あれは今年の4月。
浜松に住む同じ会社の友人から「富士にも銭湯があるって知ってた?」という情報提供を受け、アパートから程近い場所にあるその銭湯に出かけましたが玉砕したという苦い思い出があります。
その銭湯は玉の湯(静岡県富士市横割5-1-1:0545-61-4016:¥400:17:00〜21:00:正月四が日を除き無休:公式Websiteなし)という名前です。
ここは正確に言うと単独型の銭湯ではなく、ホテル玉やというホテル(実質旅館)の大浴場としての機能が本来であります。
しかし夕方5時からは一般の入浴客も受け入れており、また脱衣室には例の銭湯特有の料金表も掲げられていてその意味ではいわゆる普通公衆浴場であることは間違いなさそうなので、銭湯と判断いたしました。
4月時点では夕方5時に営業開始と云う情報でしたので、ある日曜日のその時刻に現地に行ってみたんですけど、木製引き戸は頑として開かず、多分今日はお休みなんだろうと諦めをつけてそのまま帰宅しました。
その後富士の友達にいろいろ訊いてみたんですが、玉の湯はおろか母体であるホテル玉やの存在さえ殆どの人が認識しておらず、そういった意味ではもうこりゃ秘湯だなと思ってました。
で、飽きっぽい私は暫く玉の湯に行こうとも思わず半年も過ぎてしまったのですが、昨日動機も理由も無いまま急に思い立って突発的に玉の湯に出かけたのであります。
ま、強いて言えば仕事してたら大きな風呂に入りたい気分になってきたんだけども遠くに行くのは面倒だし、近場のスーパー銭湯は芋洗い状態なので却って疲れるしどうしようかなと考えてたら玉の湯の存在を思い出した、って感じかね。
事務所から一旦帰宅し、着替えてから車で向かい、着いたのは夕方6時過ぎくらいかな。
4月の時と同様、表には暖簾は掛かってませんでしたので「こりゃ今日も空振りか」と思ったんですが、ものは試しと引き戸を開けてみると、過日あれだけ私の入湯を拒んだ引き戸は経年劣化によるものと思われる重さを伴って今度はあっさりと開きました。
可成り古びた暖簾が玄関先に掛かっています。
外に掛けてくれればいいのに、もう。
上り框のようなところを上がって、男湯と書かれた更に別の引き戸を開けると右側が番台。
番台には、98%程度はスリープ状態に陥っているように見える婆さんが陣取っていました。
しかし「こんばんは」と声を掛けても婆さん無反応。
こりゃ少し耳が遠いかもな、と思い今度はやや大きめの声で再度「こんばんは」と叫ぶと、婆さんは漸く再起動し、小さな声で「はい、いらっしゃい」と答えてくれました。
ひと安心して料金を払い板場を見ると誰もいない。
壁の向う側にある女湯の板場からも人の雰囲気は全く感じられない。
ガラス戸越しに浴室内を見ても誰もいない。
どうも今のところは銭湯まるごと完全貸切状態のようです。
板場には本当に相当な年代物の体重計が置いてありましたので、怖いもの(自らの体重)見たさで体重を量ろうとしましたが、肝心の針が外れてて下におっこっちゃってました。
怖いものを見るのは諦め、素直に服を脱いでタオルと石鹸を手に浴室に入ろうとしてふと婆さんを見ると、彼女は再び節電モードに入ってました。
ガラス戸を開けて中に入ると、浴室の天井は結構高く開放感があります。
銭湯でよく見かけるシャワー(ホースがなくて、シャワーヘッドだけが壁に取り付けてあるタイプ)付きカランは全部で8基くらいあったかな。
それとは別に立ったまま浴びられるシャワーもひとつありましたが、こちらの方は長期間使われていない、つまり壊れているように見えました。
建物の老朽状態については否めないものの、いやこのくらい古びていたほうが銭湯らしくて好ましいです。
浴槽は大小2つ。
両方とも非常にスクエアな感じの造りです。
大きさの比率は1:2くらいで、小さい方はうす赤い変わり湯。
大きな方は無色透明なお湯が満たされてます。
かかり湯をして先ず小さい方に入りました。
最大5人、ベスト2人という感じです。
ああ、これはぬるいぞ。
程よくぬるい。
これはいい。
浴槽はかなり深めで浴槽の底におしりをつけて座るのは不可能なので、浴槽内にしつらえてある腰掛ける部分に腰掛けます。
座面の奥行きがあまりないためやや窮屈ですが、姿勢次第では寛げる体勢を取ることは可能です。
うっすら汗ばむくらいまでお湯に浸かってから浴槽を出て、持参の石鹸で体を綺麗に洗い、今度は大きい方の浴槽に入りました。
お。
こっちは熱い、熱いぞ。
小さい方は静止湯状態でしたがこちらは湯口からお湯が出ていて動きがあります(説明が下手ですまん)。
常に熱いお湯が循環しているのでわたし的にはちと厳しいですけど、激烈な熱さというわけでは全然ないので、入るのに忍耐力を要するということは全くありません。
普通の人であれば丁度良い湯加減だと思います。
最大10人ベスト4人の広くて深い浴槽に、わたし1人だけ。
ド贅沢と云わざるを得ませんな。
浴槽内の腰掛け部分に座って足を伸ばし、天井を見上げて全身から力を抜くと、先月から今月にかけてたくさんあった大変なことが思い出されます。
今もその大変なことにはまだケリがついてないんですけど、こうやってお湯に入ってるとその大変なことがお湯に溶け出していくように思われ、心が疲れた時にはやっぱり、遠くの温泉よりも近くの銭湯の方が効くよなあと改めて感じました。
そのあとは2つの浴槽を交互に楽しみ、汗をかきすぎて喉の渇きを覚えたため浴室を後にしました。
着衣して顔にアトピー用保湿薬を塗って番台を見ると、婆さんは依然としてスリープ状態若しくは節電モードに入ったまま復旧しておらず、わざわざ正常に再起動させるのもなんだと思ったため、抜き足差し足で玉の湯の玄関を出て、帰宅しました。
玉の湯、多分常連決定だと思います。
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コメントどうもありがとうございます。
貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。