温泉そのものの実力はもう書く必要のないくらいじゃけど、それにも増して80歳を過ぎて意気軒昂すぎる「会長」の言動が面白くて行くのをやめられない。
更に今年はそれに加えて、結構個性がある「会長の娘さん」が登場人物として参戦し、状況が混沌としてきて味わいが増しとる。
毎回目を離すことが出来ん。
定期的に行かんとなんかとんでもないことを仕出かしとりそうで確認する必要がある。
まああと、この時期になると小さいカレンダーを入浴客に配ってくれていて、ワシは毎年それを貰って仕事場やクルマに常備しとる。
かれこれ2011年から貰い続けとるがデザインやサイズは基本不変。
それを今年も貰い受けに行くという目的もある。
ありもしない露天岩風呂イラストを 削除する気は一切なし それでヨシ © ill-health(ruephas) 2018 |
ちなみにこれが2011年末に貰った2012年版 よく見ると微妙にデザインが変化しとる しかし露天岩風呂イラストのみは不変 © ill-health(ruephas) 2011/2018 |
確かに向こうから対向車が来たら道だけで離合は出来んが、案外絶妙な位置にすれ違いスペースが設けられておるから問題はない。
ということで思い切って通ってみればなんていうこともない単なる細い道なんじゃが、これまで一回も対向車に出くわしたことはなかった。
ところが今日はその対向車に出くわした。
青いクルマに乗った若いお嬢さんのように見えたが、すれ違いについては問題なく行えた。
ここに通い始めた当初は客といえばおっさんおばさん以上の年齢のヤツばかりじゃったが、時代は変わってきとるようじゃ。
ということで現地に着き、休憩所に上がり込むと会長曰く「夫婦客が入っとるから暫く待ってくれるか」。
温泉前の狭い駐車場には確かに他府県ナンバーのデカいクルマが停まっとったからそれじゃろう。
待つのは構わぬし、寧ろわざわざ(かどうかはわからんが)遠方から遥々ここまで来たんじゃから、いいお湯を快く堪能してほしいと思う。
待つ間は例により会長と茶飲み話。
娘さんがこの温泉に参戦してから、いろんな掲示(石鹸を使っちゃうと温泉成分に良くないから使用禁止、など)が増えたりとかちょっとづつ変化が見られるんじゃけど、食事方面についても同様に良い方向に変化しとる。
前回及び前々回のどんぐりコーヒーの件もそうじゃし、このブログでは特には書いとらんが新たに干し芋とか作って売っとったり、前から出しとる饂飩とかあさり汁定食などすべてのメニューに「源泉を使用しています」と掲示したり。
筆跡から見るに、娘さんによる作品と思われる © ill-health(ruephas) 2018 |
で、じゃ。
会長は最近さつまいもに凝っておるようで、干し芋販売の他に「源泉で蒸かした蒸し芋」の販売を始めており、ワシも買い求めて一口味わってみたが甘くてなかなか美味いものじゃった。
会長は、
「この蒸し芋を作って何かスイーツが作れんか考えとる。売りたいんじゃ」
はあ?
すいーつ、ですか?
確かにスイーツの素材としては申し分はないように思われる。
「どうじゃろう。例えば鯛焼きの餡に使ってみるとか、さつまいも大福とか。結構斬新じゃろう」
さつまいも餡の鯛焼きは確かに斬新に思えたが、さつまいも大福は以前何かで見た気がした。
調べてみると、やはりcookpadで沢山引っかかった。
「いや、大福はもう大量の素人さんが手がけていてそんな斬新じゃないです」
と云うと、会長は少し悲しそうな眼になった。
その斬新さについては相当の自信があったので満を持して発表したら、若手(ワシのことじゃ)により数秒でそれが斬新ではないとあっさり判定された。
そりゃ悲しいじゃろう、寂しいじゃろう。
悪いことをしてしもうた。
「そうか。ならば他にないかなあ」
「うーん、そうですねえー」
「うーん」
「うーん」
2人してなんでこんなにウンウン悩んどるかと云うと、要するに温泉で出すとなると、
・すぐ簡単に作れる
・あるいは作りおきができる
・日持ちがする
・それこそ少し「斬新」さがある
・見た目が良くて若干の高級感がある
などの条件が必要じゃろう。
そんなスイーツはなかなか思いつかんのでウンウン悩んどるわけじゃ。
「どうじゃ、あんた。少し考えてきてくれんか。思いついたら教えてくれ」
うーむ、考えるに関しては全く吝かではないし全然構わんのじゃけど、最近どうもワシは「倉真赤石温泉の中の人」化が激しくなってきとることがどうも気になる。
しかし面白いから別に良い。
酒飲みながら時間をかけて考えるとしよう。
更に会長は、
「ちょっとこれを毒味をしてくれんか」
といって、たくわんとセロリの醤油漬けがのったお皿を指さした。
間抜けなことに写真を撮り忘れたのじゃが、兎に角その漬物は本当にうまかった。
「これ、いけますね。かなり美味いですよ。うん、美味い。どっちもすげえおいしいです」
「へ、そうかい」
「うん。ご飯ほしいです。この2種類の漬物とお味噌汁とご飯だけで『究極の漬物定食』とか出しても絶対売れます。そうだなー、650円とか700円でどうです?」
と言うと、さっき見せた悲しげな眼差しはあっという間に虚空に消し飛び、代わりに満面の笑みを湛えた会長じゃった。
娘さんも「ほんと?おいしい?良かったー」とやはり嬉しそうじゃった。
ではさて帰ろうと立ち上がりかけると会長が、
「ちょっとこれ、この石も見てくれんか」
といって、机の上に乗せられた石を指さした。
間抜けなことに写真を撮り忘れたのじゃが、兎に角その石を手にとって観察してみた。
「泉源に降りていく坂道に落ちとったんじゃけど、真ん中の辺りにキラキラ輝くつぶつぶがいっぱい見えるじゃろう」
「うん、ありますね。キラキラしてますね」
「このキラキラしとるのは多分『金』だと思うんじゃが、どう思う?」
金、か…
「もし金なら大金持ちじゃよ」
ニヤリと笑った。
「いや、これは多分ですけど、恐らくですけど、雲母か何かで金ではないと思いますよ」
と云うと、会長は再び少し悲しそうな眼になった。
そりゃ悲しいじゃろう、寂しいじゃろう。
悪いことをしてしもうた。
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コメントどうもありがとうございます。
貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。