2013年1月26日土曜日

菊乃湯(1)

定休日だったけど、健在であった事に安心して石巻湯を後にしました。
石巻湯の大変立派な煙突を背にして、豊橋電鉄市内線の市役所前駅まで歩きます。
僅か数分。
豊橋ではいわゆる「ちんちん電車」が今だ健在であり誠に素晴らしい限りだと思います。
私はやや鉄分が高いのですが、車両そのものの知識は余り有りません。
従って線路を走ってる最近新造したばかりと思われる何だか未来的デザインの車両や、その同じ鉄路を走ってる全く古めかしい車両の車番も性能もよくわかりません。
その「全く古めかしい」方の車両は、あれ多分、名鉄岐阜市内線か美濃町線走ってた車両じゃないかなあ。
詳しい方、誰か教えてください。
まあ兎に角、その新旧混合ぶりが楽しいし、昔の花電車のように満艦飾にしたイベント電車(宴会電車)も走ってて面白かったです。
私が乗ったのは新しくも古くもない普通な感じの車両でしたけど、運転席真後ろがぶりつき状態で前方の風景を楽しみながらの数分を過ごしました。
で、ほどなくして駅前駅(JR豊橋駅前にある駅だから確かにその通りだけど、何だかヘンな駅名だね)に到着。
まだ充分に明るいのですが、意外に時間の経過が早くてもうすぐ夕刻であり、地元まで帰ることを考えると残された時間は余りないとも云えます。
したがって、
  1. 渥美線に乗り換えて南栄湯に行くか
  2. 徒歩圏内にある菊乃湯に行くか
  3. 両方とも行くか
このどれを選択すべきか悩む所では有ります。
ただ、実際には余り迷いませんでした。
夕刻と云えばカクテルアワー。
実を云うと先程から冷たいビールを一気飲みしたい欲望にとらわれており、それに打ち勝つ事は出来そうにない感じなのです(私は可成りの酒好き)。
だから今から行くのは2つのうち一つ。
近いほうに行きましょう。
残りの一つは今日行けなかった石巻湯とセットで再チャレンジすれば良いのです。

寒風吹きすさぶ中、駅を背にして歩き出し、暫くするとこれまたあっさり現地に到着。
菊乃湯(愛知県豊橋市新川町40:0532-52-6410:¥400:15時~22時:定休日曜日及び第1・3土曜日)であります。
お、第3土曜日はおやすみなんだ。
今日は土曜日だけど第3土曜日ではありません。
ツイてるぞ。


で、この菊乃湯。
風情大爆発状態。
正に「自分の足で現地に行って、自分のその目で見てみろよ」状態です。
一応シャシンに撮ってますけど、この佇まいは是非目の当たりにして欲しいです。
年期の入った木製靴箱が、玄関扉の左右にぎっしりと並んでます。
番台横の扉を開けて板場に入ると、もう素晴らしいの一言。
天井は高く、格子状のデザイン。
脱衣場は非常に広々としていて、天井の高さと相まり、開放的というイメージがわく程です。
壁側にあるロッカーは無粋な金属製ではなく、玄関の靴箱とこれまた同じく深い飴色に輝く木製。
もう完璧。
聞けばこの銭湯、昭和30年に開業しそれ以来殆ど造作に手を加えず当時のままなんだそうです。
私は特段「昭和を懐かしむ」ような懐古趣味はないんですけど、それでもこの風情には圧倒されました。
古色燦然。
その一言しか思い浮かばない。
私の様な軽薄中年には馴染まないな〜、等と気後れしてしまいましたがそれはそれとして早速浴室へ。

そしてここも人蔘湯にも劣らない素晴らしいタイル画が。
あちらのスイスに対してこちらは純和風。
海から眺めた陸の風景がこれまた壁面一杯に描かれてます。
文章では描写が非常に難しいのですが、タイル画の中に実際の岩が埋め込まれていて、これは即ち海中に浮かぶ小島を表現しているようです。
何て云うか、とても面白いデザインのタイル画です。
もう見てもらうしかないです。
体を簡単に洗い流し(2軒目なんでそれで許して)、湯船に入ろうとして足を差し入れると、びりびり痺れます。
ん?この浴槽、電気風呂か?
と思いましたが、それは右隣の浴槽。
しかし確かに痺れる。
おかしい、と思った途端気付きました。
激熱風呂でありました。
非常に熱い。
余りに余りに熱いため、痺れた感覚になっちゃったようです。
巴湯初回時も熱かったけどここはそれを上回る熱さで、毎分1㌢の速度で極めてゆっくりゆっくりお湯に身を浸して行き、何とか腰の辺りまで行った時に他の客がざっぶ〜んと浴槽に進入。
わわわわわわ。
時間をかけて折角形成された「ぬるい湯の膜」がその衝撃により破壊され、激熱なお湯が直接私の柔肌を襲う。
あつあつあつあつあつあつあつあつあつあつあつあつ。
たまらず一旦浴槽を脱出。
荒い息を吐きながら、心と体を落ち着かせ再度入湯。
面白かったのは、さっき浸かった腰の辺りまでがはっきりと赤くなっていて、その上は普通の肌色。
どんだけ熱かったか解るでしょ。
でも、何だか今度は余り苦もなく肩まで普通に浸かれたよ。
ドナルド=E=ウェストレイクというアメリカの作家が、彼の書いたパーカー物の中でその主人公(職業的ドロボー)に、
「人間はあらゆるものに慣れるんだ。死以外の事には」
と語らせてますが、正にその通り。
この熱さに、私ついには慣れちゃった。

この江戸っ子系激熱銭湯、繰り返し的な表現で申し訳ないけど、近所の人たち、本当に羨ましいです。
本当に羨ましいです。
生活としてこの銭湯を使える幸せ、普段遣いの人にはきっと解らない種類の幸せなんですよね。
近所の人に是非お願いします。
今後もこれまでと同じように普通に菊乃湯を使ってくださいね。
私の様な外様、門外漢、通りすがりは、ただその御こぼれにあずかりたいだけなんです。
その町の人があってこその、その町の銭湯。
銭湯は文化じゃなくて、普段の生活だと思います。



非常に満ち足りた気分で菊乃湯にお別れして豊橋駅方面まで歩き、中村屋 HANARE(愛知県豊橋市広小路1-37:0532-53-1195:大阪風串カツ屋:定休日・営業時間などは未確認:店長の愛想が抜群によくて好印象の店:FBはこちら) で串物をつまみにして超炭酸ハイボールを一気飲みし(だって、多分一ℓぐらいは水分失ってるから)、東海道線に乗車して地元の駅まで戻り、La-Jannで更に呑み、沖縄屋台で更に呑み、バスに乗って帰宅。
至上の土曜日でした。

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