2018年11月17日土曜日

温泉に行かない日(352) 飛蚊症にかかってしもうた

先日は膵管拡張の疑いを指摘され、結果は事なきを得た。
膵癌は難しい病気と知っていたから恐ろしかったんじゃけど、助かった。
これでワシは油断しとったのじゃろうか。

11月の上旬、関西方面に長期出張していた3日目、黒い糸屑のような、ワームのようなうねうねしたものが左目に入っておってしきりに視野を動き回る。
乱舞しとる。
邪魔じゃし、気持ちが悪い。
目薬を差したりポケットティッシュで拭き取ったりしてみたが、いっかな取れん。
どうも実際には糸屑とかワームではないようじゃ。

しかし、時々視界にいろんな模様が見えることは誰にでもあるし、夜寝て目を閉じるといろんな幾何学的模様が広がることもあり、その類と思って放置しとった。
鬱陶しいが痛みもないし、異物感もないし。
出張から帰った今週の月曜日、朝から始まった会議は暗い部屋でプロジェクタを使ったセッション。
スクリーンに映る文字よりも圧倒的な存在感をもって相変わらず糸屑のようなワームのようなものは左目の視野内に乱舞していて、しかしそれはそれで既に慣れの境地に達しておる。
しかし暫くすると視界の左上半分が翳んできて、さらに左下の方に明るい線状の光、真っすぐ伸びる稲光のようなものが時折ピカリピカリとし始めた。

これはちいとヤバいのではないか?
流石に異常ではないか?

先週始まったこの目の以上は留まる事はなく、むしろ悪化の道を着実に進んでおるように思える。
ちいと不安になってきたんで昼休みに調べてみると、ワシのこの症状は「飛蚊症」と言われているものであり、網膜剥離に伴った症状の場合もあるらしい。
実は先日たまたま、親父の緑内障が悪化し、眼圧を抜くための何かのオペをして右目の視力を失った。
そんなこともあって俄かに恐怖心が襲ってきた。
網膜剥離!?
絶対に困る!
見えなくなるのも勿論困るが、それと同じくらいオペが何より恐ろしい。
中学生の時、ワシの担任の先生がある日起きたら視界の半分が見えなくなっており狼狽え、眼科に行ったら「網膜剥離」と言われてオペをしたそうじゃ。
麻酔のために眼球に注射をされたと言っておった。
考えてもみい。
自らの目玉に注射針が突き刺さる瞬間をまさにその目玉で見るんじゃぞ。
絶対にいやだ。
そうなる前になんとかせねば。

で先日、上司に無理言って眼科にかかってきた。
まず普通に視力検査、眼圧検査、えっと眼底はしたんじゃかね、忘れたが兎に角検査。
また待っとると診察室に呼ばれた。
若い医者じゃった。
問診で上記のような症状に関して窮状を申し述べると、
「ま〜あれですね、飛蚊症ですね」
それは素人のワシにも恐らくそうじゃろうとは見当をつけておった。
「ま〜網膜が捲れちゃってるとか穴が空いとるとか一応心配なんで、ま〜その辺ちゃんと調べましょうかね〜」
と他人事のように云われ(まあ確かに彼にとっては100%他人事じゃ)、暫く待合で待っておれと命じられた。
現在7987連勝中を記録しとるソリティアをしながら待っとると看護師が来て、
「散瞳しますね〜!」
と明るく宣言して目薬をさされた。
少し痛い感じじゃ。
さされて5分後にまた目薬をさされた。
段々明るくなりつつ視野でもって更に連勝記録を伸ばしておると、名を呼ばれた。
氏名生年月日を申し述べて再度診察室に入ると若い医者がフットスヰッチを踏んづけて部屋を暗くし、ワシの目をしつこく調べ始めたな。
「上見て」「右上見て」「右見て」「右下見て」「下見て」「左下見て」「左見て」「左上見て」。
年長者たるワシに対して上から目線で視線をいろいろ向けろと命令する。
更に「上見て」「右上見て」「右見て」「右下見て」「下見て」「左下見て」「左見て」「左上見て」。
を繰り返し、暫く沈思しとる。
なんじゃいその間の持たせ方は。
さては、素人を相手にして無闇に不安を煽ってやろうとする算段じゃろうか。

暫くの沈思の後、若い医者が威厳に満ち溢れた顔面をワシに向け、
「ま、問題ないですね。特に問題ないです。捲れていないし穴も空いてません。放置してても問題ないですね。じゃあお大事に」
と云ってさっさと診療を終わろうとする。
「あ、ん、えっ、ちょ、えっとですね。原因はなんですか」
焦ってワシは問うた。
すると若い医者はやや小首を傾がせて、いかにも「素人がプロに何の質問してるの。僕の貴重な時間を無駄遣いさせないでほしいな」的な表情でもってワシの顔面を眺め、
「原因ですか?所謂、老化ってやつですね」
「ははあ、となると、この症状は改善されない感じですか」
「そうですね。慣れてください」

以上であります。

網膜剥離とか言うことではないとわかったので一安心なんじゃが、老化と断じられるのはなかなか癪にさわるが、まあ仕方あるまいて。
残りの人生を有意義に過ごすために、目をせいぜい大事にしていこうと思う。

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コメントどうもありがとうございます。
貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。