2023年8月2日水曜日

温泉に行かない日(515) PSVT(3)

ERに入れられると看護師さんからヘンな質問を受けた。
「Aさん。今どこにいるかわかります?」
「へ?B病院のERですけど、違うとこですかね」
「いえ、大丈夫。その通りです」
その時はなんじゃいこの質問は、と思ったが、今思うと意識の明瞭さを確認したのかもしれん。

その後、えんじ色の服を着たお医者さんやら看護師さんやら、他の色(白だったかなあ)の服を着た検査技師っぽい人やらが何人もわらわらと寄ってきて、指先に小さな機械をカパリと嵌めたり、二の腕に血圧を測る機械を巻き付けたり、胸に何かを測るセンサーのようなものをぺたぺた貼り付けたりされ、その後右腕に注射器をぶすりと刺されて採血され、逆の腕に点滴の針を刺されて何かの液体を注入し始めたりと、救急で良く見るようなことを忙しく自分にされた。
救急は初めてなんじゃが、ああイメージ通りだなあと思った。
そのうちその中の1人がモニターを見て「いやあ、脈、めっちゃ速いなあ」とか「血圧低いなあ」とか、さっき救急車の中で救命救急士が云っておったのと同じようなことを云っておる。
「これやっぱP〇〇〇じゃないかなあ」
やあ、また英語4文字略語が出たな。
Pで始まる4文字略語。

救急車を呼ぶ電話から今まで、確かに意識は明瞭で、救命救急士さんやお医者さんとか看護師さんからのその場での質問には的確に答えられておった記憶じゃが、なんじゃろ、全体的には薄ぼんやりした感じで、今遡って何を聞かれてどう答えたのかは詳しくは覚えとらん。
ERでは、胸はまだ痛いかどうかとか、既往歴とか服薬の状況とか連絡先とかを聞かれたと思う。
で、取り敢えずやるべき一通りのことが終わったと見えて皆さんの姿は消え、ワシは暫くストレッチャーの上で一人で横になっとった。
ワシについてはどうやら命に係わる状態ではないと見極めがついたようで、奥の方から草野球の話とか(ピッチャーがなんとかとかショートがどうとか)、駿東郡というのはどのあたりで三島とか沼津の東というか伊豆半島の北なんだ(がんセンターってあっちの方だよね、とか)、みたいな世間話をしとったのを妙に覚えとる。
それで寧ろ安心した気分になった。
モニターからはかなり速いスピードでぴっぴぴっぴ音が続いてはおるが、ワシも何だか安心したようで少し眠くなってきてうつらうつらしとると、えんじ色の服を着た女医さん(はっきり書くが若くて美人じゃった)が来て、
「ちょっと試したいことがあるんですが大丈夫ですか」
と云った。
なにされるんじゃろと少しビビりつつも、
「はい何でしょう」
と云うと、
「大きく息を吸っておなかに力を入れてください。で、おなかを私がぐーっと押すのでそれに逆らっておなかがへっこまないように我慢してください」
はあ?なんじゃ?と思ったが、言われた通りやってみた。
するとどうじゃ、あれだけ煩くぴっぴぴっぴ云っとったモニターの音の間隔がじゃんじゃん開いてきた。
心なしか胸の違和感も和らいできたような気もする。
「ははあ、これやっぱり効きますね」
何だか民間療法の様な感じだけど、大丈夫かなあと思った。
思ったが実際に脈の回数が半分くらいになり、楽になった。
ふしぎなもんじゃなあと思った。

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貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。