2016年1月16日土曜日

天神湯(1)

天狗湯という素晴らしい名前の銭湯が廃業しているのを確認して意気消沈の私は、心のなかで六根清浄を唱えることも忘れ、駒形神社横に停めた車に戻って駿府城公園北の静岡高校方面に向かいました。
目的地は天神湯(静岡県静岡市葵区浅間町1-29:054-281-4892:¥360:15:00-23:00)。




ここももしや廃業しているのではと怯えつつ現地に着きましたが、やれ嬉しやこちらは健在でした。
建物を見ると、所謂「看板建築」であります。
このブログでは写真は載せないというのがポリシーですが、これについてはちょっと載せときますね。
© ill-health(ruephas) 2016
建物上部の(読みづらいですが)「天神湯」と書かれた扁額が嵌めてある部分。
これは正面から見ると建物の一部のように見えます。
ところがそれを横から見ると、
Copyright © みちくさ学会
こうなります。
2枚めの写真は私のではなく、みちくさ学会サイトに掲載されていたものを無加工でそのまま転載させて頂きました(転載に関する許諾申請方法がわかりませんでした。判明次第ご連絡します。みちくさ学会の先生方、ごめんなさい)が、その部分がまるで看板のような構造になってるのがわかりますかね。
看板建築ってのは、藤森照信先生が提唱したところの定義ですが、成る程面白くてわかりやすい命名をしたものです。
銭湯に限らず、少し古い商店街の店舗なんかでも結構見ることが出来ますので、ご興味のある方はお近くで探してみるのも楽しいかもです。

閑話休題。
銭湯すぐ脇にあるコインパーキングに車を停めて中に入りましたが、最前訪れた桜湯とは違ってこちらには先客の姿がありません。
嬉しいような悲しいような気分ですが、結果としてすっと貸切状態であったことが私には有利に働きました。
浴室に入るとその構成は桜湯と全く同じと云っていいほど。
豊橋の銭湯や名古屋の銭湯を一挙制覇した時もそうでしたが、同一エリアにある銭湯の浴室構成は何故か殆ど同じになってますが、不思議な事です。
何か理由でもあるんだろうかと考えてみましたが、根が莫迦なんでよくわかんなかった。
まあよいわ、風呂に入れればなんでもいいです。
さっさと服を脱ぎ、カランのお湯を桶に汲んでかかり湯をして浴槽に入ろうとしたら、これがいわゆる、オレ的には「あかんやつ」でした。

激熱。

兎に角熱い。
オレ断言するけど、あの熱さで普通な顔して入れる奴はいないと思うよ。
どんな江戸っ子でも「や、今日はちょっと熱いじゃねえか。おう、いい感じだもっと熱くしてくれい(心の叫び:くそ、あぢ〜じゃねいか)」とかやせ我慢で武装する程度は絶対する筈です。
デフォの状態では何回トライしても足首から上は湯に入れることが出来ず本当に困却しました。
もしかして隣の浴槽は低めに設定してあるかもしれない。
そんなよくあるパターンを期待しましたが、2つの浴槽を仕切る縁の下部は大きく開いて2つの浴槽のお湯は共用されており、実際お湯に触れてみても有意な温度差は感じることは出来ません。
うむ、仕方ない。
最終手段だ。

幸ひ辺りに人影なし。
ラッキーな事にオレが立っている場所は番台の死角になっている。
それを確認するやいなやオレは素早く水道の蛇口(かなり大きい口径だ)を全開にし、更に壁のカランから水を出して桶にため、浴槽にバンバン投入し始めました。
5分ほどその作業を行うと、水道の蛇口あたりであれば何とか入れる状態になりました。
蛇口からの水の投入は継続しつつ、極めてゆっくりと浴槽に身を沈めました。
胸元まで何とか浸かり、極力身動きしないよう万全の注意を払いながら入浴します。
少しでも動けば、体の周りに生成された「ぬるいお湯の膜」が破壊され、凶悪激アツ軍団が私の柔肌をさんざ蹂躙すること必定であります。
蹲ったような体勢のまま暫く我慢してそのままでいましたが、何とか入れているとは云え基本的にはオレの限界を遥かに突き抜けた温度である事には変わりなく、本当に頑張ったんですが10分は無理でございました。
冷水投入は継続したまま一旦浴槽から脱出。
普通であれば5分もクールダウンしたら再入浴できるのですが、あまりに熱いお湯だったためか思惑通りに身体はクールダウンせず、いくら冷水を入れても何処かから次から次へと凶悪激アツ軍団が供給されているようである一定以上には温度が下がらない。
諦めて冷水の蛇口を閉じ、再び浴槽に入ることなく浴室を後にしました。

もしあなたが激アツな銭湯が好きなツワモノであれば是非ここのお湯をお試しくださいまぜ。
オレはもう駄目かもしれない。
六根清浄ジイサンさえいなければ、オレは迷わず桜湯を選ぶ。
いや、いても多分選ぶ。

ちなみにここ天神湯は、湧いてきている清浄な地下水を、えーっと何度だったかな、50℃とか兎に角篦棒な温度に沸かしているらしいです。
あまりの熱さにぼーっとしており記憶が定かじゃないですすみません。
ワタクシとしましては、せめて40℃ちょっと位を希望いたします。

あと、地図とかを調べた限りでは、静岡市内の銭湯はここ天神湯と桜湯のみになってしまっているようです。



2019年8月12日 追記)
今年8月3日、静岡市市民文化会館で開催された山下達郎のPerformance2019ライブに行った際、会場近くにある天神湯の写真を撮り直したので改めて掲載する次第じゃ。
正面から見るのとその実との違いじゃ。
「看板建築」とは何かが分かると思うが如何じゃろうか。
しかし思うのは、この風呂に入ってからもう3年も経つのかあということじゃなあ。

© ill-health(ruephas) 2019

2 件のコメント:

  1. 天神湯の暖簾は春風にゆるる   白兎

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    1. 白兎さま。
      これは風雅な一句、ありがとうございます。
      ただ、その「ゆるる」風景ももう見られないと思うと残念です。

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コメントどうもありがとうございます。
貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。