もうここには軟便も、
ん??
大丈夫かGoogle日本語入力、
何遍も来てて沢山書いててもう飽きるんじゃないか書くことがないんじゃないかと思ったりするけど、温泉の主(ぬし)たる鈴木会長(本名は知らない)の個性的な性格や行動様式もあって全く飽きることがない。
今日地元では航空自衛隊浜松基地で航空祭をやっておって大変にウルサイため、避難のために倉真赤石温泉に行ってきた。
山林のところどころが段々に秋の表情が見え始めとる。
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会長曰く「来週には山じゅうもっといい色になるよ」 © ill-health(ruephas) 2018 |
ここの泉質の素晴らしさに関してはもうくだくだしいんで省きます。
源泉は炭酸泉で、残念ながら加温のため浴槽では目に見える形での炭酸成分は感じることは出来んのじゃけど、先日行った磐田ななつぼしという人工炭酸泉がウリのスーパー銭湯の壁に書いてあることによれば、目に見えないお湯の中に溶け込んだ成分こそが大事ということなので、この倉真赤石温泉も多分効能あらかたじゃろうと思う。
その代り、夏場になれば屋上の源泉浴槽を楽しめるし、加温した内湯の浴槽にはもう嫌になるほどの湯の華が舞い踊っとる。
暫く前までは浴槽内に石鹸シャンプーの備えがあったんじゃが今はなくその代り、
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お湯だけを、泉質だけをただ楽しむべし © ill-health(ruephas) 2018 |
という掲示が新たにされておる。
なかなかいいことでありますので、皆様ここに来るときには家でシャワー済ませてからのほうが宜しい。
で、鈴木会長はもう既に80歳をとっくに超えた爺様なんじゃけどまだまだ意気貢献としており、大きなことから小さなことまでいろんなことに挑戦しておる。
でじゃな、これじゃ。
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何かの工業製品の原料にも見えるがどんぐりです © ill-health(ruephas) 2018 |
何か茶色い粉状のものが水の中に入っておる。
これは現在鈴木会長が新たに取り組んどるどんぐりコーヒーの原料じゃ。
最近温泉の周りの山林を散歩しとる時に、あまりに大量のどんぐりが落ちておることに改めて感銘を受け、ならばこのどんぐりを何とかすればコーヒーになるんじゃなかろうかと思いたったらしい。
そこで今朝どんぐりを拾い集め硬い殻を剥き実を取り出し、詳しいことは聞いとらんが兎に角何かの下処理をしてコーヒーのようにして濾して飲んでみたらしい。
結果としては余りに渋く余りに不味かったため一口飲んだのも吐き出し、全部捨ててしまったと。
そういう話をしてくれたからワシもちょっとばかし興味が出てきて、
「だったらほれ、ここの温泉、炭酸泉だし、粉にしたどんぐりの実を源泉に漬けといたら、渋みとか灰汁とか抜けないですかね」
と提案してみた。
何となくだけど、普通の水より炭酸成分が入ったやつのほうがその手の苦味とかうまく抜けそうな気がしない?
すると、
「うん。ワシもそう云われると思って既に温泉でアク抜きしとる」
おかしい。
今日ワシがここ来ることは事前には連絡しとらんかったんじゃが、まあ良いわ。
先程の写真の通り、温泉に浸かったどんぐりの粉を木べらでかき回しながら、
「朝からしとるから、もうかれこれ半日かな」
「へえ、じゃあ適当なとこで水分切って天日干しして少し火を通せば飲めるかもですね」
「でもなあ、あの苦味がいい具合に抜けんと」
「じゃあ今どんな具合かちょっと味見してみてくださいよ」
とお願いしてみると、今朝の苦味が相当応えている様子で明らかにヤだという表情を浮かべたため、
「じゃあちょっと僕が味見してみますね」
と云って、指先に粉を取って口に入れてみた。
「ん?あれ、全然苦味ないですよ。あれ、オレ舌バカになったかな。全然大丈夫な感じですよ」
「へ?本当かい?じゃああんた、ちょっとやってみるか?飲んでみたいか?よし作ってみよう」
実は適当なところで切りをつけて帰ろうと思っとったんじゃけど、何か目に見えない未知のフォース(つまり理力じゃね)のようなものに突き動かされつつある鈴木会長の勢いに巻き込まれた形になってしまった。
「とりあえずフライパンで水分飛ばして少し炒った感じにすればなんとかなるんじゃないかね」
会長は厨房から小さな網を持ってきて適量をそこに移し、厨房に戻っていった。
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現段階では口にすべきものとは思えないがどんぐりです © ill-health(ruephas) 2018 |
ワシも何か目に見えない未知のフォース(つまり理力じゃね)のようなものに突き動かされつつあるようで、許可も得ないまま会長の後ろについていって薄暗い厨房に入った。
会長はデカい五徳に火を入れ、フライパンを乗せてそこにどんぐりの粉を躊躇わず投入。
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味噌ではなくどんぐりです © ill-health(ruephas) 2018 |
菜箸を巧みに操りながら着実に乾燥作業を進める。
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何か良くないものに見えるかもしれんがどんぐりです © ill-health(ruephas) 2018 |
序盤、フライパンに少し焦げ付きかけるような挙動を見せたものの、会長は構わず乾燥焙煎作業を進め、その形状も段々と変化を見せ始める。
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こら誰だヤギのなんとかって云ったヤツは どんぐりです © ill-health(ruephas) 2018 |
このあたりになると僅かにじゃけど香ばしいいい匂いがしてきたんで、少し食べてみることにした。
「あちあちあち、あちっ。あぢあぢ。ぱくっ。ん。あ!これ普通に食べれますよ。え〜っと、噛むと僅かに渋みはあるけど全然食べれますよ」
ほんとにそうで、旨味はないけど苦味とか渋みとかは結構いい感じで抜けている。
思ったのは、この状態のどんぐりをもう少し砕いて、クッキーの生地に混ぜ込んで焼いたら少し苦味のある大人のクッキーになって美味しそうなんじゃないか。
これ絶対ありです。
しかし本日の目的はどんぐりコーヒーを試飲することじゃから、調理役を会長からワシに交代し、菜箸ではなく木べらを使ってできるだけ細かくしつつ乾燥焙煎作業を進める。
その手付きを見て、(多分会長の娘さんかなと思われる)女性が、
「いや〜、なんか手付きがいいですね」
と褒めたりするので更に気合いをいれて作業を進める。
暫くすると会長から、
「うん。これくらいでいいじゃろ」
との許可が降りたため作業を終了、あとは(多分会長の娘さんかなと思われる)女性にバトンタッチ。
暫く待っておると(多分会長の娘さんかなと思われる)女性が、
「は〜い。出来ましたよ〜」
と言いながらコーヒーカップを2つ持ってきてくれた。
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おほっ!これまんまコーヒーじゃん! © ill-health(ruephas) 2018 |
ぱっと見、全くコーヒー。
ただ、コーヒーよりは若干色が薄く、濃いめ麦茶という色合いかな。
さあ、早速頂くことにしよう。
一口すすってみた。
「ん。こりゃいかん」
とワシ。
会長も同じく、
「うーん。これは…。これはいかんな」
同じ感想の言葉。
「そう。これはあれですよ、単なるすごく美味しい麦茶ですよ。えっと、何かが抜けすぎてますね。なんだろ?」
「うん。パンチ力がない。今朝のあの凄さはどこに?確かに単なる美味しいお茶だね」
そう、ホントに美味しいお茶に仕上がってます。
「これはこれで多分、冷やしておいてお風呂上がりに飲んだらすごく美味しくていいですよ」
「でも、コーヒーではない」
「そう、コーヒーではない」
両者意見は一致し、再起を期すことに決定した。
帰るためにクルマに乗り込むワシに向かって(多分会長の娘さんかなと思われる)女性が、
「絶対美味しいコーヒーにしますから、近いうちに来てくださいね」
うん、来週には素晴らしい紅葉になると会長も云っとるし、そう、早速来週に再訪することとしよう。
赤く染まった山を眺めながら美味しいどんぐりコーヒーをいただければ、きっと最高の気分になれるだろう。