2013年6月9日日曜日

温泉に行かない日(211) 味沢という飯屋に行ってみた

会社の友人が以前から「あそこが気になっているんだ」と言っているお店があります。
浜松市北区のアピタ初生店(改装中で一時閉店中:2013年6月現在)の前にある元追分の交差点から、県道261号線(俗称:姫街道)を南東にしばらく走ると豊隆団地という交差点に出ます。
その交差点近くにある味沢(あじさわ:静岡県浜松市東区有玉西町2417-9 ‎:053-472-6296:営業時間・定休日は未確認:公式ウェブサイトなし)が、その「気になる店」なんだそうです。
なんで気になるかと聞いてみたんですが、
  • 外見がボロくて怪しげだ
  • ヘタウマ手書き風(鷲沢体に一寸似ている)の看板が怪しい
  • いつも電気がついてないような気がする
  • でもたいてい店の前には何台か車が止まっている
  • 人が出入りしているところを見たことがない
  • なんかいつも手書きの張り紙がしてある
  • 以上のことから自分一人ではとても入る勇気がない
ということでした。
私、みよし湯に行くときにはたまにこの辺りを車で走るんですが、こんな店全く知らなかったんで、実際に現場に行く前に(悪名高き[1])Googleストリートビューでもって店の風体を観察してみました。



ううむ。

これは確かに会社の友人が言うとおりだ。
若いおねいちゃんあたりだったらきっと二の足を踏むだろうな。
結構シビアな感じに見えます。
しかし、周囲から「神経がない男」「鋼鉄の心臓を持つ男」[2]を評価されている私のようなおっさん的には特に問題ないな。



じゃあ早速行ってみよう。
当然酒飲むので、家からは遠いけどチャリ[3]
お店に到着すると、店の前には車が一台止まってます。
そしてガラス戸の向こうには明かりが点ってて、ありがたいことにどうも本日は営業してるようです。
ガラスの引き戸をがらっと開けて、こんばんは~と言いながら店に入ると、L字型になっているカウンター席が基本で、奥には小上がりもあるようです。
そのカウンターにはすでに二人のおっさんが陣取っており、ふたりともキープしたいいちこを呑みながらテレビ見てます。
カウンターの中にいる店主は結構ご高齢に見える人で、ニコニコしながら仕事してます。
初めて入った店では勝手やその店なりの流儀がわからないため、お店の人からアクションかけてくれるまで待っているのが無難で、今回もそうしました。
少し待ってると、もう一人、店主の奥さんと思われる関西弁の人が奥から現れ、お茶とおしぼりを持ってきて、注文を受けてくれました。
紙に書いたメニューはなく、壁にかけてあるホワイトボードに書かれたメニューから注文する仕組みです。
いいぞ、こういうのは好きだぞ。
殆どのメニューは黒で書かれてますが、赤いペンで書かれていたホタルイカってのが気になったので先ず注文したら店主がすかさず、
「うん。これ美味しいよ。今シーズンもう最後なんだけど、富山湾内で穫れたもので、旨いよ。湾外で獲ったやつは小ぶりで旨くないんだけど、これは湾内。湾内のものは大ぶりで味がいいんだ」
と講釈してくれました。
「背骨とか全部抜いておいたから、そのまま食べられるんだ。そうしておけばより美味しく味わえるからね」
お。
ここ何か凄いぞ。
素材にも拘ってるし、調理にも拘ってる。
生ビールも注文してから店主の様子を見ていると、奥さんがお通しを持ってきてくれました。
きんぴらごぼうの小鉢。
それと、玉子豆腐の上にスナップえんどうを乗っけたもの。
「そのスナップえんどうね。長野から仕入れたんだ。小ぶりだけど旨いよ。さやごと食べられるからね」
どうも自分が気に入らなきゃ仕入れないらしい。
そういう拘りのある人ってこの人のような感じで、頑固だったり意固地だったり客に威張り散らしたりするヤな奴が多いんですが、ここの店主は全然そんな雰囲気じゃなくて。

ホタルイカが来ました。
器の中にはまさに丸々とした茹でたホタルイカが10匹ほど。
どれもふっくらした感じでいかにも旨そう。
最初に頼んだ生ビールは、お通しだけですでに胃の中に消えてしまってたんでコップ酒を頼み、早速ホタルイカに箸を向けました。
生姜醤油に少し浸して口に運ぶと、まあ、誠に濃厚で素晴らしい味。
何が旨いかというと、イカのワタ。
全く臭みがなく旨さだけで出来ているワタが生姜醤油と良くマッチして、こんなに旨いホタルイカを食ったのは確かに始めてだ。

次にカツオの刺身。
厚めに造ってある刺身をにんにく醤油で頂きましたが、ほんとに新鮮でなんとも言えない舌触りと味。
ボキャブラリが貧困なんで、ただただ旨い美味いと言いながら食べてると、隣のおっさん客が何か天麩羅を注文しました。
そしたら奥さんが和紙を敷いた大きめの皿を奥から持ってきて、おっさんの前に置きました。
これって、まっとうな天麩羅屋のやり方じゃん。
で、しばらくすると矢張り奥から店主が出てきて、揚げたての天麩羅をそのお皿の上へ。
もうたまらんなあと思いながらその様子を見てると、おっさんが私の方を見て、
「あんた。さっきから見てたが飲みっぷりがいいし、いいヤツみたいだから、これ食ってみなよ。いいからいいから。気に入ったんだから遠慮せず食べてみなよ」
私、そういう申し入れ、オファーされたら素直に従うタイプですので、
「え~、いいんすか?すみませんじゃあ遠慮無く。申し訳ないですね~なんか。でも頂きます」
と言ってナスとイカを一つづつ頂きました。
ナスはもうさっくさくに軽く仕上がっていて、しかも揚げたてですんで、もう全く何も言うことなし。
塩を振ってハフハフ言いながら食べて日本酒を一口。
その後食べたイカが、これまた凄くて、ほんとにふっくら仕上がってるんです。
イカの天麩羅って、たいてい硬くなっちゃうことが多いんですけど、ここのはもうフワンフワンで、どうやったらこんな感じに仕上げられるんだろうか?
結局そのおっさんは殆どの天麩羅を私にくれようとしたんですが、もう一人のおっさん客(どうも中堅企業の社長らしい)が、
「いいんだよもらっときな。その人もうご飯で〆て帰るんだけど、味噌汁があればおかずはなくても大丈夫なんだ。気に入られたんだから素直にもらっておけばいいんだ」
と小声で教えてくれました。
事実その通り、天麩羅おっさんは大盛りのご飯と味噌汁で〆て、気分良さそうに店を出て行きました。
社長おっさんは、
「俺はこの店の常連になってまだ9年だけど、あの人なあ、この店出来てからすぐに常連になってるんだ。もう30年になるかな。この店の先輩なんだよ。なあ奥さん、この店初めて30年くらいだよなあ」
「うん。35年」
いい店ですよねえ。
飯屋でも呑み屋でも温泉でも銭湯でも、いい店にはいい主人がいて、だから良い筋の客が集まるから、もっといい店になっちゃうんだね。
特にこの味沢って店は多分、儲けを全部仕入れに使っちまうんでしょう。
「貧乏だからパチンコはしないけど、温泉には行くね。温泉だったら1000円もかけずにたくさん楽しめるからね」
って奥さんが言ってたしね。
最後、〆としては普段あまりしないんだけど、鳥の唐揚と瓶ビールを注文しました。
注文した唐揚はこれまた誠にふんわりさくさくな仕上がりで、ビールに誠に合う。
最後まで美味しく頂いて、ありがとうと言って店を出ました。

こんなに旨いのに、ほんとに安い。
感謝したくなるほど安いです。

[1]
それを実感したのは、私自身が浜松市内某所でGoogleストビューの餌食になったことがあったから。
その時は同じ職場の部下・同僚・上司が写されていた。
特に上司については、横断歩道がない場所を無理やり横断している瞬間であり、多くの笑いを誘ったものだ。
現在は更新されて見えなくなってます。

[2]
大学時代、シラフの状態で白昼堂々自販機でエッチな雑誌を購入し、それをそのまま所属サークルのボックス(部室)に持ってきた時に頂いた誉れ高き称号。

[3]
言うまでもなく道路交通法的にはチャリも厳然たる車両(軽車両)であり、酒飲んで乗ったら当然飲酒運転でとっ捕まる対象であります。
以前、元おまわりさんという人に聞いたところによると「実際の所、明らかにふらついてたりとか、事故っちゃったり人を轢いちゃったりっていう感じでなければ、まあ声かけられることはまずないけどね」とは言ってましたが。

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たぶん。