お店は適度な混み具合(というか空き具合)であり、漏れ聞こえてくる声を聞いてみると初めて来たという人もちらほら居るようじゃ。
目当てのマサオはお店裏側の斜面地で諭吉と一緒に草を食べとったが、ワシを見ると口の動きを止めてワシをじっと見つめゆっくりと近づいてきた。
諭吉も後ろから付いてきた。
「やあマサオ、諭吉。あけましておめでとうじゃよ」
と声をかけると奴らはさらにぐいとワシの方に歩み寄ってきた。
見るとふたりともいつものような紐に繋がれておらず放牧状態じゃ。
マサオはワシに充分に近づいた後にゆっくりと数歩後退った。
これはいかん。
奴は頭突き態勢に入り、ワシはロックオンされたようじゃ。
何時もならば何の心配もないが今日ばかりは違う。
放牧されたマサオは恐らく可成り厄介な存在じゃろう。
ワシは正面からかち合う事を避けて上手いことお店の前の方に移動した。
にこやかにと云うか得意げな顔して 庭を闊歩するマサオ © ill-health(ruephas) 2020 |
「マサオたちのエサが無くなっちゃたから今日は放し飼いしてるんですよ」
とのこと。
マサオは依然として庭内をウロウロしており、たまさかにはワシの方を見て遊んで欲しそうにしとる。
再度ワシは対ニワトリ用防御音声を抜かりなく発しながら、マサオたちが好きな柚子の実を採りに横手の柚子の木の方にそろそろと移動し、実をもぎ取ろうとしたがこれはいかん。
柚子の実は既にマサオたちに食い尽くされており殆ど見当たらん。
ううむこれはどうしようと悩んで立ち尽くしてふと後ろを見ると、物欲しげな顔をしたマサオと諭吉がワシの方ににじり寄ってきておった。
おかしい。
さっきまで上の庭におったのに、音もなくワシに付いてきておったようじゃ。
にじり寄るだけでなく「おいおっさん、早く柚子を寄越しやがれ」というような表情をしてこっちを見とる。
で、結果としてはマサオは辛抱たまらずワシに向かって躍り上がって頭突きをしてきた。
結構遠慮会釈ないパワーでワシに攻撃を仕掛けてくる。
まあ何となくこうなることは予想はしとったけれども。
しかしこれはマジで危険なので、ワシは角と首輪を掴んで引っ張ってマサオの家に連れていき、上手いこと中に入れてやろうと思ったがこれがなかなかむつかしい。
彼奴め、可成り力が強くワシの腕力ごときでは全く太刀打ちできん。
一度は収容に成功したんじゃが、小屋の扉の鍵をかける前にマサオは素早く逆側の扉を小器用に押し開けて小屋から躍り出てきた。
その後ワシとマサオは路上で押したり引いたりおしくらまんじゅう状態をしておったら、ワシの窮状を見かねた店のお姉さんが飛んできて、
「これ、マサオもうあんたは」
と叱りつけていとも簡単に小屋に押し込めてしもうた。
流石に飼い主。
マサオの扱いにかけてはワシより遥かに手慣れとる。
アタリマエか。
自由を奪われ幽閉の身となった2人 手前の諭吉は明らかに不満そうな表情 一方奥のマサオは何故かニヤついとる © ill-health(ruephas) 2020 |
マサオは先程の力強い感じから一転してしおらしい表情を浮かべてワシの手を物欲しそうに見とる。
まっこと現金なヤツじゃなあ。
しかしワシとマサオ諭吉は仲良しこよしじゃ。
ワシは惜しみなく柚子とみかんの葉っぱを分け与えた。
マサオと諭吉は満足そうにばりぼりばりぼり食べ始めた。
ワシもそれを見て矢張り嬉しく思った。
その後ワシは店に行って美味しいコーヒーを飲み、ニューカマーの梅太郎くんや猫たちと遊んでから帰ることにした。
帰りしな店のお姉さんに、
「これ美味しいから持って帰ってください。みずみずしくて甘酸っぱくて美味しいですから」
と云われてこれを渡された。
典型的な葉っぱ付きみかん 夏みかんくらいの大きさ via Instagram |
家に持って帰って、デザート代わりに食べることにしよう。
楽しみじゃ。
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コメントどうもありがとうございます。
貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。