2011年6月12日日曜日

和合の湯(2)

わたくしの年代な人が、そうだなあ大学とかに入った頃って、まだスーパー銭湯とかは世の中に存在してなくて、娯楽的にお風呂に行こうっていうと、有名だけど高い温泉旅館か、町の銭湯に行くしかなかった気がする。
二十歳の頃には温泉や銭湯なんて全く興味がなかった(当時ロック大好き音楽人間であった私は、温泉及び温泉が好きだと公言する人間を寧ろバカにしていた。ロックという基準で温泉を見ると、単なる「じじい」という見方しか出来なかった)が、そんな私にも「温泉」と聞くとある共通な(つまりステレオタイプ的な)イメージがあったし、皆さんもそのはずだ。

どんなイメージかというと、町から少し(というか、だいぶ)離れた所にあって、理想的には山の中。
廻りには生い茂る林。
その木々の間から立ち上る温泉の湯気。
そこを訪れた一人旅の男が、誰もいないその温泉にゆったりと浸かり、柔らかで素晴らしい時間を楽しむ。

みたいな…

或いは辺鄙な漁師町の外れにあって、そこに住む人たちに大事に守られてきた温泉。
夕刻には漁師達やその子供達が楽しげに語らいながらお湯にひたり、さっぱりしてから沖で上がった魚を刺身にして美味しいお酒を楽しんでる。

みたいな…

勿論ご存知の通り、このような温泉は21世紀を10年も過ぎた今じゃ存在しない事は、全国民が知っている事だ。
ふた昔前くらいにはひょっとしてそんな所もあったかもしれないし、そんな所であった温泉も今では集客に血道をあげる観光施設になってしまったのかもしれない。
私たちがイメージする温泉というのは、夢の又夢であって、死ぬまでに実現出来ない幻なんだろうと思う。

と、思いつつ、なんだかんだと言っても「山の上にある静かな温泉」に行きたいと望み、二十歳の頃には存在していなかったWebの世界で、今日もわたくしは行きたい温泉の情報を集めているのであった。

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