2012年10月12日金曜日

温泉に行かない日(112) OPUS/山下達郎

今はやめてしまったけど、かつて私は山下達郎のファンクラブに入ってました。
ファンクラブが出来たばかりの時期に加入した為か、アルバム「ARTISAN」発売後に行われたフェスティバルホール(勿論、建て替え前ですよ~)でのライブでは何と、最前列ど真ん中という席を引き当てました。
その割には仕事で遅刻して、オープニング曲である「アトムの子」が始まってから入場したのが想い出です。
ファンクラブはやめてしまったものの、以後CDが出る度に必ず買っているファンの一人です。

今回発売されたOPUS  ~ALL TIME BEST 1975-2012~は新譜ではなくベスト盤ですが、MacBook標準のチープなスピーカや車のステレオで聞いた時、以前発売されたCDと同じ曲を聞き比べても明らかに音質や音圧が素晴らしく良くなっています。
音の張りと言うか緊張感というか立体感というか、明らかに異なってる。
リマスタですね。

まず例えば「SPARKLE」という曲。
個人的に大変好きな曲なのですが、「FOR YOU」とか「GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA」に収録されているものは音が何か平板で、ライブ版の「JOY」収録のものを聞いて「ああ。これでなくちゃ」と初めて音質に納得出来ました。
今回の「SPARKLE」は(勿論この曲だけでなく他の収録曲もそうですが)、くり返しになりますが本当に音質が良くなっていて聴き応えがあります。

次に「LOVE SPACE」。
イントロ部分で聴こえるドラム。
各タムの間を遊びながら叩いていて、そのあと上から下へ気持ちよく叩きくだしてるドラムの音。
タム特有のヘッドが弾けて震えてる感じ、スティックで叩かれてリリースされて振動している感じが凄く強い。
そしてそのタムに共鳴するスネアの音さえも聴こえる。
以前のCDでは聴こえなかったミュートしたカウベル(と思うけど、別の打楽器かもしれない)の音も、左のスピーカの奥から振動感とともにはっきり聴こえてくる。
本当に生っぽい感じで見事にリマスタリングされてる。
これら2つの曲以外の品でも、ものによっては別物にさえ聴こえます。

学生時代私はRuephasというバンドでドラムをやっていて、そのバンドはリーダーであるギターの男の独創性と、ヴォーカルの女性の歌の上手さと、キーボードの女性のかっきりしたリズムと、ベースの男のリズム隊らしからぬメロディアスなベースラインで持っていた様なグループだったのですが、そんな私らも卒業記念にオリジナルのカセットテープを作ろうという話になり、リーダーが買った多重録音機を使ってピンポン録音して願いを果たしました。
当時プロが使っていた16チャンネルとか32チャンネルの超高価なレコーディング機材とは大違いのカセットテープベース(若いヤツは知らないだろ)の4チャンネルアナログレコーダを使用し、当然の事ながら録音専用のスタジオを借りられる程の金もなく、N本F祉大学の学生会館の空いている普通の部屋を使って収録しました。
想い出深い作品なんだけど、個人的には「やりきったぁ~!」という感じではなかったんですね。
なんでかというと、演奏技術の未熟さとか、曲やアレンジを練る事もなくいきなり録音したから作品としても未完成とかそう言う方面ではなくて、音質がダメだったんです。
私らがたま~にやってたライブではそれなりの演奏が出来ていたらしく、そこそこの評価があった(らしい)んだけど[1]、、ライブは当然の事ながら全員が一発で音を出す訳だから「音質の劣化」なんてのはないよねえ。
ところがそれが重ね録りとなると、パートごとに録って行く訳だからわたしらの真骨頂であったノリとかグルーヴ感(同じか)は最初っからないし、当然の事ながら重ねれば重ねる程音質はへたって行き…、というわけ。
でも、多重録音でグルーヴ感を醸し出すというのは最初っから難しいと思っていたから[2]そちらは諦めてたわけで、だったらせめてもう少し音質が良かったらなあ、というのが今も抱いている正直な感想です。
つまり、録音された音楽の音質というのは、作品や演奏そのものの出来上がりと同じくらい大事だと思うんですよ。
だからもし今、「再度Ruephasの音をレコーディングという形で取り直しましょう」ということになったら、ドラムの練習をやり直すとかっていう事以上に、多分録音機材に神経を使うと思います。

新聞かなにかで読んだ話では、山下達郎は東北で大震災が起こった後の「Sunday Song Book」では、音の環境が悪い避難所でも聴きやすいように自ら音質を調整していたとの事で、そんな彼(多分本人的には「こんなの当たり前じゃん」と思っているに違いないけど)なればこその秀逸なリマスタだと思います。
「DOWN TOWN」から始まり最新作の「希望という名の光」まで全49曲(ボーナスディスクいれれば55曲)、アルバムタイトル[3]通り、発表順に整然と並んだ曲そのすべてが輝いている素晴らしいベスト盤です。

温泉に何も関係なくて<(_ _)>

[1]
所属サークルのコンサートでは大抵トリでした、ははは。
それがなんだってどうか言わないで。
あと大学の外の世界で言うと、当時まだヤマハのポピュラーソングコンテスト(POPCON)というシステム辛うじて生きていた時代で、全国大会の一歩手前まで行った実績有り。 
ただし私はその大会に参戦以降、ヤマハというカイシャに深い疑念が芽生えてしまい、それが原因でそれまで信念なく使っていたヤマハのスネアドラムの使用をやめ、以後は星野楽器(TAMAブランド)にスイッチしてしまった。
あと、詳細は忘れたけど、名古屋にある中区役所ホールってとこで開催されたNHK主催のコンテストに参加した事もあますが、審査員に「音が綺麗すぎてロックじゃない」と酷評され敗退。
その酷評ごとNHK-FMにオンエアされ、大変悔しい思いをしたのもいい想い出ですね。
やったのはハードロックだったのですが。

[2]
スタジオライブという手もあったんですけどね。
ジョニー・ルイス&チャーのスタジオライブが理想。

[3]
OPUS(Opus)とは作品番号の意味で、大抵発表順(あれ、作曲した順だったっけ?どっちかです。ははは)に付けられる番号。
「Op.」って略される事が多いです。
実例で言うと、有名どころではかのベートーヴェンさんの「交響曲第9番ニ単調(合唱付き)」ってヤツ。
日本じゃ暮れになるとあっちゃからもこっちゃからも聴こえる有名な曲ですが、これの作品番号は「Op.125」であります。
誰か山下作品にもOp.付けてくれないかな。

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貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。