2020年4月22日水曜日

プロジェクト "山神社"(56) 合祀・境内社について⑥

そもそもの疑問をもう一度振り返って確認するならば要するに、
「富士市を中心とした静岡県東部周辺には、なんで傾いだ石祠だけの山神社が大量に現存するんじゃろか」
と云う素朴なものじゃった。
一方、静岡県中部から西部エリアには山神社(を含めて大山くんが住まう神社)として単独で存続しておる物件が極めて少なく、大山くんは大抵の場合「境内社」として肩身が狭そうな境遇下、何とか生きながらえとると云う現状がある。
存続のあり方が同じ県内であってもエリアによって可成り異なるわけじゃ。
じゃからワシは比較的調べが簡単に付きそうな「境内社とは何じゃ」という点から調べ始めてみた。
それが「神社合祀とは何じゃ」という事に繋がり、前回までのポストとなっておる。
明治39年に出された「神社寺院仏堂合併跡地ノ譲与ニ関スル件(明治39年勅令第220号)」とやらが神社合祀の原因らしいとわかり、その原本を探し当てることまでは出来た。
しかし、その中身を見てもどこを見ても「そもそもなんで神社をじゃんじゃん合祀したのか」はさっぱりわからん。
そこで行き止まった感がある。

ところでワシは学者ではない。
安月給で上司に頭が上がらず、部下からは突き上げを食らうだけの哀しきリーマンじゃ。
そんな哀しきパンピーなワシが一次資料的なものを蜘蛛の巣の世界で探して、学術的な分析を行うことはこれ以上無理じゃと思われる。
じゃからこれ以降は、きちんとした知見のある人が書いた研究資料を蜘蛛の巣で探してみようと思った。

まず興味を惹かれたのは、2008年に早稲田大学大学院文学研究科紀要で発表された「神社整理問題の射程--埼玉県北足立郡内間木村の事例を通して」という論文じゃ。
著者の北浦康孝という人物は恐らく早稲田大学の先生じゃと思われるが、SNSなどは一切使っておらぬようで素性はワシにはよくわからぬ。
この論文は国立国会図書館に収蔵されとるようじゃが、流石に現物をそのままWebで閲覧する事は叶わず、書籍情報と国会図書館の収蔵場所が確認できるだけじゃ。
まあそらそうじゃろうと思う。
ところがじゃ、URLから判断するに英国の学術論文検証サイトと思われるhttps://core.ac.uk/内に何故だか知らんが全文収録されておった。
恐らく紀要をコピー機か何かでPDF化したものじゃろうが、それをそのままここで読むことが出来る。
学術論文であるからして格調高く、また文中には古い一次資料を文語体・旧字体のまま引用しとる部分も多くて読むのに正直難儀したが、ワシが感じた疑問の全てについては書かれておらんものの、問題への入り口としては大変良い資料じゃった。

論文冒頭で先ず、
本稿でいう神社整理とは、1906年(明治39年)4月の府県社以下神社の神饌幣帛料に関する勅令第96号と、同年8月の勅令第220号すなわち「神社寺院仏堂合併跡地ノ譲与ニ関スル件」により全国的に展開されたものを指す(引用にあたっては漢数字はアラビア数字に直した。めんどくさいんで)
とあり、件のうっすい内容しか無い「神社寺院仏堂合併跡地ノ譲与ニ関スル件」に先んじて「府県社以下神社ノ神饌幣帛料供進ニ関スル件」なる勅令があったことになっとる。
ワシは既に国立公文書館サイトに保管されとる文書原本の画像データを探す方法を十分に心得とるからして、1分もかからず次のような画像を難なく見つけ出すことが出来た。
これじゃ。
収蔵の構成上2枚に分かれる。

著作権は原敬じゃろうか?

それとも当時の官僚じゃろうか?
おっとまたまた原敬が出たな。
内務大臣もやっとったわけじゃな。
これまた頑張って書き写してみよう。
前回に引き続きカタカナはめんどくさいからひらがなにしておくよ。
勅令第九十六號
第一條 府縣は府縣社、郡又は市は郷社、市又は町村は村社の神饌幣帛料を共進することを得
前項に依り神饌幣帛料を共進することを得へき神社は地方長官之を指定する
第二條 全條神饌幣帛料の金額は内務大臣之を定む
第三條 北海道沖繩県其の他市制町村制を施行せさる地方に於ける府縣社郷社村社の神饌幣帛料に關する規定は内務大臣之を定む
附則
本令施行の期日は内部大臣之を定む
この勅令の中で触れられておる神饌幣帛料という単語は時として神社の沿革などに記載されておる事があって言葉としては知っとるが、詳しいことは全く知らんかった。
まあなんか、立派な神社だけがお上から公式に貰えるカネなんじゃろうという程度に想像しとった。
じゃから調べてみたが、やはり概ねワシの想像どおりで、村社以上の社格を持った神社に対し都道府県から支給される運営補助金のようなもんで、その支給基準を定めておるのが上に引用した勅令第96号というわけじゃ。
これは文章的にも大変わかりやすい。
句点(。)は無いものの読点(、)が比較的適切に打たれておるため理解しやすい。
要するに、
村社以上の社格を持つ神社に対しては、内務大臣が決めたお金を貰えます、と。
で、貰えるかどうかについては今で云う首長(知事)が決めるんだよ、と。
北海道とか沖縄とかにある市町村制度をバシッと施行されとらん場所については、首長の代わりに内務大臣が支給対象神社を決めてあげるよ。と。
まあこういうことじゃろう。
この勅令の内容そのものは非常によく分かる。

しかしやっぱりわからん。
前回の勅令第220号と今回の勅令第96号により神社整理が全国的に進められたと、早稲田の北浦康孝先生による学術論文には書いてある。
何となく薄ぼんやりとわかるのは、当時の政府が神社合併に誘導していることじゃ。
運営補助金が貰える神社の社格を高めに設定するとか、合併された神社の官有地(国有地)は一部を除いて合併先の神社に無償提供するとかってのはそういうことだと思う。
でも何で抑、神社を集約していく必要があったのかがわからん。
まあワシは今も昔もこれからも「理解が遅い」という人物じゃから仕方がないが、兎に角わからん。

0 件のコメント:

コメントを投稿

コメントどうもありがとうございます。
貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。