2021年5月1日土曜日

温泉に行かない日(483) 和泉宏隆さんが亡くなった

ワシは遥か昔の大学時代、とあるアマチュアロックバンドに所属しておって、主にはドラムスを担当しておった。
オリジナル曲をやるバンドであり、当時まだ何とかアマチュアミュージシャンの登竜門として機能しておったYAMAHAのポピュラーソングコンテストに応募し、中部北陸大会の手前まで進出したこともある(が当然敗退)。
バンドを結成した当初はベースがおらんかったため1年程はロックとは程遠い楽曲、具体的にはボーカルがたまたま吹けたフルートをフューチャーした曲とかをやっており、その時期にワシはKORGのキーボードを買って弾いて、ベース代わりののような事をしたりしておった。
同時期、保育士(当時男性保育者は「保母の資格を持つ男子」とか云う変な名前で呼ばれとったな)の資格を取ろうと思っていて(めぞん一刻に出てくる五代裕作の影響と思われる)、バイエルの2ケタ台程度であればよたよたしながらも何とか弾けるようにはなっておったが、ベースが加入して後は当然キーボードを担当することは一回もなかった。
従ってワシの音楽的経歴は主にドラムを叩くことであり、同じ打楽器であるピアノを自由に弾けるやつとか、ギターを弾けるやつを羨望の目で眺めておった。

で、当時はそのロックバンドと並行して主に高中正義をカバーするフュージョンバンドのお手伝いもしており、その影響で高中以外の国産フュージョンを聴き始めておって、その一つがT-SQUAREじゃった。
T-SQUAREといえば、F1グランプリのテーマ曲として有名な「TRUTH」を誰しも思い浮かべるじゃろうし勿論ワシもその曲は好きじゃが、その時代よりもバンド名がまだTHE SQUAREだった1980年代中盤の時期が好きじゃ。
当時のメンバーは、
  • 安藤正容(あんどう まさひろ:ギター)
  • 伊東たけし(いとう たけし:サックス・リリコン)
  • 長谷部徹(はせべ とおる:ドラムス)
  • 田中豊雪(たなか とよゆき:ベース)
  • 和泉宏隆(いずみ ひろたか:ピアノ・キーボード)
という面々で、ワシはドラムじゃったから当然楽曲も長谷部徹が叩くドラム中心に聴くんじゃけれど、この人のドラムは表現が難しいんじゃが何じゃろ、ワシレベルのアマチュアでもめちゃくちゃ頑張ったら何とかコピー出来るような雰囲気があり、しかし実際にやってみると当然でけん(ワシが出来とりゃ今頃音楽で食っておる)と云う、シンプルに聞こえるのにむつかしいという不思議な感じのドラミングじゃ。
THE SQUAREと同系のバンドとしては矢張り有名なカシオペアがあるが、こっちは兎に角どのパートも超絶テクニックを全面に打ち出した感じで、難しすぎてコピーする気もなくすと云うかそもそもどうやって弾いているか想像だに出来ないという感じじゃった。
そういった意味で、ワシらアマチュアにとってはとっつきやすいと云うか親しみが持てるのがTHE SQUARE(T-SQUARE)というバンドじゃと思う。

で、ワシのベストアルバムは「Stars and the Moon」(1984年)。
中でも「CRY FOR THE MOON」(「ないものねだり」という意味)と「遠雷」というサックスとピアノを前面に出した短調のバラードっぽい曲が未だに何回聞いてもいいと思う。
何れもキーボードの和泉宏隆さんが書いた曲で、メロディアスな中にもパーカッシブなフレーズが交じるピアノの主旋律が本当に素晴らしい。
主旋律をやっていないときのピアノのリフ(いや、あれはリフではないな。ああいうのはどう表現するんじゃろう)も単にコードを叩いているだけでなく、伊東たけしのサックスに絡み合うような矢張りメロディアスなもので、時折交じる不協和音も相まって曲想に深みを与えておる気がする。
絶対に無理ながらこの人のようにピアノが弾けたら素晴らしいじゃろうなあ(出来るわけない。出来とりゃ今頃音楽で食っておる)と思う。

その和泉宏隆さんがつい先日の2021年4月26日にお亡くなりになったという悲報に昨日触れた。
まだ62歳であり、これまでのキャリアを踏まえて今から更に和泉さんの世界が広がっていくという時期なのに、大変に残念なことじゃ。
なんとも言葉が出てこん。
この訃報は友人から伝えられて大変に驚いたし悲しかったんじゃが、その友人が、
「でも音楽は残るから」
と云った。
その通り。
誠にその通り。
亡くなったのは本当に無念なことじゃけども、音楽は残り、和泉さんのピアノはこれからも聴ける。

ご冥福をお祈りいたします。

写真は和泉宏隆さん公式サイトである、
https://mistyfountain.com/
より転載いたしました

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コメントどうもありがとうございます。
貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。