ここはちょっと凄いぞ。
塩之沢温泉(山梨県南巨摩郡身延町帯金2786:0556-62-1108:¥500:原則無休)。
誰もが思いつく山梨県南部の有名温泉と云えば下部温泉辺りだと思いますが、私は温泉好きの割には何故か余り行く気になれない。
食わず嫌いなんですが、日帰り専門施設がひとつしかなく、従ってのみ可な温泉旅館を狙うしかないのですが、どこもかしこも高級そうでかしこまり感が拭えないというのが理由。
まあ行ってしまえばそんなことは無い事が多いんですが、何故か今はちょっとやめときましょうと思ってます。
しかし、近隣の町でも幾つか温泉があり、その中でもJR身延線塩之沢駅からすぐ近くにある塩之沢温泉が前から気になってました。
その温泉は本当にそのあたりにぽつんと一つだけ存在している温泉で、近隣には類似の温泉施設は全くありません。
地図を見ると住宅街の中にあるようで、周りは温泉街特有の歓楽街とかでは全くないです。
そういう温泉って余り知らないし、というか、ホントにあるんか?逢ったとしてももう潰れてんじゃないの的な興味があるわけです。
じゃあ行ってみようと思い、しかし無駄足に成るのも嫌なんで先ず電話してみました。
何コールかの後におばちゃんっぽい人が出ましたので「日帰り温泉今日はやってますか」と訊ねると何かめんどくさそーな声で「え、やってますよ」との返答。
恐らく個人営業なんでしょうが、田舎(失礼)のこの手の施設では予約とか営業確認のために電話した時ぶっきらぼうであっても、実際行ってみるとめちゃくちゃ愛想がいいというケースが殆どなんで、ここもそうでありますようにと念じつつ車を走らせること1時間、到着であります。
カーナビの指し示す場所は事前に地図で調べた通りの場所であり、しかしそこに建っているのはたいそう立派ではあるけれど、要するに普通のお宅であります。
店舗感とか温泉感は全くありません。
フツーのお宅、ホントに。
想像通り周囲もお宅だけ、ホントに。
観光要素な~んもなし、ホントに。
でもよく見ると、お手製の看板が余り目立たないとこにあって、そこには「塩之沢温泉はここですよ」というような事が書いてある。
更に屋根の湯気抜きには「塩之沢温泉」と、まあ「大書」と云っても差支ない程度に書いてはあるけど、それも何故か余り目立たない。
玄関も普通のお宅の普通の引き戸。
呼び鈴を鳴らすと電話で対応してくれた人らしいおばあちゃんが奥から出てきました。
足の具合があまり良くないらしく、歩くのが少し不自由そうな感じです。
早速、
「さっきの電話のものですが、スミマセンお風呂に入りに来ました」
とお願いすると、予想通り大変愛想のよい感じで、
「はいはい。お風呂は奥ですよ、あっちね」
と案内してくれます。
「ええっとお金はどうすれば」
「いやそれは後でいいよ。先ずお風呂に入ってくださいねえ」
「いやどうもスミマセン」
おばあちゃんが先導してくれましたが、どう見ても本当に普通のお宅です。
広い玄関、広いお座敷、台所、縁側…
田舎によくある立派な個人宅です。
お座敷には今は懐かしきレーザーディスクのカラオケがありましたが、これも田舎のお屋敷では別によくある風景です。
ただ違うのは、玄関に「温泉分析表」が掲示されていたことです。
個人宅なのかどうなのかわからんけど、多分個人宅なんだろうけど、今から案内してくれるのは間違いなく温泉のようです。
奥に進むと浴室にたどり着きました。
脱衣所と浴室を隔てる引き戸は開けてあっていきなり浴室が見えました。
流石に普通のお宅の浴室よりはデカかったですが、でもそれ以外は普通のお宅の普通の浴室です。
ポリバスです、デカいポリバス。
通常サイズの3〜4倍はあると思います。
最大5人、ベスト2人という感じ。
あとは、温泉を循環させるシステムのコントローラのようなものもあります。
「2つ蛇口があって熱いのと冷たいのが出るから、お好みの温度に調整してくださいね」
「あと、こっちのタオル、自由に使ってもらっていいから」
ということでお風呂に入りました。
僅かに温泉成分のような香りがあり、同様にほんの僅かですが色合いを感じることが出来ます。
温度的は40℃前後に調整されていますので熱くなく、ぬるくなくといったところですか。
おばあちゃんのお言葉に甘えて蛇口から熱い温泉を投入して、わずかながらではあるけれど、擬似源泉掛け流し状態を作ってどっぷりお湯に浸かりました。
普通のお宅の浴室故、当然露天もないし浴槽に使った状態では眺望もない。
ただ立ち上がって大きな窓から外を眺めれば向かいの山の緑が誠に美しく、青く抜けるような空も眺められます。
ただその状態ですと窓の縁からバストアップ状態ですので、向かいのお家から見えちゃいます。
女性は気をつけましょう。
ぬるいお湯なのですが泉質によるものでしょう、10分も入っていると流汗淋漓状態になってきます。
一旦洗い場に出て、窓から僅かに流れこむ風で体を冷やし再度入浴というのを数回繰り返しました。
いやほんと、いい温泉です。
結構気に入ってしまった。
名残惜しかったんですがお風呂から出て、汗が引くまで脱衣所で暫く休み、何とか服を着られる状態になったので着衣して外に出てきましたらば、おばちゃんがよく冷えたお茶と身延饅頭(この辺の名物だそうで、いくつかの店で出しているそうなんですが、出してくれたのが一番旨いとの事)をごちそうしてくれました。
うわあ、嬉しい。
こんな饗しは初めてで感動した。
甘いモノがキライな私でも平気で味わえる控えめな甘さ。
塩がいい感じで効いていて、ねっとり感はなくてさっぱり旨い甘さに仕上がっています。
そして冷たいお茶を一気飲みして落ち着きました。
聞けば、このお宅は実は現役の旅館なんだそうで、確かに旅館業の許可証もありました。
成る程、お座敷のレーザーカラオケは趣味じゃなくて営業用だったわけだ。
「昔はたくさんお客を取ったんだけど、いまはこんな感じで足も悪いし精々2〜3人がいいとこ」
「今日も今からお客さんが来るんですよ」
「旅館と言っても、お出しするご飯はうちの家族のものと同じだし、だからここに泊まる人はうちの家族みたいなもんですよ」
「お風呂はね、24時間風呂にしてるからまあいつでもはいれるんですけど、お泊り客が居る時間帯はダメなので、電話貰ってからきてくれた方が確実ですよ」
うむ、いかん。
相当気に入ってしまったそ、ここ。
独りでふらっと来てざばっと温泉に浸かって、出たらおばあちゃんと少し世間話して帰る。
いいじゃん。
なかなかいい。
いや、それより泊まっちゃったほうがいいかもですよ、ここ。
心が疲れたらここに泊まりに行こうかな。
ということは、来週いきなり泊まってたりして、ふふ。
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コメントどうもありがとうございます。
貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。