンウォッチに勤しんでおりますと、猛烈な感じで毛髪を洗浄していた大音声刺青ラジオが周辺の静寂を突如破って、
「おい!お湯が出んぞ、出んぞお湯がぁぁ~~~~~!!
と大声で訴え始めました。
誰にどう訴えたいのか解りませんが、兎に角お湯を求めしきりに訴えています。
シャンプーが目に入る事を恐れているのか、固く目を閉じて頭を股の間に入れたまま、お湯を求めています。
しかし周りの常連客全員は、驚いた事に全員無反応です。
まるで現代社会の縮図だ。
自分に関係のない、人様のちょっとしたトラブルには関わり合わない、という訳だ。
かく言う私も最初こそ「何事?」と思って刺青ラジオを注視していたのですが、どうせ手のひらが石鹸で滑って蛇口を開けられないか何かだろうと思い、人様のちょっとしたトラブルだからと思い、他の常連客同様暫く放置を決め込む事にしました。
しかし刺青ラジオはあまりに訴え続けてるし、その様子が少し哀れで、というかはっきり言えば滑稽でしたので、仕方なく私は刺青ラジオの所に行き、
「多分、ちゃんと蛇口を廻せばお湯出るんじゃないっすかね」
などと言いながら蛇口を廻してみましたが、やはりお湯は出ない。
その時点で、ほかのカランを使っていた人も、
「おを?お湯が出んな」
等と言い始めました。
ははあ、 刺青ラジオの手のひらが石鹸で滑って蛇口を開けられないわけではなく、「何か」の方だった訳です。
どうも銭湯のカラン系統給湯システムがダウンして、お湯が出なくなったようであります。

浴室内にいる男たちの間にちょっとしたパニックが静かに広がっていきました。

その時です。
一人の男が、その男というのはつまり「二谷英明が藤岡弘の髪型をして、石塚英彦の物マネをしているような風体の親父」ですが、ほへぇ~って感じで横たわっていた浴槽からすっくと立ち上がり、先程までのだらしなさ全開な姿勢とは打って変わって素早く体の水分を拭き取ると、誠にもってきびきびした感じで浴室を出て番台のおかみさんに、
「お湯が出なくなったからなんとかしてほしい」
旨を正しく訴えて浴室に戻ってきました。
全く人は見かけに寄らないものであります。
私と言えば、もう既に暑さ(熱さ)の限界を迎えておりましたので、義侠心にあふれまくった二谷藤岡石塚親父とすれ違うようにして浴室を後にしました。
その後どうなったか、私は知りません。
どお、銭湯って、面白いでしょ?

何だか面白おかしい感じだった石巻湯を出て、またもや市内線の小さな電車に乗り込みもうすっかりなじみになった駅前駅へ。

そこには市内線名物「おでんしゃ」が止まっており、丁度客を迎え入れているところ。
おでんしゃ
おでんしゃに身をやつした
豊橋鉄道最古参3000系
おやじな感じのネーミングが結構グーね
© ill-health(ruephas) 2013
実はホントはこの「おでんしゃ」に乗れないかちょっと画策していたんですが、当日は既に予約でいっぱいとの事で悔しい思いをしていました。
夏には納涼電車的なものに衣替えして豊橋の町中を走るそうですので、そっちを狙う事にしました。

そして足は自然に呑み屋街へ。
当日は日曜日で、行きたかった立ち呑み屋は全部お休みでありますが、それでも私の地元とは違い、飲んべえにとっては十分すぎるほど呑みやチョイスの幅が猛烈に広く、誠に豊橋のサラリーマンはうらやましいですなあ。
店の選択にあまり時間をかけても仕方ないと思い、前回行った呑み屋のすぐ近くにある、駅前駅すぐ向かいの狭い路地にある鳥八・NEW MARKII店(だと思うんですけど、この店支店がいっぱいあって違うかもです。位置的には下の地図の徳利&おちょこアイコンの場所です:愛知県豊橋市広小路1-40-2:0532-52-4180:17:00〜23:30:無休)でビールと日本酒で豊橋現存銭湯完全コンプリートに祝杯をあげ、東海道線に乗って岐路につきました。
おでんしゃ
予約客を誘い込む豊橋鉄道興行部職員(嘘)
「おでんしゃ」と書かれた赤暖簾が粋じゃないか

© ill-health(ruephas) 2013
おでんしゃ
目映く輝くおでんしゃが
通りがかりの酔っぱらいを怪しく誘うの図
山下達郎のあの名曲が浮かんできそうなLEDの輝き
Powered by Asahiビールだ
夏はPowered by KIRIN一番搾りになるらしい
© ill-health(ruephas) 2013

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コメントどうもありがとうございます。
貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。