2020年9月2日水曜日

温泉に行かない日(456) ぎっくり腰?になってしもうた①

昨日の9時過ぎの事じゃ。

ワシは事務所のエラい方々が参加するWEB会議を執り行うための準備をしとった。
ノートPCを小脇に抱え、エラい方々が普段勤務しておられるフロアに上がり、エラい方々が普段会議を開く荘厳な部屋に侵入し、先ずはPCを起こさねばならん。
電源スイッチを押し、壁面に装着されたバカでかいディスプレイに線をつなぎ、WEBカメラとスピーカーとマイクを接続し、あとは今回の会議ホストは社外のヒトであるため、ワシらが普段使っておらんMicrosoftのTeamsなるWEB会議用アプリをインストールしておった。
その時、PCに電源コードが接続されておらんことに気づいたワシは、床に這わせておいた電源タップにPCの電源コードを差し込もうとして腰を曲げた。
しゃがまず、腰を曲げてじゃ。
その瞬間、腰の後ろの部分、お尻の割れ目が始まるすぐ上の広い部位に、激痛一歩手前くらいのまあまあな痛みが走ったわけじゃ。
その際手にしておったのは、電源コードの先っちょのみ。
体勢を少しでも動かすと痛みが走るため、やや屈んだ状態のまま痛みが収まるのを待ったが、痛みはいっかな引く様子を見せん。
いかん、痛くて動けん。
これでは準備ができん。
困ったことに、今回は新しい環境のため事前に先方との接続のテストをせねばならん。
つまり普段より準備時間がかかるが、開催時刻は迫っておる。
更に困ったことに、準備しておる会議室の隣が実はワシの事務所(というか務めとる法人)のいっちばんエラい方の執務室で、現代の経営者らしくコロナの有無は関係なく常に部屋のドアは開かれており、つまりワシの作業の様子は多分筒抜けじゃ。
厄介なのは、その方は月一回行われる朝のラジオ体操の際、
「オマエはラジオ体操が下手だ。やる気が見えん。ダメだ出直せ」
等とワシに必ずダメ出しするという点じゃ。
いや、実はその時期ワシは五十肩を患っておって大きく手を回したり体を後ろに反らせるなどの動きができんかったからなんじゃが、それをいくら説明しても「ちゃんと体操できるようになるまで鍛えろ毎日」と返されるのみ。
そんな方が隣からこっちに来て、腰を屈ませたまま痛みに耐えとる姿を見ればこれは、
「ほらやっぱり見たことか。ラジオ体操もできんやつの哀れな末路がこれじゃ」
等と茶化されること必定であろうことは想像に難くない。
トップの人間が一介の中間管理職をおちょくらなくてもいいのにもう…。
いろいろ困ったワシは、やや屈んだその体勢のまま、数m先にある電話に向けてにじにじと移動していった。
普段なら瞬間移動できる距離を30秒ほどかけて電話にたどり着き、ワシの課のスタッフに電話をかけた。
「あ、ごめんSさん?今大丈夫?あのさあ、今WEBの準備してたらさあ、何かぎっくり腰みたくなっちゃって痛くて動けなくなってさあ、ちょっと来て手伝ってくんないかなあ」
と伝えた。
「へ?マジですか?大丈夫ですか?今行きますね」
ワシはSさんに状況をわかりやすく手早く説明するために「ぎっくり腰」という呼称を用いたが心の中では、
「かなり痛いは痛いけど、まあ一過性のもので所謂『ぎっくり腰』ではないだろう」
と思っとった。
すぐにSさんが飛んで来てくれて、その後驚いたことに間髪置かずワシのセクションに所属する役員クラスの人々が次々に踊り込んできた。
会議室があるフロアで勤務している人々も何事かという感じで部屋に踊り込んできた。
うち一人は薬剤師のライセンスを持つ男であり、元薬剤師らしく机に常備しているロキソニンを手にして「とりあえずこれ飲まなきゃ」とワシにくれた。
ロキソニンありがとうございます助かります。
しかしですね、こんなに大勢がわっと寄ってくるようなそんな感じじゃないんです。
そりゃ確かに痛いは痛いですけどそんな大それた事案ではないんです。
心中そのように思いながらも、それを口に出せる状況では既になくなったことも感じておった。
そしてこれはまずい。
このような騒ぎは大変にまずい。

ほら、やっぱり。

隣の部屋で繰り広げられているドタバタを鋭く感じ取ったうちの一番エラい方が遂に登場しなすった。
「お!オマエどうした。はあ?何だぁぎっくり腰だぁ?◯◯(ワシの名字)大丈夫かぁ?」
「はいスミマセンお見苦しい所をお見せしまして。大丈夫じゃないけど大丈夫です。わたくし、すぐにハケますのでスミマセンご迷惑かけます」
「まあいいけど、無理すんなよ。今日は病院行ってうちで休んどけ」
「はい、そうします。スミマセンスミマセン」
更にはうちのセクションの常勤役員が同じ建物に入っている健保組合の看護師を呼んでくれ症状を見てもらい、矢張り午前のうちに病院に行ったほうがいいだろうとなり、それを聞きつけたワシの上司たる常勤役員が病院に自ら電話を入れてくれ、ワシの上司たる部長が別のスタッフに電話してクルマで病院へ送るよう指示し、ワシは車椅子代わりの会議椅子に乗せられて部長自らがそれを押して表に手配されたクルマまで連れて行ってくれた。

こんなに事を大きくするつもりはまったくなかったんじゃが、そんな自分の思惑に反し、自体はだんだんスラップスティックな方面に拡大していくのであった。

痛い!
© K.U / ill-health(ruephas) 2020

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コメントどうもありがとうございます。
貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。