2011年12月20日火曜日

焼津黒潮温泉元湯 なかむら館 (5)

私が勝手に「浴槽の黄金比」「風情界のジャイアント馬場」などと呼称している平山温泉龍泉荘を後にし向かったのは、もおぉーここしかありえんでしょ、って感じの焼津黒潮温泉元湯 なかむら館です。

実はですねここでも書いた通り、なかむら館のお湯は熱いです。
ところがですね、私の親友が変な事を教えてくれたんです。
その友人は先日静岡方面に所用があり出向いたのだけれど、その所用は午前中で終わっちゃったんで、以前より噂に聞いていたなかむら館に行ってみようと決意し、実行に及んだ訳なんですね。

私からの情報で兎に角あそこのお湯は熱くてたまらんらしいと激しく思い込んでいたその友人が、実際になかむら館の浴槽に浸かってみると、
「なんだ、普通じゃん。これって全然熱くないし」
ちゅー事だったらしいのだね。

「友よ、そんな事はないです。少量ながらも煮えたぎる様な熱さの源泉が、浴室壁から無骨に突き出した湯口から注がれているんだよ。だから、友よ、言いたくはないが君、温度を感じる人体センサが経年劣化しているのはないのかい?」

等と思っていたのです。
熱くない訳がない。
この温泉に来るたんびに逆上せちゃってるのは伊達じゃないぜ!
等と心の中で意味なく粋がり、早速なかむら館に乗り込んだわたくし。
洗面器を掴んでそれをぐいと浴槽に突っ込み、お湯を汲み、ざばと体にかけて感じたのは…
「ん!なんだ?ちょうどいい温度じゃないの」
でした。
要するにぬるいってことです。
うーんおかしいなあ。

今日はこのなかむら館、結構混んでまして、私の他に3人程いたかな。
上腕部に倶利伽羅紋紋してるオヤジと、隻腕オヤジと、寡黙なオヤジ。
倶利伽羅紋紋と隻腕の両オヤジがとにかく「ぬるいぬるい」って、姦しい[1]ったらありゃしない。
寡黙なオヤジは黙ってはいるものの、倶利伽羅と隻腕の発言にしきりに頷いているんです。
隻腕:「こんなぬるくちゃ入ってられない」
倶利伽羅:「風呂が寒いから、ちょっと熱いの(つまり燗酒を)引っ掛けて体の中から熱くしてから帰ろう」
寡黙:(ただ黙ったまま、うんうんと頷いている)
隻腕:「夏ならいいけどいまこれじゃあなあ。けちなんだよここわぁ」
倶利伽羅:「風邪引いちゃうよなあマッタク」
寡黙:(ただ黙ったまま、うんうんと頷いている)
というようなことを兎に角しきりに言いあってる。
挙げ句の果てには隻腕の方が、
「この浴槽のぬるい湯を掻き出しゃあ、熱くなるぜきっと」
等と言いながら、一本の腕で洗面器を巧みに操ってお湯をざばざば掻き出し始めちゃってもう大変。
そんな苦労をしても、別段湯温は上がる事なく変化なし。
「ぬるいぬるい」
としきりに言い合いながら、隻腕と倶利伽羅は2人仲良く一緒に浴室を後にしていきました。
要するに、彼らにとっちゃあ犯罪的にぬるいってことなんですよね。
たまらんくらいにぬるい、と。
いやあ、おっちゃんたち、あんたら江戸っ子だなあ、等と思いましたね。

ところがですな。
私もしっかり暖まって脱衣場に行くと、「ぬるくてやってられない」と云っていた筈の倶利伽羅が、着衣もしない素っ裸のまま、つまりちんちんも放り出したまんま、全身汗まみれになりながら両手に団扇を持ってばたばた仰いでるんですね(^^ゞ
一方の隻腕の方は何してたかって云うと、脱衣場の窓を全開にして上半身を屋外に出して涼んでるんですよ(感心したことに「今日の風呂はぬるかったなあ」と言い続けながら)。

おいおまあら、実は熱かったんじゃないの[2]
なに虚勢張ってんだよって感じでした。
まあ、ほほえましいけど。

で、浴室を振り返ると、二人に同意してしきりに頷いていた寡黙オッサンがじっと瞑目して、実に気持ちよさそうに浴槽に浸かっている。

結論。
この温泉の湯温は、このままでヨシ!

[1]
「姦しい」ってのは多分、女性に対する形容詞だと思うんですけど、あれはまさに性差を超えて姦しかったため、敢えて使いました。

[2]
でもまあ、湯温そのものがそんなに激しく熱くなくても、特に塩化物泉なんかだとしっかり暖まると聞いた事がありますから、2人の板場での行状はそのせいでしょうね。
寧ろ、ホンマモンの江戸っ子系銭湯(激烈に熱い銭湯)は、意外に結構湯冷めしやすい様な気がするんだけど
なあ。

注)このポストは、通算156ポスト目になります。

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