2013年11月25日月曜日

滝ノ谷温泉センター(1)

2012年8月に、滝ノ谷温泉センターが矢張り気になるというポストをしました。
ふうん、滝ノ谷温泉センター(たきのやおんせんせんたー:静岡県静岡市葵区北1239-1:054-247-7441:¥500:8:00~16:30:定休水曜:持ち込み自由:公式サイトなし)か。
あなた、センターですよセンター。
しかしセンターと名乗っている割にはどおも少し貧乏くさく(失礼)、つげ義春臭がぷんぷんしてて、つまり要するに私好みの温泉場ではないかという予感がしてて良い感じだぞ。
というような内容のポストでありました。

そのポストで予測していたとおり、行きたい割にはその後全く足を向けることなく1年以上が経過してしまった訳ですが、単身赴任先に引っ越した結果時間的にとても近い距離になったため、ここらで一発行ってみようかと決意しました。

車に乗り込みカーナビで住所を入力してみましたがピンポイントデータではない。
ここからして既に怪しいと思ったんですが、施設名称で検索をかけてみたところちゃんと検索できました。
あは~ん、と思いながらカーナビに従い車を走らせること約30分で静岡県立こども病院の辺りまできました。
もう少しの筈ですが、病院を過ぎるとなんか急激に住宅地に入っていき、路も狭く、おいおいこんな路の先にマジで温泉有るのかおい、状態な感じになってきます。
かなり不安になりつつもカーナビに従いじわじわ進んでいくと、あでうでしやセンターの案内表示が現れました。
しかしそれはカーナビの指し示す方向とはまるっきり反対。
こういうときは現地の案内に従うのが得策と体験的に知っているので、案内表示の方向へ。
更に進むと、なんか普通の民間アパートの敷地内へ路は続いていきます。
ほんとにマジで大丈夫か。
まあダメだったら退去すればいいやと思って進むと、その民間アパートの敷地内を経由してその先に実に怪しげな2階建ての建物がありました。

おお、これこそが滝ノ谷温泉センターであります。

噂に違わず怪しさ1000%。

思わず嬉しくなり、ぜんっぜん大きくない「大駐車場」(笑。文末写真参照)に車をねじ込んで建屋に歩いてきました。
2階部分へつながる青い外階段があり、ヨソモノが建物に進入出来るルートはそれ以外にはなさそうなので上って行くと次第に音楽の音がでかくなってきました。
カラオケのようです。
演歌であります。
艶歌とも書きます。
ガラスの引き戸を開けると、一昔前のヘルスセンターを小さくしたような広間があり、ステージさえ設けられていて、その上ではオッサンが目を閉じて演歌か何かを自己陶酔しながら歌っています。
多分、歌ってるのは「何か」の方でしょう。
深いエコーとそれより更に深いビブラートがやけに印象的であります。
ちなみにオッサンの前にあるモニターはブラウン管です。
うわあ、久しぶりだな。

私は温泉に入りに来たんですが、私の周りにいるのは自己陶酔演歌男とそれをぼんやり眺めながら持ち込んだ酒を飲んでるオッサンばかりであり、どうして良いか解りません。
まあ少し待っていれば状況が変わるかも知れない。
と思って暫くただ立っていると奥からピンクの服を着た篦棒に明るそうな店のおばちゃんがやってきました。
やれやれ助かった。
これで温泉に入れると思い、その篦棒に明るいおばちゃんに500円払い、ロッカーがないとのことなので財布も預け浴場に向かおうとしましたが、どっちがその方向だか解らない。
そこでその愛想が良い篦棒おばちゃんに訊くと、
「そこの階段を下りて右の方に行くとお風呂だから」
と教えてくれました。
云われたとおり階段を下り右に曲がっても何もない。
暖簾らしきモノも見えないし、浴室入り口を示す一切の表示は何もない。

「ふうむ」

階段は再度隣の建物の2階に向かっているので上がって見たけど、そこはどうも先程通り抜けてきた民間アパートのようです。
階段を下り、少し歩き回ってみましたが全然見つからない。
これは施設内で遭難してしまう、何とかしないとと焦り始めてふと横を見ると、極めて小さい「出入口」という表示がひっそりとありました。
100均で売ってるようなち~っちゃいやつです。
もしやと思ってそこに入ると、ああ、あっと見つけた。
やっと到着しました。




脱衣場は照明がついていなくて薄暗く、脱衣籠には爺さんのものと思われる服が一名分。
一人先客がいるようです。
裸になって、矢張り薄暗い浴室に入ってその爺さんを見ると、まただ。
まただよ。
またもやいたのは、そう。
笠智衆であります。
そのジジイは前回現れたときより更に笠智衆度を高めており、あの木訥とした感じが全開であります。
笠さんは殆ど毛髪が残っていない頭部を丹念に丹念に洗っていましたので挨拶はぜず、掛け湯をして浴槽に入りました。

お風呂は「弘法の湯」と銘打たれた内湯の岩風呂のみで露天は有りません。
浴槽の縁から少しオーバーフローが見られましたが掛け流しかどうかは解りませんでした。
少し落ち着いたので浴室内を眺め回してみました。
シャワーは3基。
浴槽は大変風情のある岩風呂で最大7人、ベスト3人といった感じの大きさで、深さはちょうど良い。
湯口からはお湯が流れ出ています。
掲示によると硫黄泉とのことらしいのですが、硫黄臭は殆どしてなくて、笠さんが使ってる石鹸の香りの方が遙かに勝っています。
温泉成分の有無はよくわかりませんが、なんかよく暖まる感じのお湯です。
浴室内掲示には、湯温は38℃~40℃と有りましたが、39℃くらいに思います。
だけど、すぐに結構な量の汗が噴き出てきてとまんない感じ。

ふーふー云いながら入っていると、引き戸ががらりと音がして、NHKの磯村キャスターが入ってきました。
磯村さんは素早く掛け湯をすると素早く浴槽に入ってきて私を見て、
「ふ~。ここにたどり着くのに2時間かかったよ」
と話しかけてきました。
ふうん、そりゃ遠いなあ。
「どこからです?」
と訪ねると、磯村キャスターは曖昧に地球かどこかの方を指さして、
「長岡」
長岡ぁ?
長岡ってどこだと思ったんですがそんなことはおくびにも出さず、
「へえ、そりゃわざわざ大変でしたね」
「うん。実は県立こども病院から1時間かかった」
「へ?」
確かに県立こどもから現地までは意外にシビアな感じで迷う可能性は有りますが、1時間とはこれはこれは。
私は磯村キャスターを異星人を見る目で眺めながら(こんなんでよくNHKのキャスターがつとまったな)などと思ってました。

とまあ、磯村キャスターと、体を洗い終えて湯船に入ってきた笠さんと、硫黄泉ならどこが良い等という平和な話をぼそぼそと低い声でしながら薄暗い浴室で小一時間過ごしました。

くどくど長い文章でスミマセンでした。
結論的には「ここの温泉、気に入った」です。
クセになりそう、この雰囲気。

今度行くときは、私も広間のあのステージで、内山田洋とクールファイブの名曲「噂の女」を、深いエコーとビブラートで是非歌いたいと思っているのです。
その後、温泉。
その後、ビール。
その後、天国。

県立こども病院から現地まで、
カーナビ無しでこの地図だけでもしこれたら、
今度現地でビール一本おごるぜ
© ill-health(ruephas) 2013

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