2013年7月6日土曜日

清水町共同浴場(1)

まだ引っ越す前にちょっと行ってきた素晴らしい温泉の事を書くのを忘れてました。
それは清水町共同浴場(静岡県熱海市清水町11-5:11:00~21:30:¥500:月極¥4500)という結構ストレートな名前の温泉です。
施設名に「温泉」が入ってませんが、源泉かけ流しのまごうかたなき温泉であります。





実を言うと、この温泉を目的にして出かけたわけでなく他のところに行くために熱海に行ったんですが、その途中偶然見つけたのがここでした。
「こ、これは!」
と、早速ドアを開けて中に入ってみましたが誰もおらず、電気も消えていて入り方がよくわからない。
一旦外に出て表に掲げてある表示を見ると、お金さえ払えば誰でも入浴可能なようなことが書いてあります。
しかし、誰もいない薄暗い浴室に入っていくガッツがいまいち湧いてこないし、それにそもそも温泉目的で当地に来たわけではないからタオルを持参しておらず、どっかで買わなきゃだし。
どうも、温泉のすぐ目の前にある小川商店ってとこで入浴券を買えるらしい[1]ので、もしかしてそこにタオルと小さい石鹸くらい売ってるかもしれないと思って行ってみましたが、ガラス戸の内側のカーテンは閉められていてお休みのよう。
仕方なく少し離れたところにあるコンビニでタオルと石鹸を購入し、この温泉はどうもジモ専[2]のようだと踏んで、誰か常連客が来るのを待って、その人と一緒に入り込む作戦にしました。

しばらくすると狙い通り、やや太めの禿げた爺さんがやってきて温泉の中に入りました。
私も直ぐに爺さんをフォローして中に入りました。
爺さんが脱衣場に入った直後、それこそ数秒後に入ったんですが、驚くべきことにその爺さん既に全裸状態であり、既に浴室に入ろうとしている。
殆どイリュージョンなジジイです^^;
可成り狭い脱衣場で私も素早く全裸と化し、これまた殆ど家庭用のものとあまり変わらない広さの浴室に入りました。
禿頭でやや太り気味なのに妙に行動が早い爺さんは、既に浴槽に使ってました。
はええ。
嘗てのセナ、或いはプロストを彷彿とさせる速さであります。
私は素早いジジイに、
「こんにちは~」
と挨拶してかかり湯をし、狭い浴槽にジジイと並んで入りました。
「ここのお湯はね、にいちゃん。源泉そのままで蛇口んところの温度は60℃だから、少し水で埋めながら入るんだ。勿論熱いのが好きだったらそのままでもいいけどね」
ふうん、いいなあ。
「ちょっとしょっぱくて、夏はあれだけど、冬はよく温まるいい温泉で、ワシは毎日来てる」
なるほど。
温泉蛇口から出てくる源泉を少し手ですくって味わってみると、確かに塩分と苦味が濃い温泉です。
「にいちゃんはどっから来た?ここらじゃないな。初めて見る顔だ」
「はい。浜松です」
「そうか。どうせここまで来たんだ。ゆっくり入ってってくれよ」
「はい。ありがとうございます」
ジジイは浴槽から出て、体を洗い始めました。
ひと通り体を清めると、爺さん驚いたことに完全に禿げきった頭にシャンプーを振りかけ、更に驚いたことに亀の子束子を手にしてそれでもって禿げた頭をこすり始めました。
全然普通な感じでこすっています。
痛くないのか、ジジイ。
その間も、私にいろんな話をしてくれます。

近所の人は結構ここに通っていること、無銭入浴が問題になって脱衣場に監視カメラを付けざるを得なかったこと、もし何回も通うようだったら定期にしたほうが安上がりなこと、等々。

で、私も随分温まったので、じいさんと入れ替わりで洗い場に上がって、頭からお湯をかぶり買ってきた石鹸で頭を洗い始めました。
私は最近短髪にしてるので、温泉とか銭湯での洗髪は石鹸で済ましてしまうことが多いです。
それを見ていたじじい、
「おい。石鹸で髪の毛洗うと、髪がいたんじゃうぞ。俺はハゲだけど、地肌に石鹸は良くねえから必ずシャンプー使ってる。良ければ俺のを使いな。遠慮しなくてもいいからたくさん使いな」
この親父、素早いだけでなくて面倒見が良くてすげえ親切だ。
お言葉に甘えさせてもらって、借りたシャンプーで頭を洗い、買ってきた石鹸で体を洗い、綺麗に汗を流して再び爺さんと並んで温泉に入りました。
浴槽の形は、なんて云えばいいのかな、L字型になっていて、爺さんはLの長い方の部分に入ってたんだけど、私が浴槽に入ろうとすると素早くLの短い方の部分に身を移し、
「にいちゃん。いいからそっちの広い方に入んな。そうすれば足を伸ばして寛げる」
素早くて思いやりのあるジジイです。

想像するに、こういったジモ専系の温泉ってのは、ヨソモノをあまり喜ばないような気がするんですけど、少なくともこのジジイはそんなこと全然なくて、多分誰が入ってきても同じように接してくれるんでしょうなあ。
「じゃあ、ワシ先出るから、ゆっくりしていけ。あ、それから、出る時は電気を消していってくれ。電気代がもったいないからね」
といって出て行きました。

非常にいい温泉です。

実質ジモ専ですけど、事ほど左様にヨソモノも入浴可能。
書いたとおり浴室浴槽ともとても狭く、最大入浴人数・ベスト入浴人数とも2名。
ジモ専の雰囲気を味わい方は、きちんと料金を払い、地元優先の意識でもってマナーを守って入浴してみてはいかがでしょうか。

[1]
現金でも入浴可能です。

[2]
地元民専用。
略してジモ専。



0 件のコメント:

コメントを投稿

コメントどうもありがとうございます。
貴方のコメントは世界とワシとあなたを救う。
たぶん。