あと、ナンバー的に云うと「やぎさんが好き!(10)」が飛んどるが、これは磐田市にある「ひと・ほんの庭 にこっと」というとこに居る「きなこ」と「あんこ」に関する話が書ききれておらん為じゃ。
すまんことじゃ。
さて今回は別のやぎさんの話じゃ。
よく通る道の脇でやぎさんたちが放し飼いになっとるという得難い情報を会社の後輩から掴んだのは暫く前じゃった。
「どんな感じかね」
「…えっと、…やぎです」
「うむ、やぎさんかね。それはしろやぎさんかね」
「…。えっと、確か……」
「確か?」
「………、確か…」
「確か??」
「……、多分…、茶色だったような…」
「うむ、茶色なのかね」
「………、えっとそのう、あとですね…」
「あと?!」
「えっとお、…、最近ですね、うーんと、多分こやぎが生まれたみたいですね…」
「な、なんですとおおお!」
「2匹」
「おほほほほほほ!」
スタイリッシュで寡黙で奥ゆかしい彼から得たのは、以上のような情報じゃ。
ワシは早速会社で使っとるパソコンにGoogle Mapsを開いて、彼に聞きながら大体の位置を確認した。
これだけの情報があれば十分じゃ。
今日早速でかけたよ。
混雑しとる浜松市内を抜け、R1に乗って東に走り千羽ICで降りて菊川市立河城小学校の近くまで行くと、そこが教えられた場所じゃ。
最近各所で見られるソーラーパネルを大量に配置した太陽光発電所がある。
看板を見ると「吉沢第3発電所」とある。
しかし、この発電所を含め、周囲にやぎさん感はあまりない。
この写真は実は後で撮ったものじゃ じゃからよっく見るとほれ、写っとる © ill-health(ruephas)/yt 2019 |
大きなソーラーパネルを屋根代わりにするような感じで茶色いやぎさんがおるのが見えた。
せせこましいところに建立されとる大山くん参拝により「どんなところでも、他車に迷惑をかけない場所にクルマを迅速に停められる」という技は身につけとる。
近くにさっさとクルマを停めてやぎさんのとこに行った。
ワシを見かけて警戒したのか、すげえコワモテ感あって、篦棒にデカくて立派な角をはやしとって、篦棒に濃くて立派なヒゲを生やしとる篦棒に怖そうなやぎさん(やぎさんというよりは寧ろ「やぎ氏」「やぎのおっさん」が似合う)がワシの前にぐいと出張ってきた。
流石のワシでも最初はちいと怖かったヨ © ill-health(ruephas) 2019 |
セミプロとしての誇りを胸に、道端に生えとった草を千切ってやぎ氏に差し出すと、
「がんっ!」
っっとおお、きたなあ。
猪木のラリアット並みの頭突きが来たよ。
誇りは秒殺、粉砕された。
いきなり頭突きがきたよ。
しかしその後は素直にしゃくしゃく葉っぱを食べてくれた。
だが、何も持っとらん手を差し出すと速攻で。
「がんっ!」
じゃ。
面構え通りの凶暴なやつらしい。
やぎ氏の後ろにはおちちが張っとるおかあさんやぎさんと思われるのがウロウロしとる。
おかあさんやぎさん ほんとはもっとかわいいんじゃよう 写真がへたなんじゃよう © ill-health(ruephas) 2019 |
これが寡黙な部下が云っとった最近生まれたこやぎさんじゃろう。
ただ寡黙に口をもぐもぐしとるんじゃけど、こやぎさんの割にきりっとした顔をしとる。
かわいいんじゃけど、キリッとしとるな。
コワモテのやぎ氏には悪いことじゃが、ちっちゃくてかわいい子ヤギさんのほうがいいに決まっとる。
屋根の下におるこやぎさんを一所懸命に呼ばわってみるが、ただただ口をもぐもぐして反芻しとるのみ(やぎさんはウシ科じゃから反芻するんじゃヨ)。
頑として出てこん。
一方やぎ氏とおかあさんやぎさんは警戒しつつも「こいつどうもワシらにえさをくれそうな感じじゃ」ということを悟ったらしく、取り敢えず近づいてきてはくれた。
草を千切っては差し出すと、案外素直にシャクシャク食べてくれる。
差し出す、シャクシャク。
差し出す、シャクシャク。
これを続けとると、おっとおこれは!
いつの間にかこやぎさんたちもこっちに出てきてくれたヨ。
ほーれ きりっとしとってかわいいじゃろう © ill-health(ruephas) 2019 |
ひゃあ!こりゃあいいなあ。
全部で4匹。
恐らく一家じゃろうなあ。
好都合なことに、道端には結構な量の草が生えとる。
ひゃあひゃあ云いながら千切っては食べさせ、千切っては食べさせを続けとると、シルバーの軽トラがハザードをピカリピカリと光らせながら近づいてきて、ワシの後ろにピタリと停まった。
これはいかん。
このやぎさんたちの飼い主と云うか、この発電所のオーナーと云うか、そういった類の人物の可能性がある。
やぎさんに紙を食わせてはイカンというのはもう既に国民遍く浸透しとる。
草ならば問題ないと思うとる人も多いし、実際ほとんど問題ないのじゃが、中には草をやってはならんというやぎさんがおるのも事実。
草をあげとるワシは、この軽トラの人に咎められるに違いないじゃろうと思ったんじゃ。
軽トラから降りてきたのは一人のおっちゃんで、軽トラの荷台には大量のブロッコリーやレタス、あるいはネギなどが無造作に積まれておる。
それを見た4匹のやぎさんたちがしきりにおっちゃんの方と言うか、軽トラの荷台の方に見を乗り出しとる。
降りてきたおっちゃんはワシを咎めることもなく、
「コイツらに餌をやりに来たんじゃ」
と云って、ブロッコリーをじゃんじゃんやぎさんたちに放り投げとる。
4匹とももぐもぐシャクシャクして盛んに食っとる。
投げ入れとるブロッコリーはわしの眼で見た限りでは極めて新鮮というか、ヘタレは全く見られん。
「おい、もしあれだったら、これもっていかんか。全然新鮮で全然食える。もういらんから大抵捨てるかコイツらの餌にしとるが、美味しいよ」
と、日曜19時から始まる某番組に出とる有名なギャグバンドの人が聞いたら大喜びしそうなことを仰る。
ワシはその辺素直じゃから、
「へいもう喜んでいただきますどうも」
と云いながら、新鮮で本当にみずみずしいレタスと太めのネギを貰った。
やぎさんの餌とするための野菜を人が貰い受けるという極めて稀有な体験をさせてもらった。
「こいつ、おっきいのは太郎って言う名前で、顔は怖いけど結構やさしいんだよ」
「柔らかい葉よりは、ブロッコリーの芯というか茎とか、硬いのが好きでなあ。あまり硬いのが好きすぎて歯が半分なくなっちゃってなあ」
「お母さんやぎはめいちゃんって名前なんだ」
「こやぎの名前はまだつけとらん」
「ここには4匹おるけど、上の方にはあと10匹位おってなあ、嫁さんなんかはもう可愛すぎてって云っとる」
くう、その10匹というのも見てみたいじゃあ。
おっちゃんはこんな感じで暫くワシと話をしつつ餌やりをしとったが「もうワシの腹も空いたからいくわ」といって走り去っていった。
いいおっちゃんでほんとに良かったあ。
もう暫くやぎさんたちに餌を上げてから、それこそワシ自身も空腹になったためもうそろそろ立ち去ることにし、
「へえいみんな。太郎君にめいちゃん、こやぎさんたちよう。バイバイじゃあ」
と声を掛けてクルマの方に戻っていくと、なんと、べええ〜っと啼きながらあとからみんなついてくるんじゃよう。
もうこんなんでは帰れんではないか。
最初こそ太郎くんに警戒されて強力な頭突きをカマされたが、最後の方は頭をなでても文句を言わんようになったし、1時間位の間にワシをやぎさんたちはずいぶん仲良くなれたなあ。
しかしやはり帰らねばならんので、最後に写真を撮ってからサヨナラしたよ。
ほらあ、わろとる太郎くんじゃヨ © ill-health(ruephas)/yt 2019 |
ちいと見づらくてすまんが、これが太郎君一家 かわいいのう、全く © ill-health(ruephas) 2019 |
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コメントどうもありがとうございます。
貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。