2019年12月28日土曜日

温泉に行かない日(417) キックバネを買いに

自宅のドアに付いとるというか空いとるというか、新聞受けがあるじゃろう。
あれの蓋が壊れてしもうた。
壊れて外れてしもうた。

外れた蓋
輪ゴムは上部のシャフト上のものが
紛失せんようにするためはめとる
なんだか哀れな姿じゃ
© ill-health(ruephas) 2019

というか随分前から壊れとったんじゃけど面倒くさくて放置しておった。
しかし余りに体裁が良くないため一大決心をば致して修復することにした。
とは云っても自分で修復させる自信は全く無い。
苦労ばかりじゃろう。
ワシとしてはこのような類の件は大変苦手としておる。
若い頃の苦労は買ってでもやれとの言葉があるが意味がわからない。
金を出して苦労が回避できるのであらばそれでよいではないかと思うところもある。
そもそもワシは既に若くもないから苦労を買う義務もない。
つまり自分でやる気はさらさらない。

ちょうど都合の良いことに自宅の向かいに建築資材販売会社があって、この会社はワシが引っ越してきた頃から潰れもせずずっと手堅く経営を継続しとる。
継続しとるだけではなく、年々少しずつじゃけど社屋がきれいになってきとる。
言い換えれば顧客に恵まれ、きちんと良心的な商売をしとるということじゃ。
ここならば安心できると思い早速相談してみた。
外れた蓋を手に持って行って、居合わせた若い職人さんに窮状を訴えてみた。
職人さんはしげしげと蓋を眺め、裏返して触り、いろんな箇所を弄くり、そしてワシに云った。
「うーん、ちょっと難しそうですね」
そうか、難しいか。
「このバネが折れちゃってるのが原因なんですけど、メーカーも型番もわからないんで同じものが手に入るかどうか…」
そうか、手に入らんか。

わかるじゃろうか
バネの右側の上が折れておる
実際にはもっとぐーっと長くなっておって
それでもって蓋を押さえるという仕組み
© ill-health(ruephas) 2019

「どうです?こうなったらもうドアごと交換ってのは」
「いやあ、やめときます」
苦労は金で買えば宜しかろうが、まだまだ使えるドアの本体を買う気は全く無い。
そもそもマンションであり、ドア自体は共用部分とされとるから勝手に交換は出来ん決まりじゃ。
兎に角建材屋のプロが「難しい」ということは難しいんじゃろう。
ワシは肩を落として自宅に取って返し、自らの手で事態を打開することとした。
Macbookの蓋(こちらの蓋はまだまだ健在)をぱかりと開けてChromeを立ち上げドア新聞受け バネで全世界を検索してみると、ワシと同じ悩みを抱えておる民が多数おっていろんな事を書いておる。
いくつか読んでわかったのは、折れた蓋のバネをことを「キックバネ」と云い、ワシんちの新聞受けの蓋のように何かを裏側からぐっと抑える場合によく使われる部材のようじゃ。
これをうまいこと入手せしめ、蓋についとるところの棒状のものにうまいことはめ込みさえすれば、まあ元通りとは云わんまでもうまいこと修復できることはわかった。
ならばキックバネを入手するまでのこと。
ワシは早速真っ黄っ黄のスイスポに颯爽と乗り込み、一番近くにある大型DIY店に向かった。
開店直後の店内に入り真っ直ぐサービスカウンターに歩み寄り、そこに立っておったおっちゃんに外れた蓋を指し示して、
「このバネが折れっちゃったんで同じようなものを買いたいんですが」
と伝えると、おっちゃんは即座に胸ポケットからPHSを取り出し、
「あ〜、◯◯君か。キックバネ探してるお客さんが居るんで売り場案内してくれ」
と◯◯君に指示した。
因みにワシから「キックバネを買いたい」とは一言も云っとらん。
ああ見えてあのおっちゃん、なかなかのプロじゃ。
すぐに飛んできた◯◯くんに蓋を見せると、
「あ〜、う〜ん…これですか。あるかなぁ」
と客を可成り不安にさせる言葉を吐いた後足早に歩き出した。
ワシも急いで◯◯君のあとについて行った。
建築資材コーナーに辿り着くとワシを見て、
「ここなんですがね、うーんやっぱりなさそうだなあ」
棚を見ると数種類のキックバネがあるにはあるがまさに帯に短し襷に長し状態で、シャフトの直径(2〜3mm程度)に上手く適合しそうなものは非常に弱っちくてとても蓋を押さえられるような力はなさそうだし、逆にこれならば蓋をぐっと押さえられるじゃろうと思われるものは、コイル状の部分の内径が7〜8mmもあって棒に嵌めてもガバガバで使い物にならんじゃろうと思われる。
ワシはこの店を諦め、少し先にある別の大型DIY店に向かった。
最早店員に聞くまでもなく、ワシは真っ直ぐ建築資材コーナーに向かい、すぐにキックバネの在り処を見つけた。
しかし、そこでも状況は似たようなものじゃった。
ワシは「ううむ」と唸り声を上げ、真っ黄っ黄のスイスポに戻ってシートに座り、窓を開けて煙草に火をつけて一服つけながらiPhoneで近くにある金物屋を探してみた。
個人経営系の金物屋は案外沢山あり、その検索結果に基づき4店程訪れてみたがよく考えれば本日は年末の日曜日。
個人経営ゆえどこもかしこも既にお休み。
店先に「謹賀新年」と書かれた正月飾りを掲げており扉はピタリと閉じられておる。
まあ仕方ない。
続きは来年に回し、暮と正月は郵便受けがぱかりと空いたまま過ごすとしよう。
これもまたヨシじゃ。

多分こんな感じのバネが良さそうに思えるんじゃが
サイズもわからんしネットで買うのはちょっとなあ…
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金物屋回りが空振りに終わったワシは、その脚でしおさい竜洋に向かい、ひとっ風呂浴びてから帰宅して昼寝をしたわけじゃ。

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たぶん。