2019年3月17日日曜日

翠明(2)

湯谷温泉の「湯めぐり温泉葉書」があと1回分となったので、本日は翠明(愛知県新城市能登瀬上谷平6-2:0536-32-1551:公式Websiteはなく、湯谷温泉発展会のSite内での紹介のみ)に行ってみた。
ここには2012年以前に1回と2012年6月に1回行っていて、記録はしてないんじゃけどあともう1回は来とる。
何故かすべて貸切露天風呂のみで、一般の浴室には入ったことがない。
貸切露天風呂もなかなかいいもんじゃけどそれだけでは片手落ちと云うか王道から外れとるというかそんな感じもするんで、本日は一般の浴室。

宿の前に数台分ある駐車スペースにクルマを入れて玄関に入ろうとすると「自動ドア故障中」とハリガミがしてある。
うむ構わぬ。
ならば手で押し開けるだけの話じゃ。
左右にぐいと押し開けると、すぐに奥から若い女性が来て「いらっしゃいませ」と挨拶してくれた。
クルマが入ってくるところを見ておったらしい。
あと1回分残った湯めぐり温泉葉書を見せて、
「これでお風呂に入りたいんですけど大丈夫ですか」
と訊ねるとその女性は、
「はいはい、どうぞお入りください。いま一箇所は貸し切りにしてますのでもう一箇所の方をご案内します。お客様にご利用いただく方も貸し切りにいたしますので、時間を気にせずごゆっくりお入りください」
おっと、案外厚遇な感じじゃ。
「今、湯加減を見てまいりますので、そちらのロビーで少しお待ち下さい」
暫く待っとると、
「おまたせしました。大丈夫ですのでご案内します」
と、まくりあげたズボンの裾を元に戻しながら声を掛けてくれた。
本当に浴室内まで入ってきちんと湯加減を見てくれたらしい。
女性についていきながら、
「以前何回か貸切露天風呂に入ったことあるんですけど、今もやってるんですか」
「はい。ただ『湯めぐり温泉葉書』の期間はお断りしているのと、あと浴槽が少し傷んでいて、その関係でお断りすることもあります」
ここの貸切露天風呂はちいと高いけどなかなかいい風情、いい眺めで料金なりの満足感があるので、是非続けてほしいものじゃと思う。
浴室には「女湯」の暖簾がかかっとったがこれは公認された入場である故、迷わず脱衣室に入った。
まああれじゃな、正直に申し上げると、湯谷温泉の他の旅館に比べて設備のヘタリが進んどるように思う。
脱衣室に2つある洗面台の一つは「故障中」のハリガミがあり、浴室への入り口扉には「シャワーの温度低下時は、一度止めて再度のご利用をお願い致します」と書かれたハリガミ。
うむ、別に構わんけどね。
浴室に入ると、浴槽はきっちりしたスクエアで、中には湯谷温泉特有の茶色と云うか薄緑と云うか黄土色と云うか、そんな色のお湯が縁まで満たされておる。
じゃばじゃばかけ湯をして、結構大きなその浴槽に身を沈めた。
ふう、気持ちがいいなあ。
広い浴槽にはワシしかおらんし、誰かが出し抜けに入ってくることもないし、全身脱力して暫くじっとしておった。
川の方にある窓は結構広いものの、開くことは出来ん。
あと、雑木林に遮られて川が見えんのがなんとも残念じゃなあ。
ワシは暑がりじゃから、普通の人が「これちょっとぬるいなあ」と感じるような温泉であっても、5分もすれば汗がじゃんじゃん出てくる。
そんな時でも露天風呂があれば一旦外に出て火照った体を冷ましてまたお風呂に入るという繰り返しが出来るんじゃが、ここではそれもままならん。
いつもどおり汗がじゃんじゃん出てきたもんじゃから、これは何とかならんもんかと勘考しておったら、1ヶ所だけ小さな窓が開くことを発見。
早速それを全開にすると外から冷たい空気が流れ込んできて誠に気持ちが良かった。
これで暫くは大丈夫ということで、温泉を堪能した次第じゃ。

最初にもちいと書いたが、全体的に設備のヘタリ感が目立つ。
目立つが、なんていうんじゃろ、これはこれでアリというか、昭和感が漂っていると云うか、いい意味でつげ義春っぽいと云うか、そんな感じでワシ的には結構いい感じじゃった。
あと一つ感心したのは、ここはもちろん源泉掛け流しで、浴槽の端っこにある湯口から温泉がちょろちょろ注ぎ込まれておる。
それ以外に、浴槽底端っこの入浴の邪魔にならんところに、フレキのパイプが密かに回されとって、そのパイプからもどうやら温泉が出ているようじゃった。
上から源泉が注がれて、縁からその分お湯が溢れとるのを見るのはいい気分じゃけど、お湯というものは熱い部分が上に溜まる。
上ばっかり熱くて下の方はぬるいということがままあるが、ここのような仕組みであれば浴槽のどの深さであっても温度が同じということになる。
なかなか考えたものじゃと思った。
しかしまあ、中に入ってちょいと動けば全体的にお湯は混じってしまうので結局は同じなんじゃろうけど、何となく好ましく感じた次第じゃ。

お風呂を出て玄関に戻ると、件の女性が出てきて、
「えっと、脱衣室寒くなかったですか?置いてあった石油ストーブに火を入れようと思ったんですけど、私やり方わかんなくて、スミマセンでした」
どうやらこの女性は本日ピンチヒッターでの勤務のようじゃった。
「いやいや、わたし暑がりなんで、全然平気でしたよ」
「スミマセンでした。ぜひまたお越しください」
はい、ぜひまた来ますとも。


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