2024年9月21日土曜日

やぎさんが好き!(70) 奈良県川西町某所の茶やぎさん

Clarkのマサオが亡くなったという報に触れてから、仕事含めて色んなことへの意欲がかなり減衰してしまっていたんじゃが、あれからマサオとのことについては良い思い出として自分なりに心の整理をしようと努めてきた。
何にでも寿命があるものじゃし、もちろんワシだってそうじゃ。
何時かは死んで天国か地獄に行かねばならん。
そもそもこのブログを書き始めたきっかけもそのへんにあった。
いい意味でマサオに引きずられるのは良いんじゃけど、悪い意味でいつまでも引きずられとるのは良くない。
気分をなんとか切り替えて、奈良でも仲の良いやぎさんを見つけなきゃと思うようにはなってきた。
ワシはやぎさんを見に行くことにした。

2024年8月12日、アパートの室内温度30.2℃、クルマで見た室外温度34℃という酷暑の中、ワシは奈良市の南に位置する川西町というところに行ってきた。


この町にやぎさん広場があるとの噂を聞きつけたからじゃ。
このやぎさん広場については川西町の近くに住む人からかなり詳細な場所も聞いたんじゃけど、ここではその内容を明かすことは出来ん。
なぜならそのやぎさん広場は完全な私有地と思われ、カフェなどの店舗を併設しとるわけでもない。
ちなみにGoogle Mapsにも載っとらん。
ホントにやぎさんが住んどる広場があるだけで、訪れたときもその広場の主がいらっしゃったわけではない。
このブログは開設して13年位になるがトータルの閲覧数が34万くらい。
言いたかないが要するに非常に少ないわけで、しかし如何にこのように閲覧数が極小とはいえ公表を目的としとるわけじゃから、弱っちいなりにも「社会の公器」の末席を汚しておるとも言える。
そのようなことじゃから、牧場主とお会いし了解が得られるまでは私有地であるこの場所の詳細は明かせんと言うわけじゃ。
川西町内某所ということまでにしておこう。

アパートからクルマで約30分。
件のやぎさん広場を一旦通り過ぎてから、すぐ近くにある公園の無料駐車場にクルマを停めた。
通り過ぎた際にちらと広場を見やったんじゃが、やぎさんの姿は目視では確認できんかった。
もしかして近隣のどっかに除草とかの勤労奉仕に出かけとるかなあと思ったが、見たのは一瞬で隅から隅まで見たわけではない。
いるかいないかは当然ながらその場所に行ってちゃんと見てみないとわからない。

ワシは黒いスヌーピーの日傘を差し、歩いて広場の方に歩いていった。
遠目に見ると、なんかくろやぎさんっぽい姿が見えるような気もする。
広場に向かっていると思われる軽トラ通行くらいはできそうな細い道を歩いて、広場の入口に達した。
誰もいないし、やぎさんも見えない。
「見つかったら怒られるだろうなあ」とビビりながら私有地と思われる広場方面に進入する。
いや、侵入が正しい用語じゃ。
広場の出入り口に近づくと、あ!遠くではあるがくろやぎさんと茶やぎさんが暑い中、へたり込んでいるのが見えた。
いたぞいたぞ!
しかし遠い。
しかも奴らは暑さのせいか、ワシが如何に熱心に手招きをしても、へたり込んだ場所から頑として動こうとしない。
遠いから写真も撮れない。
ううむ、くそお。
と思ってくろやぎさんと茶やぎさんに向かってしつこく手招きを継続していたら、ワシのすぐ足元で「がさっ」という音がして、ちょっとビビって確認したらいやあ!
2匹の茶やぎさんがすぐ足元に隠れとった。

奥におるやつはニヤリとしとるな
© ill-health(ruephas) 2024

もう全く気づかんかったなあ。
どっちも大人しく座っとって気配がなかったんじゃ。
自分で言うのもなんじゃが、ワシにはいわば「やぎさんセンサー」が備わっとって、どう考えてもやぎさんそっちにはおらんじゃろうという方面が何となくクサいと思い、一応行ってみるとやぎさんがいました、ってことが結構あるんじゃけどこのときはやぎさんセンサーは全く反応しなかったなあ。
いやあ、しかしこいつらクソかわいいぞ。
生まれてまだ数ヶ月という感じじゃ。
やぎさん広場オーナーの育て方なのか、はたまたこやつらの元来の性格なのかわからんが、人に対してビビってる感は全然なく、ワシが手を差し出すと近づいてきて指をはむはむしてくれた。
同好の士にはわかるじゃろうけど、こやぎさんのはむはむはたいへんに気持ちがよい。
この前にはむはむされたのはいつだったかなあ、浜松の太陽光発電所やぎさんかなあ。
茶やぎさんはひとしきりワシの手をはむはむしておったがそのうち多分、
「このおっさん、害はなさそうだけど流石に知らんおっさんの手をいつまでもはむはむするのはアレかな」
と思ったみたいで、奥におるたぶん親やぎさんである茶やぎさんとくろやぎさんの方にゆっくり歩み寄っていった。

© ill-health(ruephas) 2024

広場についてからここまでだいたいそうだなあ、5分は経ってない。
なんせ誰の許可も得ず勝手に侵入してたわけじゃから、誰かに通報されても全くおかしくない。
名残惜しいがワシはさっさと撤退することに決めた。

実は、このやぎさん広場のオーナーが「多分あの人じゃろう」というのをワシは知っとる。
書けないけど。
この方と連絡取ろうと思ったらなんとかなりそうな気もするので、取れたら是非公式に訪問したいものじゃ。

そうそう、こんな暑い日には塩分摂取が大事じゃよ
© ill-health(ruephas) 2024


2024年9月20日金曜日

やぎさんが好き!(69) Clarkとマサオと諭吉とゆずとワシのこと

2019年2月24日 14時54分
© ill-health(ruephas) 2024

Cafe de Clarkのマサオについて書いてみようと思う。
マサオが亡くなったのは2024年8月2日。
享年7歳。
亡くなった知らせを受けてから、喪に服すため暫くはSNSとかこのブロクとかの活動は控えることにしようと決めてたんだけど、昨日(2024年9月19日)で四十九日が終わって、つまり喪が明けたので書いてもいいかなぁと思う。

ワシはおっさんになるまでやぎさんのことなんか好きでも嫌いでもなく意識になかったんだけど、「やぎさんいいなあ」と初めて感じたのは2017年4月9日の日曜日。
当時は静岡県東部にある富士市というところに単身赴任していて、そのエリアに大量に存在する山神社という大山祇命(個人的には「大山くん」と呼んでいる)を祀った神社探索に熱中していた。
多分その日も朝霧方面の大山くん物件を参拝しに行ったはずで、ついでに寄ったのが富士宮市の朝霧高原にある富士ミルクランド(静岡県富士宮市上井出3690:0544-54-3690:入場無料:11:00〜16:00:駐車場あり)。
飯食おうと思ったのかソフトクリーム食いに行ったのかとんと覚えてないけれど、牧場の中を歩いていたら「つくし」というしろやぎさんが自分の小屋の屋根を闊歩してるのを見たのがやぎさんを意識したきっかけだったと思う。

2017年4月9日 13時14分
天上界から平民の暮らしを莞爾として見つめる体のつくし
© ill-health(ruephas) 2024

かわいい、というよりは「変なヤツだなぁ」という感じの方が強かった。
何せ、ねこさんとか鳥さんとかを除き、自分んちの屋根を歩く大きめの動物を見たのは初めてだったので。
誠に堂々と屋上を闊歩してたなあ。
そのあと敷地内を回ってみたら普通に地表を歩いているやぎさんもいたけれど、ふと小さな小屋の中を覗くと、収穫した作物を入れる青いかごの中にこやぎさんがぎっしりつまっていたりして、こりゃかわいいなあと思った。

2017年4月9日 13時20分
こりゃ反則だろ、おいミルクランドさんよ
© ill-health(ruephas) 2024

今Googleフォトを確認してみたけど、2017年4月9日以前の日付ではやぎさんの写真はないので、少なくともこの日まではやぎさんを被写体として意識していなかったようだ。
この日はワシの生活にはっきりとやぎさんが入り込んできた記念すべき日だ。

次にワシの生活にやぎさんが現れるのは2017年5月13日の土曜日。
ワシは温泉にも関心があって、その日は兎鹿嶋温泉 湯〜らんどパルとよね(愛知県北設楽郡豊根村上黒川長野田20:0536‐85‐1180:¥600:13:00〜19:00:定休木金:ポイントカードあり♪:駐車場あり)に行った。
100%温泉目的であり、頭にはやぎさんなんて1mmもなかった。
さあひとっ風呂浴びるぞと思いクルマを停めて脇を見ると、駐車場の横に大中小3匹のしろやぎさんがいた。
何れも善良そうな顔つきをしている。
おっと、やぎさんじゃんか。
と思い駆け寄ると、3匹のやぎさんはフェンスに足をかけて、フェンスの外に停められていたトヨタ86のトランクに溜まった雨水を狙っているようだ。
それで、やぎさん達の重みでフェンスが今にも倒れそうになっている。

2017年5月13日 15時48分
みんな善良そうなのにやることは力づく
ナイスチームワーク
© ill-health(ruephas) 2024

その惨状を目敏く発見した温泉の係員の人が飛んできて、フェンス倒壊を回避しようと必死の形相で支えている。
その後、やぎさんは係員さんとの力のバランスを上手く取りながら絶妙な角度でフェンスを傾けて、86のトランクに溜まった雨水を3人して美味そうに飲んでたことだけは覚えている。
水なんざそのへんにいくらでもあるのになあ…
やぎさんはヘンなヤツだとの思いを更に強めた時間だった。

そのあとは自分でも何故だか良くわかんないけど兎に角やぎさんが好きになってきていて、地元浜松や浜松近辺でやぎさんと直接触れ合える場所を探していた。
豊橋にある結構有名なMaui(マウイ牧場:愛知県豊橋市大村町黒下21:餌を買えば牧場内に入ってやぎさんと直接触れ合える:兎に角大量のやぎさんがいる)、知久屋桜台本店(静岡県浜松市中央区大山町141:053-486-4788:10:00~20:00)、ブロートリーベン都田店(静岡県浜松市浜名区都田町3522:053-522-9498:9:00~16:00:定休月火)などを訪れてはやぎさんと本格的に戯れていた。
浜松にある大橋牧場(現在は閉業?:静岡県浜松市浜北区堀谷332)という基本はうしさん牧場にも行ってきたなあ。
牧場の入口あたりにやぎさんが飼われており、牧場内の売店で買った餌をあげたりやぎさん散歩が出来たりした素敵な場所だった(ちなみに「ヤギと大悟」が始まったのは2021年)。

そんな中、やぎさんを放牧している古民家カフェが浜松の天竜にあるらしいと聞きつけて、Cafe de Clark(以後「Clark」:静岡県浜松市天竜区谷山45:090-1754-1874:10:00~16:00:営業日は公式Instagramで確認してください)に行ったのが2019年2月3日。
その時に撮ったこれがマサオの最初の写真。

2019年2月3日 11時32分
© ill-health(ruephas) 2024

いやあ、マサオ若いなあ。
その日に撮った別の写真がこれで、非常に気に入っている。

2019年2月3日 11時32分
© ill-health(ruephas) 2024

なんでお気に入りかというと、これはもうニヤリとしてるから。
目が三日月になってて、口角が上がってニヤリとしている。
朝霧高原でやぎさんを見たあと、ワシは色んなところに行ってたくさんのやぎさんと触れ合った中で、
「やぎさんは時としてニヤリとする」
ということに気づいてそれが面白かった。
ワシは今、奈良公園に隣接する場所で仕事してて、もう毎日嫌になるくらい大量のしかさんと会っている。
ワシゃやぎさん学者でも専門家でもないので詳しくないから間違ってたらごめんだけど、しかさんはやぎさんと同じようにいつまでも反芻しているところを見ると、こやつらは胃袋が4つあるやぎさんの仲間だと思うのだが、やぎさんのようにニヤリとするやつは誰もいない。
極論かもしれないけど極私的には「ニヤリ」こそがやぎさん最大の魅力だと思う。
マサオはたいへんハンサムなオスやぎさんで、足が長くて顔がしゅっとしてて、しばしば(多分遊びだと思うけど)頭突きしてくるやや凶暴なやぎさんなんだけど、たまにこのようにニヤリとした表情を見せる時があって、それが結構好きだ。
マサオはクールで無表情なことが多いんだけど、なにかの拍子にこういうニヤリを見せてくれると、なんだか渋い俳優のような感じがするんだよね。

当時Clarkにいたやぎさんはマサオだけで、大抵は建屋の向かい側にある牧場(まきば)のような広場に一人でいて、散歩したりパカラパカラと駆けたり草を食べたり座り込んで反芻したりワシの方を見てニヤリとしたりしてたけど、身近にやぎさん友達がいないせいかやはり時々ちょっと寂しそうにしている。
なのでワシはClarkに行くと必ずマサオと遊ぶようにした。
軽めの遊びとしては、マサオの頭に草花を載せるというあまり意味のないものがある。

2019年10月6日 12時27分
神妙な面構えのまま頭に草花を載せられるマサオ
© ill-health(ruephas) 2024

まあこれはおふざけですね。
歩けばすぐに落ちてしまう線香花火系の遊び。
次に面白かったのはパカラ遊び。
マサオをうまいことこっちにおびき寄せ、横っ飛びの形で走り出すとマサオも興奮しちゃってワシに付いてくるようにパカラパカラと走り出すという遊びだな。
これはお互い非常に体力を消耗するため、遊びの時間が10分程度に限定されるという致命的な欠陥があったのは否めない。
嗚呼、ワシにもう少し体力があれば…
しかしそれらを差し置いて一番面白かったのはやはり頭突きごっこだなあ。
この遊び、説明がちょっと難しいんだけど要するに、マサオの方に小走りで駆け寄っていって直前まで来たら少しぴょんと飛び上がり、掌をマサオに差し出すと、マサオはそれに反応して躍り上がってワシの掌に頭突きをかますという遊び。
その躍り上がりがなかなか良くて、ほら皆さんご存じのあのフェラーリのうまさんマークがあるでしょ。

これ著作権的にやばいのかなあ
楽天市場のCHOPPERS (LOVES FAVORITE)より引用
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あんな感じ。
いや、マサオのはむしろフェラーリ馬より更に力感に溢れた躍り上がりで、
「よおし、このフザけたおっさんに一発カマしてやるぞ」
という気合に満ちた姿。
男と男の真剣勝負という感じのこの頭突きごっこが一番面白かった。
躍り上がる瞬間の写真はないけど動画はあるので一応載せておきます。
この動画はかなり慎ましやかな躍り上がりだけど、マサオが本気出したら誠に躍動感溢れる、高度があって後ろ足で立つ滞空時間が実に長い素晴らしい躍り上がりをやるんだよね。


暫く一人で過ごしていたマサオだけど2019年4月6日の土曜日にClarkに行ったら、木陰に小さなしろやぎさんがおった。

2019年4月6日 14時19分
© ill-health(ruephas) 2024

お、新入りだなと思って名前を訊ねてみたら「諭吉」との事。
もちろん諭吉本人じゃなくてClarkのおねえさんに訊ねたのは言うまでもない。
諭吉はさすがにまだ人慣れしてなくて、ワシは慎重に接近を試みたものの諭吉は力なく首を左右に振りながらゆっくり後じさりしてワシを避けるのであった。
マサオを見ると諭吉を無視するような、しかしどこか先輩風を吹かせているようなそんな様子だったけど、なんだかうれしそうな雰囲気も感じられた。
そりゃそうだろうなあ。
Clarkには何匹かのねこさんはいるものの、やぎさん的には独りぼっちでつまんなかったはずで、でもやっと弟分ができたんで。

2019年5月4日 15時1分
諭吉の名札は1万円札のサイズぴったりで作ってあります
© ill-health(ruephas) 2024

諭吉が大きくなるにつれて、マサオは指導目的なのか先輩ヅラ見せるためなのかわからんけど諭吉を軽く頭突いたり、後ろに従えて周囲の公道を散歩したりして仲良くしとった。
そのうち諭吉も頭突き返すようになったりして、いいコンビだと思う。

2019年6月19日 15時11分
左がマサオ、右が諭吉
© ill-health(ruephas) 2024

2019年6月23日 11時8分
挨拶代わりに軽く頭突き合うマサオと諭吉
© ill-health(ruephas) 2024

マサオは食い物には少し好き嫌いがあって、地面から生えている草は普通に食べるんだけど、人が引きちぎった草をあまり好まない。
でも、手から奪い取るような勢いで食べるくらいな好物がみかんの葉っぱ。
みかんの木からちぎりたてのやつはもちろん、地面に落ちて枯葉になったやつでもおいしそうに食べる。
だからワシはいっつもみかんの葉っぱを見つけてはせっせとマサオにあげていた。
でもそれよりも更に好きなのがみかんの実そのもので、どんなに酸っぱそうな夏みかんでもあげればあげただけ全部食べてしまう。

2019年4月20日 12時0分
黙々と夏みかんを食らって味わうマサオ
© ill-health(ruephas) 2024

際限なくじゃんじゃん食べるのでこれは流石に食べすぎではないかと思い、1回あたり4個を超える数量に達するとClarkのおねえさんにバレないようにして隠れるようにして食べさせるのが常だった。
あまりに酸っぱいからか涎をだらだら流しつつ、口の周りをまっ黄っ黄にして美味そうにむしゃむしゃ食べるんだよなあ。
マサオから伝染したのか、はたまたやぎさんは一般的にそうなのか、みかん好きは諭吉も同様で、体の大きさに準じてあげる量をマサオ6:諭吉4くらいの割合にして喧嘩しないように工夫もしていた。
こんな感じで週末時間があれば、いや時間がなくても時間を作ってClarkに通い、おいしいダムカレーを食べて、マサオや諭吉と遊ばせてもらっていたわけだ。

2020年3月20日 13時29分
おねえさんのレギンスをぱくぱくするいたずら者のマサオ
© ill-health(ruephas) 2024

Clarkという古民家カフェは妙に落ち着くところで、建物や敷地全体の雰囲気ももちろんそうだし、経営するおねえさんのお客との距離感の取り方が上手というかうまい具合に放っておいてくれる感じがとてもありがたい。
実は2020年の6月頃、誰がどう考えたか知らないけれどかなりガチなヘッドハンティングの声がかかったことがある。
毛筆で揮毫されたとても丁寧な手紙が事務所に舞い込んだんだけど、何故このワシに?という感じでびっくりした。
手紙では条件はかなり良いようなことを匂わしていたため、ちょっと色気づいたワシは1日落ち着いて考えてみることにして出かけたのは、やはりClarkだった。
それは2020年6月19日の金曜日だったんだけど、その日は平日でしかも雨だからかClarkにはワシしか客がおらず、いつも以上に静かでゆっくり考え事ができた。
おねえさんもキッチンに引きこもったまま出てこなくて、つまりワシを放っておいてくれていたので、Clarkの広い古民家はすべてワシの貸し切りだった。

2020年6月19日 10時45分
転職に悩んでいる男のものとはとても思えない本の選択
後ろにいるのはラブ犬の梅ちゃん
© ill-health(ruephas) 2024

客がいないからかマサオや諭吉もいつになく穏やかで、雨の中ゆっくり散歩したり雨宿りで庭先にある東屋に逃げ込んでワシの方を眺めてたりしていた。

2020年6月19日 11時29分
は?オマエ何うだうだ悩んでんだよ
好きにやればいいじゃん
なあ諭吉、そうだろ?
うん全くそうだよねマサオ兄さん
© ill-health(ruephas) 2024

マサオコーヒーを飲みながら考え、マサオと諭吉を眺めては考え、お昼にはおいしいパスタを食べてからロッキングチェアで揺られながら少し居眠りしてから考え、夕方近くになって再度マサオと諭吉の顔をぼんやり眺めながら考え、最終的には「まあ、ワシにはとても出来んな。サラリーも今くらいで別にいいし、よしや~めた!」と決めることができた。

2020年6月19日 11時29分
これホントに美味かったなあ
© ill-health(ruephas) 2024


Clarkの雰囲気とマサオ諭吉のおかげだったなあと思う。
その時そのオファーは蹴っ飛ばしたけど、今じゃ別のオファーを受けてあっさり奈良に転職しちゃってるのも人生の摩訶不思議。

2020年6月19日 11時29分
© ill-health(ruephas) 2024

Clarkは一時期レンタルスペースになり、そのかわり春野というところにある古い旅館を改修した別のカフェ、ラヴィリーブル(元は松本屋という由緒ある宿屋:現在はカフェではなく1日1組限定の貸別荘:静岡県浜松市天竜区春野町堀之内983‐2‐2:090-1754-1874)というのをおねえさんは立ち上げて、マサオや諭吉もそこへ引っ越した。
引っ越す前にClarkのおねえさんから「マサオ諭吉はどうやって連れていけばいいですかねえ。クルマに乗っておとなしく行ってくれるかなあ」と相談を受けたものだ。
「いやあ、たぶんあれですよ。やつらがドナドナ出来れば大丈夫っすよ」

ドナドナのイメージ
tinto*tintoのウェブサイトより拝借しています
Copyright © 沖縄北部今帰仁村の宿 沖縄のひとつ宿tinto*tinto
All Rights Reserved.

などと安請け合いしたんだけど、まあとにかくマサオも諭吉も無事引っ越して春野での新しい生活を楽しんどるようだった。
環境でClarkと大きく異なるのは、マサオたちの領地に裏山が入ったことだろう。
かなり急峻な山肌で、今まで平地でのらりくらり過ごしてきたマサオや諭吉にとってはいきなりハードワークが増えたことになる。
その結果、マサオなんかはこのような仕儀に相成る。

2021年4月25日 12時3分
疲れ果て、欲も得も無くへたり込んで眠り込むマサオ
後ろに見えるのが裏山へつながる特製階段
© ill-health(ruephas) 2024

以前Mauiに行ったとき、眠気に逆らえずこのような体勢で地面にべたりと寝込むこやぎさんを見かけたことはあるけど、大人のやぎさんがこのような姿をしてるのは初めて見た。

2019年9月22日 14時11分
ご心配なく 単なる熟睡状態
豊橋のMauiにて
© ill-health(ruephas) 2024

更にラヴィリーブルには、ゆずという小さい茶やぎさんも参戦して何だろ、待望の3人体制になった。

2021年8月21日 11時24分
このときはこの小屋から絶対に出てきてくれなかった
© ill-health(ruephas) 2024

ゆずは初期の諭吉のように人見知りするやぎさんだったけど、そのうちマサオや諭吉と同じくみんなに可愛がられるいいやぎさんになっていったようだ。
マサオや諭吉の薫陶のおかげだろう。

少し時間が経過して経緯は良く知らないけど、一時期レンタルスペースだったClarkがいつの間にか元のカフェに戻り、マサオも諭吉も、そして新入りのゆずもClarkに戻ってきた。

2023年3月12日 11時30分
左から諭吉・ゆず・マサオ
© ill-health(ruephas) 2024

以前のように足繁く通うことはできなくなったけど、それでも時間があればたまさかにはClarkに行ってマサオや諭吉やゆずと触れ合いながらゆったりした時間を過ごすようにしていた。
2022年になると、なんだろうなあClarkのやぎさんたちの中でだんだん順列が変わってきて、時として諭吉がいろんなことでマサオを上回るようになってきた気がする。
出会った頃は、まきばをパカラパカラと駆け回ったり、ワシに頭突したり、諭吉に教育的指導をしていた元気なマサオだけど、このころは小屋の中に引きこもっていたり大好きなみかんを差し出してもわずかに首を振って食べなかったり、諭吉に頭突きをカマされて少し逃げ腰になったりという様子が見られた。
その時はマサオがいつ生まれて今何歳かはわかんなかったんだけど、最近何だか食が細くなったし、少し元気がなくなってきたなあと感じていた。
以前は少し挑発したらすぐさま頭突きで仕返ししてきたんだけど、いまはそういう反応もなく、ただ大人しくしてることが多くなってきて心配だった。

時は過ぎ、ワシは2024年2月に転職して単身奈良に引っ越し、Clarkには全く通えなくなった。
ClarkのInstagramはチェックしていたけど、実際に行けないからそういう意味ではつまんない日々であった。
今年の4月16日、マサオがこの1ヶ月半ほど立てなくなっているという知らせをおねえさんから貰った。
現在リハビリ中で、食欲もあって元気で大丈夫。
もう少ししたら歩き出すから、という知らせをおねえさんから頂いた。
ワシは「ああよかった!前みたいにすぐには行けないけど近いうちに行きます」と返事をして、時間を見つけてClarkにいかなきゃ、って思っていつ行くか考え始めていた。
ちょっと心配だったけど、いつも身近にいる人の印象だからきっとすぐに復活してまたパカラパカラと駆け回ったり、諭吉やゆずやワシに頭突きをカマしてくれるはずだと思っていた。

2023年3月12日 13時14分
最後に撮ったマサオの写真
とても優しい顔してるなあ

で、先月の8月2日。

ClarkのInstagramが更新されていて、そこには、
大好きなマサオが星になりました。
良く頑張って生きてくれた ありがとう

ずっと忘れないよ
と記されていた。
マサオが2歳の時の、足が長くてかっこよくて、耳を立ててこちらを凛々しく見つめる写真が添えられていた。

マサオ。
死んじゃったなあ、マサオ。
でもね、これは是非言っておかなきゃいけない。
天国に行くにあたっては色々不安もあるとは思うが心配無用だよ。
まず天国の大先輩としてワシが小学生の頃に飼ってた犬のチーコがいる。
知り合いが飼っていたバーディーもいる。
それと、実家で飼っとって2017年の1月に亡くなったこれまた犬のカールもいる。
みんないる。
やぎさんじゃなくてみんないぬさんで申し訳ないね。
マサオ的にはアレかもしれないけど、でもね、やつらはみんな揃いも揃って大変にいいやつらなんだよ。
天国に入る時の手続きとかいろいろめんどくせ〜って思ったら先輩たちのアドバイスを受ければいいし、生活が落ち着いてきたら奴らと仲良く過ごすのがいいと思うよ。

逢えてすごく嬉しいよ、マサオ。

2019年2月24日 14時44分
最高にかっこよくて凛々しいマサオ
一番好きな写真