2023年8月5日土曜日

温泉に行かない日(518) PSVT(6)

これを書いているのが外来受診日から1週間弱経過した8月5日なので、先生との会話の細かい内容はきちんと覚えておらんスミマセン。
氏名誕生日で本人確認してから先生は、今日行った検査の結果は特に問題なかったことを最初に云って、その後カラー版の医学書のようなものを広げてワシに見せてくれた。
「Aさんの場合は、これですね」
そのページには不整脈が10パターンくらいのグラフで書いてあって、その中で脈の頻度が一番激しいやつを指し示した。
極めて短い周期で脈がどくどくしとる様子がよく分かるグラフじゃ。
「これ、発作性上室頻拍っていいましてね」
ほっさせいじょうしつひんみゃくぅ?
知らん、聞いたこともない。
「はい、発作性上室頻拍。突然脈拍数が上昇する病気です」
「突然、ですか?」
「そうですね。心臓そのものっていうよりは、心臓を動かしてる電気信号がおかしくなるような感じですね。心臓は神経から送り出される電気信号で動いているんですが、その信号がおかしくなる」
「ははあ」
心臓は電気の信号で動いとるのか。
知らんかった。
ただ、人間ドックのときに意味も分からず心電図というのを受けていて、昨日も受けたかな。
考えてみりゃああれはその信号に異常がないかどうかを見とったんだな。
その電気の信号が何らかの理由で早い周期で送り出されるという様な話なのかね。
「きっかけとしては、運動、飲酒、喫煙などがあると言われてます」
すべて当てはまっとるじゃないか笑。
まあその時は酒は呑んどらんかったが、ウォーキングしとったし、合間に数本加熱式のタバコも吸ったし。
あといろいろ説明を受けたが、まあ病気としては死に至るようなものではないのはなんとなくわかった。
実はワシ、発作の時に胸に違和感、痛みまでは行かないけど違和感というかそんな感じがしておったため、狭心症なのではないかと怯えておった。
そのような心臓血管的な病気ではなさそうなのはとりあえず一安心だと思った。
「それでですね、発作へのとりあえずの対応としては、もしかして昨日もやったと思うんですが、トイレでの排便時のような感じで息む、ってのがあります」
「ああ、はいやりました。あっという間に心拍数が下がって驚きました」
へえ、あれは民間療法じゃなくて正式な治療というか手技なんだ。
「あと、氷水に顔をつけるってのも有効です」
「はあ?そうなんですか」
氷水に顔面をつけるだぁ?
なんか、怪しい対応法ばっかりじゃないか。
ホントなのかなあ。
でも実際昨日は息んで収まったし、先生がヘンな嘘をつく意味もないからホントなんじゃろう。
聞くと、顔面氷漬け法やトイレ式息み法をすると迷走神経を刺激するそうで、それにより症状を収めることができるらしい。
「しかしですね、息むことは置いといて氷水なんていつもあるわけではないですし、遠方にでかけたときとか周りに人がいないときとかにそれらの処置をしても症状が治まらないと困りますよね。発作はいつ起こるかわかんないですからね」
その通り。
今朝もバスで行こうかクルマで行こうか悩んだのは、運転中に症状が出てどうしようもなくなったらやばいなあと思ったからじゃ。
「そうなると、しばらく様子を見るとかいうのはやめて、もう根治しちゃったほうがいいと思うんですよ」
「はい、根治ですね。どんな治療をするんですか」
「おかしな信号を送る神経を焼いちゃう治療です」
ああ、それは聞いたことがある。
「アブレーションってやつですか」
「ああ、そう。そのアブレーションです。よくご存知ですね」
アブレーションという言葉とその処置内容は耳学問程度には知っとったが、どのような病気に対してそれをするのかということまでは知らんかった。
頻脈に対してやるのか。
しかしですな、いきなり正面切ってズバッと「あなた、ご自身の心臓の神経を焼きませんか」って勧められると、そりゃそれなりにビビります。
「え!ちょ、ちょっと待ってください」
カテーテルじゃ。
確か造影剤入れて鼠径部のあたりからほっそい管を入れて行ってじわじわと心臓に近づいて行き、ちっちゃなパイプを血管にはめたり神経を焼いたりするやつじゃ。
今まで他人事と思っとったが、如何にほっそいとは云え、いざ自分の心臓にそんなものが侵入してくるとなるとやっぱり怖い。
「そうですよね。しばらく様子を見てさっきの対症療法で凌いで、でも何回も起こるようだったらアブレーションするって云う手もあるんですけど。でもまあやっちゃったほうがいいと思いますね」
うーん、そうか。
まあ信頼できそうな先生じゃし、その先生がそう云うならやってもいいか。
よし。
「わかりました。お願いします」
「うん、それがいいと思います。ではその方針で行きますけけどその前に一回不整脈外来にかかりましょうか」
M先生とは別の不整脈専門の先生がいて、その先生に診てもらってその結果で最終的にやるかどうかを決めるということになった。
受診日は8月末。
それまで発作が起こったら困るので、ワソランという頓服薬を5錠処方してもらった。
あ、そうだ。
「先生。この病気の略語みたいなのはあるんですか?Pで始まる4文字くらいの」
「はい、PSVTって言いますね」
これだ。
帰宅後調べてみると、paroxysmal supraventricular tachycardiaの略だそうだ。
もちろん発音できない。
あんたもできんじゃろう。

しかし、アブレーションかあ。
まさか自分が受けるとはなあ。

2023年8月4日金曜日

温泉に行かない日(517) PSVT(5)

翌7月31日の月曜日、ワシは普段通り起床してクルマに乗ってB病院に出かけた。
バスで行こうかとちょっと悩んだが、昨夜はよく眠れたし念のためつけておいたApple Watchで記録しておいた心拍数を見ると昨日の様なトンデモ心拍数は出現してなくて概ね70~100くらいで推移しておったのでクルマにした。
外来受付は8時開始じゃが、それよりだいぶ早く7時くらいに到着した。
早めについて条件のいい駐車スペースを確保するのと(ドアパンチされにくいスペースがいい)、もう一つは病院周辺をウォーキングしてみて体調を確認したかったからじゃ。
病院周辺ならばその時間通勤する職員がたくさんおるので、万が一体調がおかしくなって動けなくなっても比較的安心じゃろう。
病院から数百メートルの距離にあるコンビニを目当てにてくてく歩き始めたが、幸い体調の悪化は感じない。
日陰を選びながらゆっくり歩いてコンビニに到達し、建物の陰でアイスコーヒーを飲んで汗を引かせ、またゆっくり歩いて病院に戻った。

丁度8時少し前になっていたので院内に入り、受付の列に並んで循環器科の受付を済ませ外来ロビーで腰かけて待っておった。
すると白衣の看護師さんがきて事前の問診をしてくれた。
まあ概ね昨日の受診内容の確認とかその他もろもろの質問を受けたくらい。
「今日はいろいろ検査することがあって、また担当の医師が救急を掛け持ちしていますのでだいぶ時間がかかると思います。まあ15時くらいまではかかる見込みです」
二次救急を受けているくらいの総合病院じゃからそれは覚悟の上じゃ。
「ですので、お昼ご飯を院内か病院の周辺で食べることになりますが、その前に一声かけてください。検査に差し障るものがあるといけないのでその時に確認しますので」
「はい、わかりました」
長期戦を覚悟してボディバックの中にはモバイルバッテリを忍ばせてある。
スマホで遊びながらゆっくり待つことにしよう。
「あと以後は、コーヒーとかは飲まないでください。お茶か水にしてください」
「あ、さっきコンビニでコーヒー飲んじゃったんですけど」
「それは構いません。以後、診察が終わるまではダメです」
「わかりました」
「じゃあ、早速検査に回ってください。この紙に書かれた順番に回ってください。全部終わったら循環器の受付にお声掛けしてください」
どんな検査したかな、書いとる今は8月4日じゃから思い出しとるが、
・採血
・胸部一般撮影
・心電図
・心エコー
くらいだったように思う。
全て終わり、循環器に戻って受付前で待つこと1時間。
ようやくワシの名前が呼ばれた。
時刻にして11時くらいで、ことは予想よりだいぶんに早く進んどる様子じゃ。
診察室に入ると、えんじ色の服を着た若い先生と看護師がおる。
「Aさんこんにちは」
「はい、先生よろしくお願いします」
診察が始まった。
どのような結果になるんじゃろうか。

2023年8月3日木曜日

温泉に行かない日(516) PSVT(4)

「大きく息を吸っておなかに力を入れてください。で、おなかを私がぐーっと押すのでそれに逆らっておなかがへっこまないように我慢してください」
という処置のあとは200以上という心拍数が急激に収まって(それでも)100前後で落ち着いた。
胸骨真ん中あたりの違和感と云うか痛いのの寸前的な感覚も同じように収まった気がする。
そのままストレッチャーの上で寝転んでぼ~っと天井を眺めていたら、
「確認のためにもう一回採血と、あと心エコーします」
と声を掛けられ注射針をぷすりと刺され、心臓の周りにプローブをグルグル当てられいろいろ調べられた。
それも終わり、ERに担ぎ込まれてから2時間ほどたった概ね14時ごろに看護師さんが来て、

「本日はこれで終わりです。入院は必要なくてご帰宅できます」
「ただ、心拍200以上の状態が4時間以上続いていますので心臓に可成り負担がかかっていて、血液検査でもそれが分かる結果になっています」
「ですので、明日の月曜日、循環器科にかかっていただいてもう少し詳しく検査して今後の対応について決める方が良いと思います」
「受診はここでも、開業医さんでもいいんですがどこか行きつけのクリニックとかありますか」

行きつけの医療機関と云えば、今いるこのB病院の皮膚科にかかっているくらいで他にはない。
行き帰りを考えたら外来受診するとなればここB病院か、最初に救急お断りされたA病院がいい。
あとここには当然今日のカルテもあるし、だいぶ待ち時間があるとは思うがここにかかるのが合理的と考えて、そう伝えた。

「わかりました。では明日この用紙を持って循環器科の受付をしてください。救急からの予約は出来ませんのでかなりお待ちいただくことにはなりますがご了承ください」
「今日受け入れてから検査や処置の相談をしてくれたM医師の外来になります」

ああ、そうか。
そうするともしかしてあの「大きく息を吸っておなかに力を入れてください。で、おなかを私がぐーっと押すのでそれに逆らっておなかがへっこまないように我慢してください」というのは、そのM先生の遠隔指示だったのかもしれんなあ。
「はい、じゃあ荷物を確認して頂いてお帰り下さい」
ありがとうございました、と感謝を述べて荷物を確認しているとその看護師さんが、
「Snoopyとやぎさんが好きなんですね」
と云った。
ワシのボディバッグには、阪神タイガース×Snoopyの缶バッジ、やぎの諭吉の缶バッジ、やぎのマサオが飼い主のレギンスを噛んでいる写真キーホルダーなどがついていて、それに対する感想じゃろう。
TシャツもSnoopyだしなあ。
ちょっと恥ずかしかった。

今回の診療費は自己負担3割で9,790円、総額で32,620円。
自己負担としては決して高くない。
今から4時間前、おひさまでクソ暑い路上で歩けずに座り込んで、自宅まであと数百メートルの距離も歩けないかもと絶望感にさいなまれていたことを考えるとありがたい話だと本当に思った。
会計を済ませて明日休む事を上司に連絡し、帰宅してベッドに転がり込んた。
当然、酒は飲まなかった。

2023年8月2日水曜日

温泉に行かない日(515) PSVT(3)

ERに入れられると看護師さんからヘンな質問を受けた。
「Aさん。今どこにいるかわかります?」
「へ?B病院のERですけど、違うとこですかね」
「いえ、大丈夫。その通りです」
その時はなんじゃいこの質問は、と思ったが、今思うと意識の明瞭さを確認したのかもしれん。

その後、えんじ色の服を着たお医者さんやら看護師さんやら、他の色(白だったかなあ)の服を着た検査技師っぽい人やらが何人もわらわらと寄ってきて、指先に小さな機械をカパリと嵌めたり、二の腕に血圧を測る機械を巻き付けたり、胸に何かを測るセンサーのようなものをぺたぺた貼り付けたりされ、その後右腕に注射器をぶすりと刺されて採血され、逆の腕に点滴の針を刺されて何かの液体を注入し始めたりと、救急で良く見るようなことを忙しく自分にされた。
救急は初めてなんじゃが、ああイメージ通りだなあと思った。
そのうちその中の1人がモニターを見て「いやあ、脈、めっちゃ速いなあ」とか「血圧低いなあ」とか、さっき救急車の中で救命救急士が云っておったのと同じようなことを云っておる。
「これやっぱP〇〇〇じゃないかなあ」
やあ、また英語4文字略語が出たな。
Pで始まる4文字略語。

救急車を呼ぶ電話から今まで、確かに意識は明瞭で、救命救急士さんやお医者さんとか看護師さんからのその場での質問には的確に答えられておった記憶じゃが、なんじゃろ、全体的には薄ぼんやりした感じで、今遡って何を聞かれてどう答えたのかは詳しくは覚えとらん。
ERでは、胸はまだ痛いかどうかとか、既往歴とか服薬の状況とか連絡先とかを聞かれたと思う。
で、取り敢えずやるべき一通りのことが終わったと見えて皆さんの姿は消え、ワシは暫くストレッチャーの上で一人で横になっとった。
ワシについてはどうやら命に係わる状態ではないと見極めがついたようで、奥の方から草野球の話とか(ピッチャーがなんとかとかショートがどうとか)、駿東郡というのはどのあたりで三島とか沼津の東というか伊豆半島の北なんだ(がんセンターってあっちの方だよね、とか)、みたいな世間話をしとったのを妙に覚えとる。
それで寧ろ安心した気分になった。
モニターからはかなり速いスピードでぴっぴぴっぴ音が続いてはおるが、ワシも何だか安心したようで少し眠くなってきてうつらうつらしとると、えんじ色の服を着た女医さん(はっきり書くが若くて美人じゃった)が来て、
「ちょっと試したいことがあるんですが大丈夫ですか」
と云った。
なにされるんじゃろと少しビビりつつも、
「はい何でしょう」
と云うと、
「大きく息を吸っておなかに力を入れてください。で、おなかを私がぐーっと押すのでそれに逆らっておなかがへっこまないように我慢してください」
はあ?なんじゃ?と思ったが、言われた通りやってみた。
するとどうじゃ、あれだけ煩くぴっぴぴっぴ云っとったモニターの音の間隔がじゃんじゃん開いてきた。
心なしか胸の違和感も和らいできたような気もする。
「ははあ、これやっぱり効きますね」
何だか民間療法の様な感じだけど、大丈夫かなあと思った。
思ったが実際に脈の回数が半分くらいになり、楽になった。
ふしぎなもんじゃなあと思った。

2023年8月1日火曜日

温泉に行かない日(514) PSVT(2)

「ええと、救急です」
「どんな症状ですか」
「ウォーキングからの帰りに、急に胸がドキドキしてちょっと苦しくなって歩くのがしんどくなりまして」
「はい」
「なんとか帰宅して横になってたんですが治まらないので、総務省のQ助っていうアプリで判定して電話しました。そのアプリ通りですと、激しい動悸が30分以上、実際には数時間続いてます」
スマホを持ってヘルスケアを開け、心拍数を見ると心拍数は200前後で推移しているのがわかった。
「症状はご家族ですか」
「いえ、本人です。住所は(日本の何処かです ※当然実際にはちゃんと伝えている)」
「今はどうですか?」
「まだドキドキしていて、胸のあたりが変な感じで、部屋で横になってます」
「わかりました。もう救急車手配しましたので、一歩も動かずそのままでいてください」
「はい、わかりました」
そのような電話をしているうちに、電話の外から救急車のサイレンの音が聞こえてきた。
そして電話が切れた。
しかしワシは一歩も動くなという命令に背き、入院に備えて昔葉山のゲンベイで買った帆布製の袋に下着とか常用薬とか詰め込み、あと心配だったのは診察券と保険証。
保険証は普段は車に保管している。
したがって車まで取りに行く必要があるが、救急の電話の人からは一歩も動くなと厳命されている。
部屋の中をちょこまか動いて入院に向けての身支度をする程度であれば許されるが、自宅から少し離れた駐車場まで行くのは流石に憚れるじゃろうと、ドキドキする胸を抱えながらワシは思った。
まあ、救急隊の人に車まで行ってもらえばよいじゃろう。
そうこうしながら玄関先で待っとると、いよいよ救急車のサイレンが実際に近づいてきた。
サイレンの音が止まり、インターフォンがピンポンとなった。
すぐに解錠し、それと同時に救急隊の方が3名、玄関になだれ込んできた。

実はその先はあまり覚えていない(疲れていたのかしんどかったのか…)。
玄関先から拉致された犯人の如く両脇を支えられ、救急車まで連れて行かれ、ストレッチャーに載せられた。
救急車に載せられ、あっと言う間に色々なセンサーを躰に付けられ、その結果、
「いやあ、脈早いです」
「血圧測って」
「ええっと、最高80ですね」
「ひくいなあ、これより下がるとちょっと…ちょっといかんね。心拍は?」
「220」
「こっちは下がらんな。こりゃあ(なんとかかんとか英語を云ったが聞き取れなかった。英字4文字の略語っぽい感じ)だなあ。酸素、マスクつけて酸素酸素。なんとかリットル(何倍とか言うのも聞こえた)流して」
「これ、Pナントカかも知れないなあ」(またしても聞き取れなかったが、最初がPの4文字略語なのはわかった)
ワシの肺に酸素を送り込むための透明なマスクが口に嵌められた。
「取り敢えずまずA病院連絡してみて」
この病院は市街地近くにある二次救急を受けている総合病院じゃ。
「わかりました」
「Aさん(私のこと)、緊急連絡先は?家族、奥さんの連絡先は?」
「電話もってないんですよ」
「どこにいるんですか今」
「遠方(実際には具体的な出先を伝えている)にいます」
「他に連絡先は?」
「子供は◯◯(関東)と△△(関西)にいます」
「スマホ貸してください。電話します」
「A病院断られました」
「もっと酸素かな。もっと濃くして5倍(だったかな。そんな記憶)」
「うーん、じゃあB病院に電話して。だめだったらCに」
「はい」
脈拍数220、最高血圧80という状況であるのにも関わらず、ワシは(いやあ、Cだけは困るなあ。遠いもんなあ、不便だもんなあ。なんとかBにならんかなあ)
などと誠に身勝手なことを考えてことは正直に告白しておく。
「お子さんの◯◯さんの方にかけたけど圏外だね。どうするかな。他にいないの」
へ?
親族への連絡にそんなに拘るの?
なんで?
死ぬんですかもしかして、と思いワシはかなりビビった。
「B病院、受けてくれました」
「よかった。OK。酸素もっと濃く」
とかなんとか。
他にもワシのバイタルについて車内でやり取りしたり、B病院が受けてくれたのでワシの状態をそのB病院に報告したりいろいろやっとったみたいじゃが、少し苦しくてあんまり覚えておらん。
そのうちサイレンの音が止まり救急車も止まり、つまりB病院に到着した(みたい。外が見えないのでわからない)。
実はワシ、そのB病院はよく知っているし、救急(ER:高度救命救急センター)の入り口もよおく知っとるが、ぐんなりしとるせいかどこに着いてどこからどうやってERに搬入されたのかは全く分からなかった。
ストレッチャーが救急車から降ろされ、ゴロゴロと転がされ、テレビで時々見るような救命救急センター内に担ぎ込まれた。
センターの看護師っぽい人が救急隊員に、
「そこの真ん中のとこに入れてください」
と指示し、ワシはそこで救急車のストレッチャーからERのストレッチャーに移された。

ワシは生まれて初めてERに担ぎ込まれた。