2012年7月2日月曜日

場所が明かせない温泉A(1)

名古屋出身の作家、清水義範さんの短編集に「秘湯中の秘湯」があります。
その中に、名古屋市中区栄の交差点、そう、松坂屋や三越、丸栄があるあのでかい交差点にある温泉という秘湯が書かれています。
小説のこと故もちろん実存しない温泉なんですけど、設定としては、名古屋市営バスの栄バス停の横に温泉が湧出していて、設備と言えばその浴槽と浴槽の脇に置かれた脱衣篭だけであり、栄であるからにして当然人通りはごく多く、入浴するには非常に勇気がいるという意味での秘湯です。
これに似た状況にある実在の温泉と言えば、伊豆にある独鈷の湯があります。
観光客がごまんと押し寄せる場所であり、流石に現在は全身入浴は禁止されていて、鑑賞もしくは足湯としての機能しかありません。
以前、友人と夜中に訪れて全身浴を試みましたが、夜間はお湯を抜いているらしく浴槽は殆ど空で玉砕しました。

一方、登山装備を万端整えた上で人跡稀な山の中に分け入り、藪を漕ぎ、雪をかき分け20時間くらいかけて目的地に到達し、持参のスコップで地面に穴を掘ってかりそめの浴槽を作り、湯が貯まるまで3時間待ってから浸かるというのも確かに結構秘湯ですけど、公衆の眼前で敢えて入浴するってのは、それより遙かにシビアな秘湯ですよね。

全く別の話になりますが、湧出量が非常に多い温泉ですと、浴槽に満たすのに必要な以上に湧出量があるため、余った温泉をだばだば捨ててしまうというのがあります。
勿体ないなあと思うんですけど、もうそれが当たり前。

これら二つの要素を兼ね備えたと思われる温泉を見つけました。
場所は一寸言えません。

現場は国内某所に立地する、とある高級マンションの裏手であります。
© ill-health(ruephas) 2012
これがその現場の状況です。
撮影時には湧出は見られなかったのですが、現状を観察する限り、可成りの量の温泉が湧出というか、なんというか、捨て湯されている痕跡がいやというくらいに見られます。
問題のマンション近辺は所謂高級マンションが建ち並ぶエリアであり、JRを含めて複数の路線が通っていて、一般には高級と言われる百貨店も徒歩5分の距離あるという非常に利便性の高い土地です。
かたや近辺の駐車場を眺めれば、メルセデス率は80%であり、残りの19%はレクサスかBMWであり、更に残りの0.5%は少なくとも3ナンバーであり、最後の0.5%は5ナンバーながらハイブリッド車であり、軽自動車という概念はこのエリアにはありません。
そのマンションは川辺に立地しており、川と湧出現場の間には遊歩道が整備されています。
遊歩道にはハイソサエティな感じの老若男女が1匹数十万円はしそうな犬を引き連れてしきりに散歩しています。
現場からOFした温泉は、そのハイソな人々が高級なイヌを散歩させている道を通って川に流れ込んでいるようです。
© ill-health(ruephas) 2012
写真だけでは解りにくいのですが、温泉の流れる部分だけは明らかに赤く変色しているのがみえるかな。

マンションの表に回って観察してみたのですが、そのマンションが「温泉付き高級マンション」である旨の表示は一切なく、その点では、この温泉がそのマンションに属する資産なのか否かは謎です。

いずれにせよ、このおこぼれにあずかるためには可成りのガッツが必要であり、時間帯とタイミングを充分に見計らって実行しないと警察に通報され、その夜は臭い飯を食うハメに陥る事となりそうです。

正に「秘湯中の秘湯」。

ちなみに現場ですが、有名温泉地ではぜんぜんありません。
繰り返しになるけど、単なる超高級住宅地です。
近くには日帰り温泉施設の様なものがありますが、それだけです。
現場から車でそうだなあ、30分程も走れば、誰もが知っている超有名な某温泉がありますが、色からするとこの温泉は、ひょっとするとその超有名温泉の泉質に近いかもしれません。

なお、このポストは2012年7月1日にしていますが、実際に見聞したのはかなり以前の話ですんで、前後のポストから場所を推測するのは無駄な努力ですぞ。
うふふふふふふ。

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