2020年4月5日日曜日

温泉に行かない日(440) ドライブレコーダーを買ったけど⑥(終)

ヒューズボックスのありかとそこからの電源の取り方、助手席側のアーシングポイントをワシなりに目途をつけられたので、それが正しいかどうかを確認するために行きつけの車屋に行って意見を聞くことにした。
真っ黄っ黃のスイスポくんを買った店じゃ。
そこの店長はSというメカ上がりで、昭和の時代に流行ったような古めかしいデザインのオールバックをしたおっさんじゃ。
メカ上がりじゃから、このような事を問い合わせるにはうってつけの男じゃ。
如何せん、横柄な男ではあるが。
クルマのメカ関係の事は全て任せてしまって宜しかろうとは思う。
必要な知識は全て身につけとる男じゃ。
如何せん、横柄な男ではあるが。
ワシは自分なりの仮説をその横柄な男に次々に披露していった。
即ち、電源は助手席足元のヒューズボックスのこのヒューズから取るので問題ないか。
即ち、アーシングポイントはやはり助手席足元のこのネジを使って問題ないか。
即ち、配線はフロントカメラはこのようにAピラーのここを通してリアカメラはあそこの上のところを通していいのかあーだこーだ。
ワシが発するその一々に軽く小刻みに頷く横柄な男であったが、素人の御説を長々と聞かされて苛々辟易しとるプロみたいな表情も垣間見える。
心做しか表情に影がある気がする。
そう、要するにその横柄な男はワシの事を「知ったか耳学問の素人野郎」として見ておるのが明白じゃった。
それでもその横柄な男は、
「おう、◯◯さん。多分それでほぼ合ってる。リアの配線の件はちょっとアレだがまあまあ合っとる」
と返事をしてくれた。
よし。
「そうか、これであってるんだな。よしわかったありがとう頑張ってやってみるわ。じゃあ帰るわ。時間取らせて済まなかったまた今度会おうぜ」
そう。
ここまで確認出来れば、ワシとしてはこの横柄な男にもう用はない。
じゃからワシは早速その横柄な男とおさらばして、真っ黄っ黃なスイスポくんに乗り込んで帰ろうとした。
「待て、おい待てよ」
なんだよ。
今からワシは世紀の大勝負をやりに家に帰る必要がある。
もうこの横柄な男と話している時間はない。
しかし「待て」と云われて待たなければ今後の関係に罅が入る。
この男は横柄ではあるが、考えてみればワシには色々良くしてくれておるのは事実じゃ。
ワシはこの横柄な男以外の男からクルマを買ったり、クルマのメンテを依頼するつもりは全くない。
じゃからワシは真っ黄っ黃のスイフトに乗るのはやめて、心のなかでぶつくさ云いながら横柄な男の方に戻っていった。
「なんです?」
「いや◯◯さん。フロント側のカメラだけならもしかしてお前にも出来るかも知れん。見てくれを気にしなければ先ず出来るし、配線の収まりまでキレイに仕上げる事ももしかしたら出来るかも知れん。もしかしたらな」
うん、そうじゃな。
多分大丈夫じゃろう。
「でも、リアカメラは無理。お前には絶対無理」
「無理?」
「カッコ悪い露出配線だったらまあ出来るかも知れんが、キレイに収めるのはもう100%無理だし、リアハッチにつけたカメラからの配線はハッチの中を通さないと雨漏りとかの原因になるけど、お前にそれは絶対に出来ない」
「出来んかい?」
「出来ん。多分まるまる一週間かけても出来んし、万が一出来たとしてもブサイクな仕上がりになるのは間違いない。まあ、出来んな」
ふうむ、出来んか…
横柄な男はリアハッチを開けて実際に説明し始めた。
何だかさっきより随分と活き活きした表情になっとる。
「リアカメラのコードはリアハッチ内を通さないとダメだ。素人はめんどくさがってウェザーストリップの上から配線を通しちゃうけどそれだとカッコ悪いし水漏れの原因になる。断線するかも知れん。だからこの楕円形の蓋みたいなのに少し穴を開けてここからコード入れて、この蛇腹管みたいなのに通していく。全部リアハッチの中だ。配線は全く見えなくなる。これなら断線のリスクもない」
「うん」
「そのあとは、リアドアの上の方、この取手の裏側辺りだ。そこからフロントドアの上にコードを通していく。必要な部分の内張りを剥がしてコードを収め、元通りキレイに貼り直していく」
「うん」
「フロントドアの上辺りからウインドシールドの上側の内張りをやはり剥がして配線を通し、元通りにしてやらんとだめだ」
「…」
「つまり、わかるだろ」
「…うむ、わかる」
「いいさ、安くしてやるよ。こういうのはな、オレたちプロに任す方がいいんだよ。自分でやっておかしな仕上がりになって余分な金かけて直すより、最初っからカネかけてプロに任せたほうがいいんだ。悪いことは云わん。オレらに任せとけ」
「そうだな」
「そうだ。お前のクルマな、今度半年点検のはずだ。それに併せてやってやるよ」
「わかった。任せていいかい」

そう。
結論は「知り合いのプロにカネを払ってやってもらった」。
考えてみれば、当たり前かも知れん。
ワシが嘗てやったことがあるのは車内配線を全く要さないアクセサリソケットの増設くらいなもんで、内張りを剥がしたり、見えないように配線を取り回したりというような事はやった事がなかったし、やった事がない事を「出来る」と思うのは過信というやつじゃろう。
ということで、全てをプロであるその横柄な男に託すことにした。

託して数日後、ドライブレコーダーの全てが装着された真っ黄っ黃のスイスポくんが戻ってきた。
全て完璧に仕事がされておったのは云うまでも無かろう。

リアハッチを開けたところ
中央やや上にある四角いのがリアカメラ
そこからの配線が楕円形の蓋から入って
下のS型蛇腹管を通って車内に伸びとる
© ill-health(ruephas) 2020

室内左側上部
見えないように施工して貰ったから当然見えんが
アシストグリップ(吊り革じゃな)の辺りの内側に
コードを引き回しとるはずじゃ
© ill-health(ruephas) 2020

リアハッチからの伸びたリアカメラのコードは
ウィンドシールド上部を経由してルームミラー辺りで
取り出してフロントカメラに接続されとる
© ill-health(ruephas) 2020

駐車監視時の電源を制御するユニットは
グローブボックスに取り付けてある
自分でつけようと思っとった時分は(洒落じゃヨ)
足元の邪魔にならん辺りに転がしとこうと思っとった
© ill-health(ruephas) 2020

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コメントどうもありがとうございます。
貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。